夢の旅路
再びスクリーンが揺らいだ時、わたしはまたまたベッドの上だった。
しかし、さっき見た病院の部屋とはまた様子が違うようだ。
壁は真っ白ではないが、なんの変哲もない無味乾燥なベージュ。
その壁に三方を囲まれているようだ。
三方の壁の外に面した一面には、高い位置に小さな窓が付いている。
その小窓からは、遠慮がちな陽の光が斜めの線を数本描きながら差し入っている。
わたしの身体は、まるで他人のもののように重い。動かすこともままならない。
そんな身体を無理やり捻って向きを変えてみた。
窓を背にした一面には壁はなく、規則的に棒状のものが天井から床へと何本も並んでいた。これは……鉄格子? ということは、ここは牢獄なのか?
わたしは牢獄に入れられるような犯罪を犯したのだろうか?
その時突然、蘇った。あの時の記憶が……。
彩乃が苦悶に顔を歪めている。やめて……と、か細い声で叫びながら。
それなのにわたしは腕の力を緩めることもなく、その細い首を益々細く絞め上げている。
「やめろ、やめろー! やめてくれぇー! 夢なら覚めてくれー」
わたしの意識は、また遠くなりつつあるのを感じた。
いつまで夢の世界を漂うのだろう。それとも夢だと思っているこれは、現実なのだろうか?
わたしには、その真偽さえも既に分からなくなっていた。 ― 完 ―