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長浜くろべゐ
長浜くろべゐ
novelistID. 29160
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ノブ  ・・第1部

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「ゴメンけど、夜までとっといてな?!」

と今度はホッペにキスをして「さ、うちも一休みするけね・・」とボクの横に丸まった。

「もう、仕方ないな」
いくらボクでも、この場合オナニー・・という気分では無かったから、ひと寝入りしようと腕枕をして目を閉じた。

「うちな」
「完全に終わったけんね」恭子が呟いた。

「え、終わったって・・何が?」
「決まっとろ?生理っちゃ」

今回はきつかったっちゃ、普段と違う生活のせいやったんかな・・と言った。

「ストレス、ってコト?」
「うん、多分、体のな」

「精神的には・・・時々泣いたけど、アンタと一緒におれて楽しいけね」
「そうなんだ」
「でもさ、オレ・・朝、買い物行ってた時に思ってたんだけどね」

「なん?」
「オレ達、ほんと、観光客じゃなくなっちゃったな」

「あはは、そうやね。でも楽しいっちゃ!」
「うん、オレもそう思った」
「二人で行き当たりばったりの旅してるみたいでさ、お誕生会の日からずっとね・・」

それが楽しいんだな・・とボクは言った。
「うちも、同じや」恭子はボクの脇の下で、囁いた。

「うち、本当はな・・」
「京都でなくても、良かったっちゃ。アンタと一緒やったらどこでも良かったと」

「でも、結果的に、ここは大正解やった」
「ええおばちゃんと知り合えたし、料理も覚えられるし」

帰っても、アンタに作ってやるけね?美味しいもの・・恭子はいつの間にか起き上って、顔をボクの胸に押し付けた。

「アンタの心臓の音、好きっちゃ・・」
ボクは目を閉じたまま、微笑んでいた。
古都の昼下がりは、思いの外静かだった。

ほんの少しウトウトしたと思ったら、もう3時だった。

ボクは隣で寝ていた恭子を起こした。
「恭子、時間だよ、3時になるよ」
「う〜ん、あ、そうやね」

恭子はパっと起きて、ボクらは洗面所に行った。
歯を磨いたら少しは、シャッキリしたかな?

「ユミは・・そのままにしとこうな?!」
「うん」ボクらは、何の物音もしないユミさん達の部屋の前を静かに歩いて階段を下りた。

「どうや?少しは眠れたかいな」おばちゃんはもう、いつもの割烹着を着て準備を終えていた。

「済みません、休ませてもらって」
「ええわ、疲れてる時は昼寝が一番やし」

でもな、寝過ぎはあかんで?せいぜい30分位にしとかな・・とおばちゃんは言った。

「さて・・」おばちゃんが格子戸を開けて、暖簾を出しながら言った。
「今日は日曜やし、6時には仕舞おうな?!」

「いいと?そげんに早う」
「日曜の夕方過ぎは、もうお客は来んわ」
「みな家に帰るし」

それにお友達も来てくれたんやさかい、みんなで楽しく晩御飯にしようや・・と。

「は〜い、したらそれまで頑張るっちゃ、ね?アンタ!」
「うん、午後もよろしくお願いします」

「はは、ま、ぼちぼち・・いこな」

ガラガラっと格子戸が開いて「ええかいな」とお客さんが入って来た。
「いらっしゃいませ〜!」恭子の元気な声に、そのお客さんは「なんや、えらい若いバイト入れたんやな、女将」と笑いながら言った。

「あら、久しぶりやね」
「遠くの大学に行ってた私の娘や!」

「夏休みやから、彼氏と二人で遊びに来たんや」

「へ〜、女将の娘かいな、えらいベッピンさんやな」
「有難うございます・・ご注文は、お決まりですか?」

恭子は、おばちゃんの娘になりきって笑顔で応対した。
そんな恭子を、おばちゃんは愛しげに見ていた。

その後も、午前に比べたらお客はパラパラ・・程度だった。
そしておばちゃんの言った通り、5時を過ぎたら客足はパッタリと絶えた。
「な?言うた通りやろ?」
「あんたら、何食べたい?今夜は」
「あ、そや・・キョウちゃん、ちょっとお友達の様子、見て来?」

あの人らにも、聞いてな?食べたいもの・・とおばちゃんは言った。
恭子は、は〜い・・と階段を上がって行った。






      また楽しからずや






恭子は、階段の半分はトントンと上がったが、ふと思い立って、残りはゆっくりと行きながら声をかけた。

「ユミ〜!起きとると〜?!」
廊下に上がった時、部屋からゴソゴソと音が聞こえて、ユミさんの声が返ってきた。

「あ、恭子?お、起きてるよ、勿論・・」
恭子はニヤニヤしながらも、障子を開けずに廊下からまた、声をかけた。
「川村君は?」
「・・お、おう、サンキューな。大丈夫、もう起きてるから、オレも」

「おばちゃんがな、何食べたい?っち言うとるっちゃ」
「何でもいいよ、私達」
「お店は?もう終わったの?」

そろそろ仕舞いやけ、ひと段落ついたら下りといでな・・と恭子は言って店に下りてきた。
「おばちゃん、何でもいいっち言うとったっちゃ!」
「分かった、ほな、お任せでええな?あんたらも・・」

うん、よろしくっちゃ・・と恭子は言って、ボクの横に来て嬉しそうに耳打ちした。
「うちが声かけたらな、慌ててごそごそしとったけね・・何しよったっちゃろね?!」
「バカ、恭子は、もう・・」ボクらはいきなりの恭子の声に、二人の世界を壊されて狼狽したであろう二人に、同情しつつも笑ってしまった。

「もしも初体験がうまくいっとったら・・」
「今頃は、いっときも離れたくないっちゃろね」

「そんなもんか?」
「そんなもんっちゃ、女は」

恭子はウフフ・・と笑いながらおばちゃんのところに行った。
「今夜はなんにすると?」

ボクは奥に行った恭子に代わって、テーブルを拭いて後片付けにかかった。
時計はそろそろ6時に近かった。

あらかた片付け終わって、一服していたら・・奥からいい匂いがしてきた。

「ん?鳥か?」
ボクが鼻をひくひくさせていたら、おばちゃんが出てきて「少し早いけど・・仕舞いにしよな!」と暖簾を入れて鍵をかけた。

「今夜は鳥料理ですか?」
「お、さすが、食べ物には敏感やね、ノブちゃん!」
「ご名答!」とおばちゃんは笑いながら、キョウちゃんに教えながら作ったんや、今夜は・・と言った。

「なんだろう、鳥料理って」
「もう少し待っときや?」

それまで、一杯やっとこう・・とおばちゃんは冷えたビールを持ってきた。
「たまには、ノブちゃんと差し向かいもええやろ」
おばちゃんはボクにビールを注いでくれた。
ボクもおばちゃんにお酌した。

「ほな、お疲れさん!」
「お疲れ様でした」
二人のコップがカチン!と鳴った時に、ユミさんと川村が店に顔を出した。

「どうも、済みませんでした」
「お騒がせして・・」ペコリと頭を下げた川村を見て、おばちゃんが言った。
「アンタの声、初めて聞いたわ」
「お名前は?なんて言うのん?」

「あ、申し遅れました!オレ、川村って言います!」
直立不動で挨拶した川村がおかしかったのか、おばちゃんは「そない固くならんでもええがな・・・こっちおいで」
「一緒にやるか?」と笑いながら言った。

ユミさんも「済みません、私まで寝てしまって」

「構へんて、さ、ユミちゃんもこっち来?」
はい・・と二人はボクらと同じテーブルに着いた。

「川村君、いけるか?」
「ハイ!頂きます!」