夢の旅路
--こんな夢を見ました―-
夢とは正に不条理なものだ。
いつもあんなにも恋焦がれていても、付き合うどころか、声を掛けることすらできないこのわたしが、愛する彩乃〔あやの〕を腕に抱き、その可憐な薄紅色の柔らかな唇に、自分の唇を重ねることも、弾力のある豊満な乳房を揉みしだくことだってできるのだから……。
現実世界のわたしはと言えば……いや、やめておこう。
現実世界には、夢の世界以上に不条理なことが、砂丘の砂粒ほどにもひしめき合っていて、わたしには納得のいかないことばかりなのだから……。
その夜も布団に入ってふと横を見ると、恥ずかしそうに伏し目がちにして、それでもわたしの瞳を覗き込むように、ちらちら視線を揺らす彩乃が、わたしの左腕を枕にして横たわっているではないか。
当然のようにわたしは右腕を彩乃の背に回し、そのさくらんぼのような唇にくちづけをする。
彩乃はそっと瞳を閉じて、幸せそうにわたしのくちづけを受ける。
ああ、なんと艶めかしいその表情。
彩乃のそんな時の顔は、わたしの中の男を蘇らせる。
思わず抱きしめる腕に力が入る。
「ああ~~」
吐息混じりに、彩乃の口から微かな音が零れ出る。
愛しい……そう思わずにはいられない。
そう、まるで夢のようなこの時が、今のわたしの最も幸せな時となってしまった。
彩乃というこの女、普段はとても可愛らしい天使のような女だ。
なのに、いざベッドでの行為といったら……。
俗に言う天使と小悪魔の二面性を持っているような、男を惑わす不思議な魅力のある女なのだ。