ノブ ・・第1部
そんなボクらを見て、おばちゃんが言った。
「ええな、あんたら」
「若いいうのんは、それだけで怖いもん無しやからね」
キラキラしてて、見てて羨ましいわ・・と。
「でも、おばちゃん、今でも綺麗ですよ?」
「凄い品があるし・・」とユミさんは真面目な顔で言った。
「ま、お世辞でも、嬉しいコト言うてくれるやん・・ユミちゃん」
あ、そや。あれ、どこやったかいな・・・とおばちゃんは一旦、奥に引っ込んで行った。
「今度は、何持って来るっちゃろね・・おばちゃん」
あったあった・・とおばちゃんが手に風呂敷を抱えて、にこにこしながら戻って来た。
「これ、見てみるか?」
開いた風呂敷からは、昔の写真帳が出てきた。
黒い革張りの写真帳を開くと、綺麗な振袖姿の女の人が庭に立っていた。
「これ私や」
「すげ〜!美人じゃないっすか!」川村が素っ頓狂な声を上げたが、誰もその写真から目を離せなかった。
「ほんと、美人・・」
「きれいっちゃ!おばちゃん」
いくつの時の写真?と恭子が聞くと「戦争前の女学校時代・・17歳の正月やね、確か」
「うちの料亭の庭で、写真館の人に出張してもろてな、撮ったんや」
セピア色の写真には、体をほんの少し斜めに構えて、カメラに向かって微笑む美しい娘が写っていた。
「これじゃ・・お金はナンボでも出すけ、嫁に・・言う人が現れる訳やわ」恭子が嘆息しながら言った。
「今だったら、確実に、ミスなんとか・・だよね」
ユミさんも写真に釘付けになっていた。
「オレ、やばいよ」
「もしもこの時代におばちゃんに会ってたら、結婚申し込んでたかも・・・」
なんですって〜?!とユミさんに睨まれて、川村はしどろもどろに言った。
「だから、仮に、もしも・・って言ったろ?」
「ははは、そんな喧嘩せんでもええやんか、昔の写真くらいで・・」おばちゃんは面白そうに、そんなボクらを見て言った。
「これ一枚やったんや、駆け落ちの時に持って出たんは」
そうやったん・・恭子が言った。
「おばちゃん、ご主人の写真は?あるっちゃろ?」
「あるで、勿論」
次の写真帳は、布張りで少し痛んでいた。
「これが、うちの人や」
出征前の写真なのだろう、軍服姿で斜めに襷をかけて直立不動の若者が堅い表情でカメラを見据えていた。
「カッコいいっちゃ、ご主人も」
「ほんとだ、キリっとしてて、目鼻立ちがはっきりしてるね」
こんな二枚目やったら、おばちゃんが一目ぼれしたのも、ムリないっちゃ・・と恭子はおばちゃんにお酌しながら言った。
「そうやろ?キョウちゃん」
「もう、映画スターみたいな顔だちでな、うちで働いてた仲居の中には、ひそかに惚れとった人もおったみたいやねん」
「その二枚目を落としたんやけ、流石っちゃ、おばちゃん!」
「ははは、落としたんやのうて、追っかけたんや、私が」とおばちゃんはぐい飲みを笑いながら飲み干した。
「でも美男美女ですよね、ほんとに」ユミさんは、二人の写真を交互に見ながら言った。
「有難う、ユミちゃん」
「そない言うても、ユミちゃんも美人さんやし、川村君も男らしゅうて似合いのカップルやで?」
「有難うございます!オレも、そう思います!」
元気よく嬉しそうに答えた川村に対して、ユミさんは「え〜、こんなのとお似合いなんですか?私・・」と不服そうだった。
そんな二人の遣り取りに、ボクらは笑った。
「いいっちゃ、ユミ」
「優しいっちゃろ?川村君」
「そりゃ、そうだけどさ・・」
気は優しくて力持ち、最高やんか、ユミちゃん・・とおばちゃんも言った。
「ほら見ろ〜!」と川村は得意そうに、ユミさんに胸を張ってみせた。
みんなでそんな川村を見て笑っていたら「アンタ、ちょっと・・」恭子が目配せをして台所に行った。
ボクが追いかけて台所に行くと、恭子はいきなり抱きついてきて耳元で言った。
「もうダメっちゃ、うち・・」
「どうしたの?」
アンタと二人きりになりたい・・・と言いだした。
「いいけど・・・うん、分かった」
「じゃ、オレが酔っちゃったから、少し夜の街を酔いざましに散歩してくる・・ってみんなには言うよ」
「有難う・・ギュっとして」
ボクらは、台所の隅で抱き合った。
お互いの鼓動が響いていた。
店に戻って暫くして、ボクは言った。
「ふ〜、おばちゃん、オレ、ちょっと酔い覚ましに外ブラブラしてきます」
「あ、うち、心配やけ、ついてっちゃろうか?」と白々しく恭子が言った。
「なんだ、もう酔っ払っちまったのか?オガワ・・」と川村が言ったが、おばちゃんは何かを察したのか、含み笑いしながら「ええで、すこし夜風に当たっておいで!」
「キョウちゃん、ノブちゃんの手ぇ、引いてあげや?」
「うん、したら、ちょっと出てくるっちゃ」
奥の勝手口から、ボクらは裏道に出て、駅とは反対方向にブラブラと手を繋いで歩いた。
「ふ〜、ほんとに少し酔っちゃったよ、オレ」
「アンタ、強くないけね、お酒」
夜風が気持ち良かった。
散歩
裏道に人通りは少なく、ポツリポツリと街灯だけが光っていた。
「楽しいね、こんな宴会もさ」
「うん、楽しいっちゃ・・でも」
どうした?とボクが聞くと、恭子は言った。
「途中からな、アンタとキスしたくて、ギューっとして欲しくて堪らんくなってしもたっちゃ」
「酔ってしもたんかもしれん」
「ね、こっち・・」
恭子は、路地の暗がりにボクの手を引いて入って行った。
「ここなら、誰も来んけ」
恭子は抱きついてきてキスしてきた。
恭子のキスは、熱かった。
体全部をボクに預けて、唇だけでボクらは一つになったみたいだった。
暫くボクらは、お互いの唇を貪り合った。
そしてボクは我慢出来ずに、シャツの下から手を入れて恭子のオッパイをまさぐった。
「う〜ん、嬉しい」恭子の吐息が、小さく妖しく路地に響いた。
ボクは無言で屈みこんで、恭子のシャツとブラジャーをたくし上げて、乳首を口に含んだ。
そして両手で、恭子のキュロットの上からお尻を鷲掴みにして、揉んだ。
「ん、いかんっちゃ、感じるけ・・」
ボクは耳を澄ませて、人気の無いコトを確認すると、キュロットの太腿の隙間から右手を入れて、花園を触った。
そこは、もう熱くなっていて十分に濡れていることが分かる位だった。
「いや感じるっちゃ・・」
恭子は必死に声を抑えていたが、漏れる吐息だけは抑えようがなかった。
ボクは、パンティーをずらして、直接指で触った。
もう、恭子はヌルヌルに濡れていてボクを待ってヒクヒクしていた。
「アンタ、どうすると?」
「うち、このままにしとくと?」
ボクは立ち上がって、辺りを見回した。
幸い人通りは無く、高い空から月だけがそんなボクらのいやらしい姿を見ていた。
「ここで、入れちゃう?」
「アンタの好きにして、良かけ・・」
そう言いながら恭子は、キュロットとパンティーを一気に下げた。
そして、ボクのジーパンのホックを、キスしながら外した。
「来て・・」
「うん」
ボクはジーパンを膝まで下げて、恭子を向こう向きにして、民家の壁に手をつかせた。