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長浜くろべゐ
長浜くろべゐ
novelistID. 29160
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ノブ  ・・第1部

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セックスが・・と聞いた時にはドキっとしたが、ユミさんの話は聞いてる方にも幸せな気分を分けてくれた。

「オレよ・・」
川村が、言った。

「ユミが初めてだから、何とか怖くない様に・・オレのコト嫌いにならない様に、ドキドキだったんだよな」

瞬間、その一言を聞いたユミさんの目がキラっと光った。
「え?!ちょっと・・・待ちなさいよ、あんた!」

「ユミが初めて・って、じゃ、あんたは初めてじゃなかったってコト?!」
しまった!川村・・自ら墓穴を掘ったみたいだぞ?

川村の目はキョロキョロと虚空を彷徨い、顔色は赤くなったり白くなったり・・明らかに思いっきり、動揺していた。
そして、ガバっとテーブルに伏せて正直に言った。

「済まん!ユミ」
「オレ、2年前の高3の夏に・・・男になってた。女は・・ユミが初めてじゃなかったんだ」

テーブルに突っ伏したまま、川村は続けた。
「オレも初めてだからなんて、ウソついてごめんなさい。」

「でもな」
川村は起き上って、ユミさんの目をまっすぐに見ながら言った。

「オガワにも話したけどさ、高校生の男ってのはさ、とにかく興味がそればっかなんだよ」
「早くオトコになりたくて、経験したくてよ・・な?オガワ」

おいおい、こっちに振ってきたのか?
仕方ない、川村を弁護してやるか。

「まあね、興味を持つな・・ってのは、無理だよね、オトコに」
「オレだって、随分早かったもん、初体験はね」

「あんたさ・・」ユミさんの目は真直ぐに川村を捉えていた。
ボクの話なんて、これっぽっちも聞いて無かったし。

「2年前のコトなら、私は知り合ってないから、仕方無いけどさ」
「何で本当のコト、言ってくれなかったの?嘘ついたの?」

「だからよ、嫌われるかなって・・」

「どんな女なのよ」とユミさんは川村を睨みつけて言った。

「え?そ、そりゃ・・・そういったご商売の」
川村の顔色がまた、赤白の点滅になった。

「じゃ、その時付き合ってた彼女じゃないってコト?」
「うん、オレ、彼女との・・・はユミが最初だから」

「それは本当なの?それも、ウソじゃないの?実は」

「いや、これは本当だから、信じてくれ!」
オレ、初めて付き合ったって言うか、好き同士で付き合ったのは、ユミだけだから・・とまた下を向いてしまった。

「中学高校と、体育会系ひと筋だったからよ、女なんて・・相手にされなかったから」

は〜・・とユミさんはため息をついて、川村を見つめて言った。
「情けない、女の子と付き合ったコト、なかったんだ」
「ま、分かってたけどね、その位」

「お、お前だって、付き合うのは、オレが初めてだろ?」
川村が、弱々しく反撃に出た。

「そうよ!だから言ったんじゃない」
「ブレーキの壊れた自転車で、坂道を駆け下りてる気分だって」
「その位、勇気がいるコトなんだよ、私にとっては」

「でも、あんたなら・・・私の自転車、受け止めてくれるかなって思うから」

あはは・・いきなり恭子が、そんな2人の遣り取りを聞いてて笑いだした。


「いいカップルやね、あんたら」
「ユミ、川村君も好きになった女の子とのセックスはユミが初めて言うんやけ・・いいっちゃないと?」

「お互いに、初めての相手なんやけ・・ユミも川村君もな」

「ユミの自転車・・どんなにスピードが出ても、川村君ならガッチリ受け止めてくれるっちゃ、な?川村君」
恭子は、川村にもお酌して言った。

「おう、任せとけ」川村もやっと、笑顔になった。

「うん、ま、いっか」
「好きな相手とのエッチは、私が初めて・・って言うんなら、信じてあげる」
「その代り・・」
「2度とそんなトコ行ったら許さないからね?!」
ユミさんは、川村を睨みながら切り子をグイっと空けた。
「はい、勿論・・・です」

良かった、どうやら1件落着、雨降って地固まる・・かな。

「お前らは?どうだったんだよ・・その・・初めての時は」

川村は左サイドラインのギリギリでタックルをかわして、ボクにボールを回してきやがった。
卑怯なヤツだ、ま、気持ちは分かるけどね。

「うちらは・・自然やったっちゃ、な?アンタ」
「う、うん・・そう、自然にだよね」

「どんな風に、自然だったの?」ユミさんまで、攻撃にまわったか。

「お誕生会の夜やったっちゃ」
恭子が、少し遠い目で言った。

「うちな、この人の悲しい話聞いた後に、2人で買い物に出て・・・告白したと」
「話聞いて、この人を放っておけんかったっちゃ」

「うちが傍に付いとったら、この人も寂しくないっちゃなかろうか・・ってな」
「うちな、何人もオトコは知ってたけど・・・こんなに寂しそうな目の男は初めてやったっちゃ」
「オレ、そんなに暗かったか?」

うん、心ここに有らず・・やったけね、アンタは・・・とボクに微笑みかけた。

「で、その夜、図々しくこの人のアパートに押し掛けて、ついでに押し倒したと!」
キャハハ・・と恭子は笑って、手酌で飲んだ。

「恭子さ」ユミさんが聞いた。
「それって、自然・・・なの?」

「当たり前っちゃ、ユミ!好きな男が悲しそうな顔しとったら堪らんやろ?」
「やけ、うちはこの人を振り向かせて何とか笑顔を取り戻して貰おう・・っち思ったと」

「もちろん・・」恭子は続けた。
「いくら、うちが惚れとっても、この人が何ともなかったら無理やろ?」
「うん、そりゃ、そうだな」川村が言った。
「オレなんてよ、片想いの経験なら、売る程あるぜ?!」
ちょっと、今あんたの話は聞いてないって・・とユミさんに釘を刺されて、川村は大人しくなった。

「でも、この人には、伝わったっちゃ、うちの気持ちが」
「で、この人は受け入れてくれたと、そんなうちを」
自分の中にな・・と恭子はボクを見て、言った。

ボクも言った。
「恭子に好きだって言われてさ、何か、心の中がホンワカしてきてね」
「そんな気持ちなんて忘れてたから、最初は戸惑ったけど・・気が付いたら、オレ」
恭子を抱きしめてたんだ・・と。

「そっか・・自然に、だよね、オガワっち」
「うん、自然に・・だった」

なんか凄いね、あんた達・・とユミさんはボクらを交互に見ながら言った。
「私達なんて、あんた達に比べたらままごとみたいに思えちゃう」
「そんなコトないっちゃ、ユミ」

「人を好きになったら、みんな、それぞれ真剣になるやろ?」
「ままごとじゃ、恋愛は出来んけね」
泣いたり笑ったり、傷付いたり傷つけたりやけ・・と恭子は、誰に言うでもなく、独りごちた。

「でも、押し倒したんは・・うちやったっちゃ!」
「だってこの人、綺麗な肌してるっちゃけ」
キャハハ・・とまた笑った。
ヤバい、恭子はかなり酔ってるみたいだ。

ちょ、ちょっと、恭子・・と今度はユミさんが赤くなった。
「何でそんなに・・平気でノロけられるの?」
「そんなに好き?オガワっちの事」

恭子は、あの妖しい目でボクを見て微笑んだ。
「こんなに好きになった男はアンタが初めてっちゃ」

そして、ユミさんに向き直って言った。
「ユミ、うちな・・・やっと、まともな男に出会えたとよ」
今までの男なんて、み〜んな、どっか行ってしもうたもん・・・と。