夢の途中5 (151-181)
香織は両手に丸い銀盆を持って即席のビアガーデンに現れた。
銀盆の一つに缶ビールが5個、もう片方の盆には大皿に盛られた、鶏のから揚げ・スティック野菜とガーニャパウダー、クラッカーに乗ったチーズ等。
それに優一が持参した柿ピーもアルミホイルを皿に象って、大皿の中心に盛られていた。
『それじゃ、乾杯しましょうか?(#^.^#)』
「何に乾杯する?(=^・^=)」
『う~~んとねぇ・・・・そうだ、【今夜の月】に、どう?(^_-)-☆』
「ああ、良いなぁ♪ じゃあ、今夜の美しい月と、美しい妙齢のご婦人に♪(^_-)-☆
かんぱ~~い♪」
『(#^.^#)まぁ、林さんたら♪かんぱ~~い♪(^_-)-☆』
缶ビールを口にし、香織の喉がごくごくと鳴った。
白い香織の首筋が艶めかしかった・・・
『ああ~~、美味しい~~!(#^.^#) 夏はやっぱりビールよねぇ~♪(^v^) 』
「香織さんは毎晩呑むのかい?」
『うううん、滅多に・・・独りだと美味しく無いし・・・林さんは毎晩?』
「そうだね、大抵、・・・毎晩かな?(^_^;) 」
『皆さんとご一緒にお飲みになるの?』
「いや、大抵独りだよ(^。^)y-.。o○ だから、大して量は呑まないな・・缶ビールなら1本か2本だよ。」
『お独りで・・・寂しく無い?』
「・・・寂しく無いかと言われたら、寂しいけど・・・慣れだね、慣れ^^;・・・
今までずっと地方回りが仕事だったから、結婚している時も、地方の寮やホテルの行き帰りの毎日でさ・・・・
半年とか一年とか家に帰らないのはざらだから、自然自分の事は自分でやるようになって・・・」
『そう、奥さんの方こそ、お寂しかったのね・・・』
「そう、だから当然の報いだな^^;・・・・」
『お子さんは?』
「今年20歳の娘が一人居るよ(^。^)y-.。o○ 大阪で母親と暮らしている。
大阪に行った時には時々会ってるけどね。
それがまたよく食うんだ、これが!(*_*;・・・
テニスをやってるんだが・・・・・【浪速のシャラポア】って聞いた事無い?^^; 」
『浪速の、・・シャラポア? ああ、スポーツ新聞に時々出てる女子大生?
確か・・林・・・あ!あの子、林さんの娘さんなの?凄い!将来凄く有望なテニスの選手だって書いてあったわ♪(#^.^#)』
「そうなんだ、由美って云うんだけどね^^ 」
『まだお父さんの方の姓を名乗ってらっしゃるのね♪(^0_0^)自慢の娘さんね♪(^_-)-☆ 』
「あははは♪(#^.^#)ま、そんなんじゃないけど・・これがまたよく食ってさぁ、先月大阪で会った時、400gのステーキをペロリ、だよ?まだその後ガーリックライス大盛りにバニラアイス二個食べて!(*_*;・・・・そのせいか、未だに身長伸びてるらしいわ・・・
171センチあるんだとさ(・_・;)・・・女の子で背が高いと、相手を見つけるの大変だと思うけどなぁ・・・・あっ!(・_・;)・・」
『・・・・・・(-_-メ)そうですわねぇ~、大女は相手を見つけるのが大変で、悪ぅ御座いましたわねぇ~!(-_-)/~~~ピシー!ピシー!』
「あ、そ、そう云うつもりじゃ^^;・・・・・」
『うふふふ♪(^_-)-☆冗談よ♪ 』
「香織さんは身長何センチあるの?」
『私は170センチなんてないわよ♪^_^ 168位かな?
でも、踵の高いヒールを履くと175センチ位にはなってしまうわね♪(^。^)y 林さんは?』
「僕は178センチ、尤も、年取って来たから縮んだかもね^^;・・」
「あら、年取っただなんて・・・・私と同級生のくせして。』
「香織さんは若いよ!まだ40代だと言っても通るよ!^_^ 」
『まあ、嬉しい~♪(#^.^#) お世辞でも♪(^^)/ 』
「此処の常連さんは皆ママのファンだろ?」
『そんなこと・・・・こんな田舎町に、他にこんな店が無いだけよ・・・観光で訪れる人は新プリンセスなんかのホテル街で過ごすから・・・・あの周辺なら、お洒落なカフェもいっぱいあるし・・・尤も、此処の常連さんならそんな処行かないでしょうけど・・
でも、良いの♪そんなに儲からなくても食べてさえ良ければ(^v^)・・・ 』
香織は一つ目の缶ビールを飲み干した。
「もうすぐお盆だけど、今年も大阪には帰らないの?」
『・・・うん、予定は無いわね・・・・・林さんは御帰りになるんでしょ、京都に。』
「ああ、僕はまた来週から関西なんだ。だから少し早めに向こうで三日程休みを取ろうと思ってる。ま、【墓参りのハシゴ】だな^^;・・」
「・・・関西か・・・・・懐かしいわぁ・・・・」
香織は視線を天空に浮かぶ白い月を見上げ呟いた。
優一はその横顔に故郷を懐かしむ寂しさを見てとった。
しかし、香織の心の奥底に在る深い悲しみは知る由も無かった。
「香織さんは何時から北海道に来たの?」
『・・ん~と、10年位前かな・・・・最初札幌の知人を頼って・・・此処に来るまで札幌の小料理屋さんで働いていたの・・』
「ん? 看護婦じゃなくて? 」
『・・・ええ、色々あってね・・・・看護婦のお仕事が嫌になって(・_・;)・・』
香織の顔に、これ以上は聞かないで欲しいと書いてあった・・
「この店の前のオーナーさんと知り合いだと言ってたよね?」
『そう、その知人と云うのが此処の前のオーナーの北村さんと言って、その方の紹介で札幌の小料理屋さんの女将さんを紹介して貰ったの。
北村さんのご主人、アイスホッケーの選手でね、帯広に在った【大東亜製紙・アイスホッケークラブ】の中心選手だったのよ。
出身は林さんと同じ京都なの。大学が札幌の北大で、そこでアイスホッケーに魅せられて、京都に帰らず北海道に居付いちゃたの。奥様の和子さんとは札幌で知り合ったらしいわ・・・
私が和子さんと知り合った時にはもう結婚されていて、日本各地で看護婦のお仕事をされながら帯広に居る旦那さんを
支えてらしたわ・・ホラ、アイスホッケーって日本じゃマイナーなスポーツだから、実業団でも経済的には中々大変だったのよね・・』
香織にとって先輩看護婦であった北村和子は奈良の出身で、東京の看護学校の学生であった二十歳の時に旅行した北海道で北村昭雄と知り合った。
二人はそれ以降東京・札幌の遠距離恋愛を経て、二十五歳の時帯広で所帯を持った。
大東亜製紙は日本の製紙業界の大手の一つであり、その実業団チームは日本のアイスホッケー界では名門に数えられていた。
しかし日本において、アイスホッケーと云うスポーツは北海道以外の地域ではマイナーなスポーツであり、折からの製紙業界の再編成で、チームの経営状態は良く無かった。
従って、アイスホッケー中心の北村家の生活は和子の収入に頼るところが大きかったのだ。
結婚当初、帯広市内の病院に勤めていた和子は、その後高給を求めて日本各地の病院勤務を転々とし、帯広の家族を援助した。
香織とも横浜の総合病院に居た時に知り合ったのだ。
その後四十二歳の時、当時チームの監督を任されていた昭雄であったが、とうとうクラブチームが廃部となり、同時に昭雄も退職することになったのを機に、現在の藤野に移って駅前に喫茶店を開いた。
それが【喫茶・紫陽花】であった。
作品名:夢の途中5 (151-181) 作家名:ef (エフ)