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ef (エフ)
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夢の途中5 (151-181)

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『それでね、暫くは和子さん、札幌の病院で働きながらご主人が喫茶店をやっておられたんだけど、お子さんも独立されたので和子さん病院勤めも辞めて、ご夫婦で喫茶店のお仕事に専念されるようになったのよ。』
「ふ~ん、夫婦で喫茶店をね・・・」
『で、長男の方がニュージーランドのオークランドに移住されてて、行く行くは余生をニュージーランドで、って考えられるようになったの。」
「あっ、そうか!それで香織さんが北海道に?」
『まあ、それもあるけど・・・・・アラ、ビール、無くなっちゃたわね?^^;・・・
持って来るわね♪(#^.^#) 』
「あ、悪いね、長居いしちゃって^^;・・・」
『良いの、私も今夜はもう少し呑みたいの・・・林さん、もう少し付き合って下さる?・・・・・・もう少し、聞いて貰いたい話もあるし・・・』








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章タイトル: 第22章  神戸 1995年
-----------------------(p.165)-----------------------

香織は階下に降りて、今度は缶ビールの他に、白ワインのボトルとグラスを一つ、銀盆に載せて戻って来た。
『ワインは如何?(#^.^#)十勝ワインの辛口の白よ♪』
「ああ、良いね♪(^v^)一杯戴こう♪」
香織がボトルのコルク栓を抜き、優一の前に置いたグラスにワインを注いだ。

『・・・私ね、主人と神戸で死別したの・・・・13年前の震災の年に・・・・・』
「え!香織さん、神戸であの震災に?・・・そうだったの・・・・僕もあの時は豊中の高層マンションに住んでいて、マンション自体の被害は無かったけど、部屋中の家財や皿が破損して、暫く住めなかったけど・・・・香織さんのご主人はその時に被害に合われて?」
『・・・いえ、その時は二人とも大丈夫だったの・・・住んでいた賃貸マンションは半分壊れたけど、二人とも無事だった。
でもね・・・・

当時私達夫婦は神戸の小さな個人の医院にお世話になっていて、主人は小児科・内科医で私は看護婦として一緒に働いていたの・・・私達より二回りほど上の年配の院長先生は外科と皮膚科を担当されて、奥様も看護婦で働いておられたわ・・・小さな病院で、当然救急病院でも無い、何処にでもある地域の開業医だった・・・入院の施設も無いから、大病やその疑いのある患者さんは院長先生の紹介で大きな総合病院に行って貰うの。
だから、決まった時間に始まり、決まった時間に仕事は終わった。 
子供も居なかったから、仕事が終わった後、そのまま三宮に出て映画を見たり、中華街で食事をしたり・・結構、結婚生活を楽しんでたわ♪(#^.^#)
休日には主人にゴルフを教えて貰ってグリーンにも何度も出たわ♪ 
何しろ、甘えん坊の人で、金魚のフンみたいに何時も私と一緒に居たがる人だったから・・
だから、高給とは言えなかったけど私も主人も満足していた。
私達が知り合ったのは横浜の総合病院でね、日勤・夜勤・当直の24時間体制の勤務で心休まる暇も無かったし、二歳年下の主人は研修医の記憶もまだ新しくて、目が回る程の忙しさに自分をうしないそうだった・・・
それから見れば神戸での生活は天国の様なものだったわ・・
でもそんな幸せな日々は長く続かなかった・・・  』




二人の神戸での生活が9年目を迎え、未だ正月気分も抜けきらない1995年1月17日午前5時46分52秒、
香織は低い微かな地響きで目を覚ました・・・
ゴォォォォォ・・ゴオオオオオオオオオ!!!!!
ガタンガタンガタン!!!!!!
ガンガンガンガン!!!!!!!
ガガガガガガガガ!!!!!!!
『きゃぁ~~~~~~!』
六畳の和室で孝則と布団を並べて寝ていた香織は、布団の下の畳みが突き上げられる様に揺れて、飛び起きた・・
一瞬遅れて孝則も布団から飛び出す。
『アナタ~!』
「香織、台所!台所!」
孝則は慌てる香織の手を引き、ダイニングテーブルの下に押し込んだ。
その後すぐに和室のタンスは二人が先ほどまで寝ていた布団の上に折り重なるように倒れた。
ダイニングの天井からつりさげられた照明は振り子のように激しく揺れ、食器棚の扉と云う扉は総て開き、納めてあった食器が飛び出し、床で砕けた。
テーブルの舌で孝則は香織の身体に覆いかぶさり、庇った・・・

淡路島北部及び神戸市垂水区沖の明石海峡、北緯34度35.9分、東経135度2.1分、深さ16kmを震源としてM7.3の大地震が発生した。
地震による揺れは、阪神間及び淡路島の一部に震度7の激震が適用されたほか、東は小名浜(福島県いわき市)、西は長崎県佐世保市、北は新潟県新潟市、南は鹿児島県鹿児島市までの広い範囲で有感(震度1以上)となった。
戦後に発生した地震では、南海地震(1946年)や福井地震(1948年)を大きく上回り、過去最悪・未曽有の被害を出した。 後に【阪神・淡路大震災】と名付けられた。


『・・・・アナタ・・・・・・・』「香織、大丈夫? 」
『・・・うん、大丈夫・・・でも、怖かった・・・』
香織の顔は闇の中でも青ざめて感じられた。
「・・・しかし、こんな地震、はじめてだよ・・・・・」
ダイニングの床の上は食器棚から飛び出し割れた食器の欠片で足の踏み場も無かった。
『アナタ、木島医院、大丈夫かしら?』
「・・・ああ、何とも言えないな・・・・かなり老朽化した建物だからな・・・」
香織の問いに顔をしかめる孝則。
取りあえず、マンションの入り口のドアが開くことを確認した後、玄関の靴箱の上から懐中電灯を取り出した。
そして、布団の上に倒れたタンスの中から当面着る衣服を取り出すと、懐中電灯の頼り無さげな光の中で着替えた。
「あ、また来た!」  グラグラグラっ!
着替える途中何度も余震に襲われる・・・
やっとのことで着替え終えた孝則は、勤め先である木島医院に携帯電話をかける。  
ツ~、ツ~、ツ~、・・・・
「こりゃ、ダメだな・・・・・香織、とりあえず、貴重品だけ身に付けておこう。」
『ええ、アナタ、分かったわ。』
玄関のドアを開け放っているので、廊下に人のざわめきが聞こえた。
住人達が真っ暗な廊下に出て来たのだ・・・
[花田さん、大丈夫?]
隣りの部屋に住む主婦・吉田恵美子が部屋の中に声を掛けた。
『ああ、恵美子さん、もう台所はぐちゃぐちゃ!でも、二人とも大丈夫よ!』
[ああ、良かった!けど、めっさ酷い地震やったわねぇ!ウチの部屋もおんなじや!
停電してるさかいテレビはつかへんけど、ウチの息子のラジカセのラジオ、神戸で震度6強やて言うてるわ!そら揺れるはずや!  あ!また!ヒェ~!(>_<)]
恵美子と話している最中にも頻繁に余震が襲ってくる。
その時、香織と恵美子の足元がふわっと浮いた感覚がした。
ぎゃぁ~~~~~!
廊下にいた住民の中から悲鳴が聞こえた。
建物全体が傾いたようだ。
「香織、ここに居ちゃ危険だ!すぐに出よう!吉田さんも早く!」
香織達住民は急いでマンションの外に出た。
築30年は経つ4階建ての賃貸マンションはその地盤から明らかに道路側に傾いていた。
作品名:夢の途中5 (151-181) 作家名:ef (エフ)