ノブ ・・第1部
「あ、お勘定は?」とボクが聞くと、そんなもん後でええよ・・と言って、お客さんのところに行った。
「じゃ、オレ達も行くか」
「そうやね、おばちゃんも忙しくなりそうやから・・」
なら、おばちゃん・・また後でな?と恭子はおばちゃんに声をかけてボクらは席をたった。
「あぁ・・7時過ぎやで?!」
は〜い、じゃまた・・とボクらは店を出た。
「人生色々っちゃね・・」
「うん、ほんとだな、うどん屋のおばちゃんの半生でも、波乱万丈なんだね」
うん、後半戦が楽しみになってきたっちゃ・・と恭子は言った。
「ね、ホテル・・行ってみらん?」
「うん、ちょっと早いけど、チェックイン出来るかな」
時計は1時近くを指していた。
ボクらは、またブラブラと昼下がりの街をホテルに向かった。
チェックイン出来たボクらは、部屋に落ち着いて一息付いた。
「ね、シャワーせん?」
「夕べは浴びれんかったけね、ベタベタして気持ち悪いっちゃ」
「そうだね、恭子先に浴びていいよ」
「アンタ先にし?!うち、ちょっと・・・」
「ちょっと、何?」
「いいっちゃ、ささ、入り?」
うん・・とボクは不承不承、先に浴びた。
「ふ〜・・」バスタオルを腰に巻いてサッパリして出てきたボクに、ベッドに腰掛けて缶ビールを飲んでいた恭子がニッコリと微笑んだ。
「あ〜、また!」
「えへへ、さっきな、エレベーターの横の自販機で買うてきたっちゃ!」
もう・・と頭を乾いたタオルでゴシゴシ拭いてたら「はい、アンタのもあるけね?!」
とプシュっと缶を開けて渡してくれた。
「はいはい、頂きます」
「えへへ、乾杯!」
恭子はグイっと飲んで「さて、うちもサッパリしてくるっちゃ」とバスルームに入った。
恭子が浴びている間に、ボクは一服しながら考えていた。
「人生か・・・きっとこれからも色々あるのかな、オレも」
今は、隣に恭子がいる。
でも、もしもあの雪の日の事故が無かったら、今頃ボクは、いやボクと恵子はどうしていたんだろう。
やっぱりこうして、暇を見つけて二人で旅行してたんだろうか、それとも・・・。
「あっついっちゃ〜!」恭子が裸で出てきた。
「もう・・換気扇、弱いっちゃない?ここの」
ブツブツ言いながらタオルで体を拭いていた。
「ちょっとちょっと、恭子さん?」
「ん?なん?」
「せめて・・さ、隠そうよ、オッパイ位はさ?!」
「いいやん、暑いんやもん・・それに、嫌いやなかろ?」
とバスタオルで隠す振りをして、ポーズを取って妖しく微笑んだ。
「そりゃ、そうだけど・・・さ」
だめだ、さっきまで考えてたコトがすっ飛んでしまった。
そうか、これが・・この恭子のあっけらかんとした明るさが、ボクを元気にしてくれたんだなと改めて思ってボクは笑った。
「なん?やっぱ、嬉しいっちゃろ?」
「うん、そうだね、有難うな、恭子さん!」
ボクは濡れたバスタオルごと恭子を抱きしめた。
「なん?どうしたと?」
「好きだよ、恭子」
なんね、抱きたくなったん?良かよ・・と恭子は熱いキスをしてきた。
キスの後、ボクは恭子の濡れた頭を抱きしめて言った。
「好き、恭子・・」
「うちも、アンタが好き」
恭子は力いっぱい、抱きついてきた。
ボクはそんな恭子を抱えてベッドに運んで下ろし、部屋のカーテンを閉めた。
それでも、さほど厚くないカーテン越しの光に、ベッドに横たわった恭子の体は綺麗に浮かび上がっていた。
ボクは立ったまま、恭子を眺めた。
「なん、恥ずかしいっちゃ」
恭子は両手で胸を隠そうとしたが「隠さないで、見ていたい」と言うと、両手を下げて仰向けのままボクを見据えた。
「ほんと、綺麗だよ・・・」
ぼくがため息交じりに言うと、恭子は「アンタも、タオル外し」と言った。
うん、ボクはタオルを外した。
裸で立ったままの僕を見て、恭子は「逆光やけ、アンタがシルエットに見える」
「アンタやないみたいで、なんかドキドキしてきたわ」
ボクは無言で恭子に覆いかぶさって、キスをした。
両手で恭子の自由を奪って。
「・・・・」
重なった唇の中で恭子が何かを言ったが、ボクは聞かなかった。
お互いの舌と舌を絡ませて、ボクらは長いキスをした。
暫くして唇を離した時、恭子が言った。
「アンタ、いつもより強引やね・・」
「いや、か?」
ううん、感じてしもた・・と恭子はボクの胸に顔を押し付けてきた。
ボクはそのまま恭子の股を開いて、自分を花園にあてがった。
ボクの先っちょがもう既に濡れていた花芯を探し当てたが、ボクは暫くそのままにしていた。
「なんしよると?」
「・・・・」
「どうしたと?」
ボクは恭子の顔を見つめて、意地悪に言った。
「恭子・・・欲しい?」
「入れてくれんと?」
恭子もボクから目を逸らさずに言った。
「意地悪、じゃ、こうするっちゃ!」
恭子の両手はボクの手から逃げ出して、すばやくボクの腰を後ろから抱きしめて自分の腰を浮かせてグ〜っと入れた。
「あぁ〜」
おまけに両足をボクの腰に巻きつけて、今度はボクが逃げられなくなってしまった。
そのままで、恭子は言った。
「これで、アンタはうちのもんやけ・・」
「もう、離さん!」
ボクらは、このまま固まってしまうんじゃないかって位長い間、そのままだった。
でも、お互いの温もりと鼓動が心地よくて。
暫くして、僕はゆっくりと動き出した。
「アンタの負け」
恭子は小さな声で言って、キスしてきた。
「うん、負けた・・動くよ?恭子」
「きて・・」
恭子も、腰に絡めた足はそのままにボクと一緒に腰を動かしだした。
ボクらはぴったりと深く嵌ったまま、二人の腰はまるで一つになったかの様に上下した。
「なんか・・感じるっちゃ・・これ」
小さな声で恭子が言った。
ホテルの部屋には、途切れ途切れの吐息だけが響いていた。
ボクは、いつもよりも強い密着感に刺激を感じてイッてしまいそうになった。
「恭子、オレ、持たないかも」
「うん、いいっちゃ・・そのままイって・・あぁ〜!」
ボクらは変わらずそのままの格好で、静かにフィニッシュした。
「・・・・」
恭子がやっと足を外して、伸ばした。
「初めてや、こんなセックス・・」
「うん、なんか、かえってイヤらしかったな」
恭子はフフフと笑って「でも、これやったら他に誰かが部屋におっても出来るっちゃない?」
「声さえ、出さんかったら・・」と妖しい目でボクを見た。
「あは、ほんとエッチだな、恭子は」
「たとえばの話や、仮定の・・な・・」
いや、けっこう本気で言ってるな?とボクは笑いながら体を起こして抜こうとした。
「あ、いかん!待って?」
「うん?どうした?」
多分、流血の大惨事やけ、待っとって・・・と恭子はバスタオルを腰の下に敷いて言った。
「これで、オッケーや!」
「アンタは、そのままシャワーしといで!」
うん・・・ボクは一足先にバスルームに入った。
少し遅れて、恭子がバスタオルを抱えて入って来た。
「これ、早いとこ洗わな・・染みになるけね」
ボクはバスタブの中でシャワーを浴びて、恭子は裸のまま洗面台でバスタオルを洗った。