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長浜くろべゐ
長浜くろべゐ
novelistID. 29160
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ノブ  ・・第1部

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「あ、ウインナーはオレが炒めたんだぜ!うまいからな、喰ってみな?!」
「さ、恭子達も食べて!」

うん、頂きま〜す・・とボクらは食べ始めた。

卵焼きに、炒めたウインナー、味噌汁の具は、ネギと豆腐だった。

卵焼きは、ほんのり甘くて、おばちゃんの言った通り美味しかった。
「うまいよ、ユミさん」
「うん、美味しいっちゃ!」

「へへ、卵焼きはね、自信あるんだ・・」
「出汁と、お砂糖をちょっぴり入れるの」
和風の味付けやね・・・と恭子は食べながら言った。
「な、アンタ・・美味しいな!」
「うん、うまい」

ボクは夢中でパクパク食べた。
おいしかったから、二膳お代わりして満腹になってしまったけど。
「ご馳走様〜!」


朝食を終えたボクらは、手早く後片付けをして部屋に戻って、出かける支度をした。

4人が準備を終えて下りて行くと、おばちゃんが「ほな、行っておいで!」
「7時までには、帰って来いや?」
「ご飯、出来とるさかいな・・」と言ってくれた。

は〜い、じゃ、行ってきます・・とボクらは夏の日差しの中を京都駅に向かった。

「うわ、暑いね、本当・・」ユミさんがサングラスをかけながら、空を仰ぎ見て言った。
「うん、京都の夏っちゃ」
「さ、どうすると?まずは・・・映画村に行くと?」

うん、太秦の映画村に行ってみよう・・とボクらは駅のバスターミナルに行った。

おばちゃんに聞いといたんだけどよ・・と川村が言った。

「どうやら市バスより京都バスってやつの方が早いらしいぞ?」
「その・・太秦ってとこに行くにはな」

そうなんだ・・じゃ、京都バスで行こう!とボクらは太秦行きの京都バスを探した。
運良く5分後に出発するバスがあったから乗り場に急ぐと、既に列が出来ていて、さすが夏休みだな・・とボクらは感心した。

バスが到着して次々に客が乗り込み、ボクらも整理券を各々取って、ユミさん達とは離れてしまったが、何とか座席に座れた。

「どの位かかると?太秦まで・・」
「分かんないよ」

な〜ん、頼りにならんね、アンタ・・と恭子は笑ったが、初めて乗ったバスなんだから仕方ないじゃんよ・・・とボクも笑いながらふくれっ面をしてみせた。

「ま、いいっちゃ・・道中楽しもうね!」
「うん、京都の街中を眺めながら・・ね」

バスは京都駅を出発し市内を進んだ。
恭子は、駅で貰ったパンフレットを取り出して眺めていた。

バスは街中を走りながら、途中途中の停留所で大勢の客を乗り降りさせていた。
そのうちに、10数名の小学生と思しき一団が乗り込んできて、バスの中は一気に可愛いらしい京都弁で一杯になった。

「おばちゃんの言葉と、やっぱ違うっちゃ・・ね?!」
「そりゃそうさ、おばちゃんのは大阪弁って言ってたじゃん」

ボクらは子供の京都弁を聞きながら、あることに気付いた。
「語尾が、上がるんだね、京都弁って」
「ほんとやね、やから可愛らしく聞こえるっちゃろか」
〜〜やろ?・・・な〜!という具合に。

初めて聞く生の京都言葉は、聞いていた通りに当たりが柔らかで優しい感じだった。


バスは混んだり空いたり・・を繰り返しながら、京都のビル街を抜けて段々と背の低い街中の狭い道を走るようになり、45分ほどで太秦映画村前の停留所に着いた。

ここでは、乗客の半数程が下車した。
勿論、ボクら4人もだが。

「さ〜て、着いたぞ・・どっちだ?」
「あ、この人達について行けばいいんじゃん?」

そのバスを下車した客達は、各々色んな方向に歩きだしたから「ダメじゃんよ・・」とボクらは笑った。

太秦は、想像していたよりも普通の街だった。
高いビルは無く、住宅と小さな商店が混じり合った郊外の普通の街・・と言った雰囲気だった。

そして付近を良く見渡すと「⇒東映映画村」の案内板があちこちにあり、ボクらはそれに従って大人しく歩いて行った。

「5分って言ってた割りには、けっこう遠いんじゃない?」
「うん、もう5分以上は歩いたよな」

あっついね・・・とユミさんが言うと、恭子は「うん」
「ひゃ・・太陽、殆ど真上っちゃ」と自分の小さな影を見ながら言った。

夏の日差しはアスファルトに陽炎を立ち上らせ、ボクらが映画村入口を見つけてたどり着いた時には、みんな等しく大汗をかいていた。

チケットを買って、入口のゲートを潜ると・・・そこは、本当に江戸の街だった。

未舗装の道に軒の低い店が並び、売り子さん達は、皆、時代劇の格好だった。

「へ〜、雰囲気出てるっちゃね」
「うん、面白いかも!」

ボクらは街中のセットを歩きながら、それぞれの店や建物を覗いて歩いていた。

「暑いっちゃ・・・ね、何か飲まん?」
「そうだね、ノド乾いたな、一服しようか。」

ボクらは近くの茶店に入って、冷たいものを頼むことにした。
「いらっしゃいませ!」
井桁模様の着物を着たウエイトレスが、窓際に案内してくれた。

席に座って、ボクと川村が冷たいお絞りで顔を拭くと「いや、おじさんみたいだよ、あんたら」と女子の非難を浴びた。
「いいじゃんよ、汗かいちゃったんだからさ・・」
「そうだよ、全く。おじさんってなんだ、おじさんって!」

ボクらは団結して女子連合に対抗したが、ま、冷たいお絞りが気持ち良かったから、何を言われても馬耳東風、良し・・としよう。

恭子とボクと川村は、アイスコーヒー、ユミさんはアイスティーを注文した。


「恭子、いいの?」
「うん?なんがね」

ビールもあるみたいだよ?・・とボクは店の品書きを指さして言った。

「いいっちゃ、この後、広隆寺行くんやけ」
「酔っ払うワケには、いかんっちゃろ?!」
なるほどね・・ボクは殊勝な恭子の言葉に笑ったが、よっぽど好きで楽しみにしてるんだな、と少しいじらしく思った。

ボクらは冷たいモノを飲んで一息付いた後、村内を見て回った。

銭形平次の家、吉原遊郭の店構え、ミニチュア版の日本橋・・など。

いずれも「どこかで見たな、この景色」といえる位に頭に刷り込まれていたことに、ボクらは改めて驚いた。

「意外に時代劇って何気なく見てるし、撮影にはココを使うことが多いってコトなんだな・・」と川村が日本橋の欄干に凭れて、ギラギラと太陽を反射している水面を眩しそうに見ながら言った。

「そうだね、私は大奥ってドラマが好きだったよ」
「小学生の時にやってたけど」

「へ〜、意外っちゃ、ユミに時代劇は、合わんな」と恭子は笑った。

「え、そう?」
「私って、どんなイメージなの?恭子にとって」

「うん、お洒落でリッチな浜っ子・・やね、やっぱ」
「あら、有難う、恭子!」

「じゃ、私もう、時代劇好き・・なんて言わな〜い!」ユミさんの一言にボクらは笑った。

「いいんだよ、オレも銭形平次好きなんだから!」
「時代劇、いいじゃんか」
お〜と〜こだったぁら、一つにかける〜・・・川村は、主題歌を口ずさみながら歩き出した。
それを聞いて笑いながら、ボクらも川村の後に続いた。

日本橋を渡り終えたボクらは、流石に真夏の厳しい直射日光と、未舗装の道を歩く大勢の観光客がたてる埃に音を上げて昼食を摂るにした。

「なに食べようか」