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長浜くろべゐ
長浜くろべゐ
novelistID. 29160
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ノブ  ・・第1部

INDEX|77ページ/80ページ|

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「やけね、嬉しいっちゃんね」
「こうして、一緒にいられて、お酒飲めて・・。あ、この人の方が弱かっちゃけどな!」とまた笑った。

「有難うな、ヨシカワ・・」突然、川村が恭子に言った。

「オガワを、どうか・・・よろしくな?!」
「ど、どしたの、あんた。オガワっちの保護者?」


「保護者って訳じゃね〜けど、オガワってよ、前の彼女が・・その〜亡くなっちゃってな」
「まだ、癒えてないと思うんだ、オレ」
心の傷・・・と川村はボクを見て言った。

「そんな男を支えるのって、結構・・・しんどいんじゃないか?ってよ」

「でも多分、ヨシカワだけだと思うんだ、オガワの傷を癒してやれるのは」
「だから、よろしく・・なんだよ」
コイツ、男から見ても結構いいヤツだからよ・・・と。

ボクは驚いた。
川村が、こんなにボクのコトを思ってくれてたなんて。
まだ、親しく話す様になって一週間しか経っていないのに。

「オレよ、3人兄弟だったんだ」
真面目な顔で、川村は続けた。
「オレの上には、姉貴がいたんだ、三つ上の。下は年子の妹」
「中学2年の時、姉貴は高2だった」

「死んじゃったんだよ、病気だったけど」

え・・?!ボクら3人は、思わず川村を見つめた。

「あんた・・私、初めて聞いたよ、そんな事」ユミさんが言った。
「おう、話してない、大学に入ってから、誰にも」

「何の、病気やったと?お姉さん」
「再生不良性貧血だったな。入院してから、3か月で亡くなったんだ」
再生不良性貧血・・・恭子が繰り返した。

「仕方なかった・・って、親父とお袋は言ってたな。治すのは不可能だって担当医に言われてたからよ」

「すげ〜美人でな、優しくてよ・・成績も良かったんだ、姉貴は」
「ま、美人薄命ってヤツか?!」

川村は明るく言ったが、ボクらは・・黙る事しか出来なかった。

「だからよ、場合は違うけどな、親しい人が亡くなった辛さ」
「オガワの気持ちも、分かる気がするんだな」
「オレも、当時は辛かったからな・・・」

だから、よろしくなんだよ、ヨシカワ・・・と川村は恭子に酒を注いだ。

「コイツの心ん中までは分かんね〜けど、時々、自分ではどうしようもなくなる時もあると思うんだ」
「オレも、そうだったからよ」

そんな時は、黙って泣かせてやってくれな?と。

「だから、あんた」
「お誕生会の夜、あんなに泣いたんだね」
ユミさんが、優しく川村に言った。

「ははは、思い出しちまったからな」
「ま、そんなワケだ!」
さ、飲もうぜ・・と川村はボクにもお酌してくれた。

「そうだったんだ」ボクは、川村を見つめて言った。

「有難う、そんなに気を遣ってくれて」
「お姉さんか、辛かったな、川村・・・」

ボクは川村にお酌して、川村は飲み干した。
そして少しして、静かに泣き出した。

「すまん、大好きな姉貴だったからよ、生きてたら・・」
「今年で、23歳だ」

ほんと、若すぎるって・・・と川村は泣き笑いの顔で言った。
そして「オガワ、注いでくれ」と。

「うん、飲もう」ボクは川村に注いで、自分にも注いだ。
「あんた、いいよ?泣いて・・」
ユミさんが優しく川村の腕をさすった。

「わりーな、ユミ」
「でも、もう大丈夫だ!少しな、ほんのすこ〜し・・思い出して泣けば、大丈夫なんだよ、オレは」
川村は笑顔で言った積もりなんだろうが、それは今にも崩れそうなギリギリの笑顔だった。

「な、アンタ・・」
「ん?」
ちょっと・・・とボクは、恭子に手を引かれて台所に行った。

「ユミ達、二人っきりにしちゃった方が良うない?」
「そうだね、じゃ、オレ達、先に休むか」
「うん、その方がいいっち思う」

「な、ユミ・・」恭子が暖簾を分けて、ユミさんに向かって言った。

「うちら、ぼちぼち休むけね?!」
「後の事、よろしくっちゃ」

分かった・・とユミさんは目で恭子に合図した。
川村は、テーブルに両肘を着いて手で顔を覆っていた。

恭子、正解だったよ・・・とボクは恭子に言った。
「うん、川村君、途中から・・この間のアンタと同じ顔しよったけね」
「泣いた方がいいっちゃ、こんな時はな」





      それぞれの夜
    




二階に上がったボクらは、洗顔を済ませて、早々に床に就いた。
ほんの少し・・・窓から入る淡い月明かりの中で、ボクらはそろって天井を眺めていた。

「川村君、大丈夫やろか」
「うん、ユミさんがついてるから大丈夫だろ」
そやね、ユミが一緒やけね・・・と恭子は言った。

「ね、アンタ」
「なに?」

「恵子さんのコト、思い出した?」
「うん、少しだけね」
「でも、恵子の事って言うより、10何年も一緒に暮らした家族を失うって、どんな気持ちなんだろうなってね」

「肉親と恋人・・・不謹慎かもしれないけど、どっちが辛いんだろうな」
「分からん、うちにも」

「肉親の不幸も恋人の不幸も、まだ経験無いけね」
「そうだよね、比べられるもんじゃないよな、どっちが・・なんて」

「でも・・」恭子は半分起き上がって、ボクの胸に顔を押し付けて言った。
「好きな人がおらんくなる」
「それも・・未来永劫、もう会えんっち考えただけで、うち・・ダメっちゃ。」

「アンタ、お願い」
「うん?」

うちの目の前から、おらんくならんでな?と恭子は、強くボクを抱き締めて言った。

「うん、大丈夫・・今んとこ」
「今んとこやなくて、これからもずっとやけ、ね?!」

部屋に差し込む月明かりに浮かび上がった恭子の顔には、涙の跡があった。
「泣かなくていいよ、恭子」
「お願い、ギュっとして!」

ボクは黙って、恭子を抱き締めた。
「嬉しい」
「ね、キスしてくれん?」恭子は続けて言った。
「うん」
久しぶりに、涙の味のキスだった。

恭子の舌がボクの舌に絡みつき、ボクは夢中で抱き締めた。
「ね、アンタ」
「うち・・・欲しい、アンタが」

いいよ・・とボクは言って恭子の上になった。

「こんな話ししとって・・ハレンチな女っち、思わんでな?」
「何かすごくアンタを感じたい」
「アンタと、離れたくないっちゃ」

恭子の気持ちは、ボクにも良く分かった。
ボクらはきっと確かめたかったんだろう、お互いの体温と鼓動を。


ボクらは無言で、弄り合った。
ボクの右手は恭子の花園を、恭子の左手がオチンチンを・・キスしたままで。

恭子は声を上げずに耐えていた。
不思議な愛撫だった。

暫くして「アンタ・・」と恭子が耳元で囁いた。
「なに?」
「うちのボストン・・取ってくれん?」
「うん」

ボクは、愛撫を中断して、部屋の隅からボストンを持ってきた。
「有難う」恭子は起き上がって、月明かりの中で何かを探し出した。

「嫌かもしれんけど・・我慢してな?!」
恭子が取り出したのは、スキンだった。

「前に、ホテル清算しに行った時にな、大通り沿いの薬局で買うたと」
「いいよ」

したら、服脱いで横になり・・・と恭子が言った。
ボクは言われた通りに裸になって、仰向けになった。
ボクのオチンチンは、恭子の愛撫で脈打ちながらはちきれんばかりだった。

「今、付けちゃるけね」恭子がスキンの袋を破って、丁寧に被せてくれた。