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長浜くろべゐ
長浜くろべゐ
novelistID. 29160
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ノブ  ・・第1部

INDEX|26ページ/80ページ|

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「でも、いいなアンタ達・・」ユミさんはボクらを交互に眺めて言った。

「オガワっちと恭子、お似合いだよ、なんかね」
「ふふふ、ユミと川村君だって、いい雰囲気やない?」

「この間は、膝枕で仲良さそうだったしね」とボクも言った。

「あの後だったのよ」
「迫ってきたん?」

うん、暫くして起きだしてからね・・とユミさん。

「あの二人、これからどうなるんだろう・・・」
「な〜んて話しをしてた時よ」

「あの時は、私まだ心の準備が・・なんて言ってさ、ゴメン!って追い出しちゃったんだよね、アイツを」

「キツイっちゃんね〜ユミも・・・でも心の準備って、花嫁さんかアンタは!」恭子はケラケラと笑った。
「だって、ビックリしたんだもん、いきなりだったからさ」
「次の朝には、合宿に行っちゃったみたいだから、アイツ・・どう思ったんだろう」

ユミさんが心配そうな顔をしたのと裏腹に、恭子は嬉しそうだった。

「逆にいいチャンスやないと?」
「あの時はゴメン、私も考えたんだけど・・な〜んて言って、話したらいいっちゃ」

そうなの?とユミさんは顔を上げた。

「そうやないと?」
「多分、川村はショックと不安を引きずったまま、合宿に行ったっちゃろ?」
あ〜あ、とうとう呼び捨てになっちゃった。

「ユミに嫌われてしもたんやないかってな」
それが帰って来て、ユミから声かけられたら、嬉しいに決まってるっちゃ・・・恭子の言い方には説得力があった。

「そっか・・・そうだよね、そうしようかな」
「うん、それがいいっちゃ。川村もきっと待っとるけんね」

うん、ユミさんは明るく言った。
「私、明後日、アイツが帰ってきたらご飯でも誘ってみるよ」

そうやね、そしてそのまま雪崩れこむっちゃ!と恭子は悪戯っぽく、笑いながらユミさんの肩を押した。

「もう・・恭子、あんた楽しんでない?私達の事」
「当たり前っちゃ!友達の悩みが解決しそうなんやもん、嬉しくないわけないやろ?」

そうなの〜?ほんとに?とユミさんも笑った。


ま、いいや・・有難う、お二人さん、と笑顔でユミさんは言った。

「そうっちゃ、ユミも難しく考えんで飛び込んで行けばいいっちゃ、川村の胸に!」
「うん、そうしてみるよ」

さて・・お邪魔でしょうから、私はそろそろ、お暇しましょうかね・・とユミさんが帰ろうとした時、恭子は言った。

「ユミはいつ帰ると?実家に」
「うん、私は今月中はいる積もり」

「追試も、二個あるからね」とバツが悪そうに笑った。

「恭子は?アンタこそいつ帰るのよ?」

「う〜ん、うち、まだ決めとらんけ・・」
とボクを見た。

「この人次第やね」
「え?なんで?」

鈍いね、オガワっち・・とユミさんもボクを見た。

「恭子はね、オガワっちに合わせたいんだよ、夏休みをさ・・ね?そうでしょ?恭子」

「うちな、もっと二人でどこか行きたいっちゃ・・」
恭子が、今度は覗きこむような目でボクを見た。

「そう・・だね、行こうか」とボクもお愛想笑いをしたが、正直、今の今まで何も考えてなかったから、ちょっとドギマギしてしまった。

「うち、京都に行きたい」
「京都か、修学旅行以来だよ、オレ」

うちは・・と恭子が言いかけた時、ユミさんが言った。

「ハイハイ、あとはお二人さんで仲良く旅行の計画立ててね?!」
じゃ、私は、これで・・・と。

「あ、ユミ、報告するっちゃ、明後日ね!」
「バカ・・知らない、じゃ〜ね!」とユミさんは笑いながら部屋を出て行った。


「うまくいくといいね、彼ら」
「大丈夫っちゃ、ユミ、可愛いけね」

うん、そうだね・・とボクは一服した。

「な、アンタ・・ほんとに行けると?旅行」
「うん、いいよ。さっきはいきなりでビックリしたけど」

嬉しい〜!と恭子は抱きついてきた。
そして、ボクの耳元で囁いた。

「うちな、アンタと二人で歩きたいっちゃ。京都の色んなとこ」
「いいけどオレ、あんまり詳しくないよ?京都は」

いいっちゃ、うちが連れて行っちゃるけん・・と恭子は、ボクの顔を抱え込んでキスしてきた。





       京都旅行




思い立ったが吉日っちゅうやろ?と恭子はボクに、家に一回帰って荷物をまとめて来る様に言った。

「え?いつ・・行く積もり?」
「今夜」

こんや〜?驚いてボクは聞いた。

「そ、今夜、出るけんね!」
「今夜って、何で行くの?京都まで」

「夜行寝台列車っちゃ」
「寝台車?あの、三段ベッドの?」

「そう、楽しいやろ?」
恭子は嬉しそうに、寝室の隣の部屋に入って準備を始めた。

「ほら、アンタも、自分の荷物まとめてき?」
「う、うん、分かった。じゃ後でね」

早うするっちゃ・・と恭子の声に背中を押されて、ボクはマンションを後にした。

街は夕方になっていた。
ボクは久々に自分のマンションに帰った気分だった。

あのお誕生会からこっち、ずっと恭子と一緒だったし、一人になったのも久しぶりだった。

ボクの部屋はまるでサウナみたいだった。

いつもみたく窓を開けて・・とも思ったが、ここでゆっくりする訳にもいかなかったから、手早く着替えをディパックに詰め込んで部屋を出た。

「今夜から京都って・・全く、恭子は」

不思議に腹は立たなかった。
思いつきで言ったのだろうが、彼女が言うとなぜか許せてしまう。

恭子のマンションに着いて、チャイムを鳴らした。

「・・開いてるっちゃ〜!」

ドアを開けると、恭子は玄関でサンダルを履こうとしていた。

「もう、遅いっちゃ!」
「ゴメン・・」

さ、行こう!と恭子はボクを外に出し自分も出て鍵をかけた。

「まずは、東京駅に行くけね!」
見れば、大きなボストンを下げている。

「ね、何泊する積もり?」
「決めてないっちゃ」

決めてないって、オレ、せいぜい1〜2泊の積もりだったんだけど・・と言うと、いいけん、とにかく行こう!と恭子は言った。

「行き当たりばったりの旅行も、楽しかろ?!」

とニコニコ顔で言った。
そんな顔で言われたら何にも言えなくなっっちゃうじゃんよ、得だな、恭子は・・・とボクは笑いながら恭子の後について行った。


外はやっと暗くなってきたが、まだまだ蒸し暑かった。

「はい、コレ、持っちゃり?!」
「重いけね、けっこう」

はいはい・・ボクは恭子のボストンを持った。
確かに、結構重かったから、明大前の坂で早くも汗が噴き出てきた。

「なに、入れてきたの?こんなに・・」
「あはは、女の子は色々と荷物が多いけね!頑張り?」

「ほら、うち生理やろ?可哀そかろ?!」

仕方ない、頑張りましょ・・・男だからね。

御茶ノ水から中央線で東京駅に着いたボクらは、一度改札を出て京都までの切符を買うことにした。

「で、何時発なの、その列車は」
「知らん」

「え、恭子、知らないの?知らなくて・・言ったの?」

「うん、知らんけ。でも、テレビでやってたと、ロマンチックな列車があるっち」
は〜、全く大したもんだ、この子は。

仕方ない、ボクらはみどりの窓口に行って切符を買うことにした。

「済みません、京都に行きたいんですが、夜行寝台車ってありますか?」