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ef (エフ)
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夢の途中4 (121-151)

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遠縁で在るとは言え、数年前まで見ず知らずであった花田夫妻の期待を裏切る事は出来ないと、思いつめた覚悟で美智子は渡英したのだ。
 
それに比べて孝則は、美智子との肉体交渉で男としての自信を多少得ていたのと、【私学医学部=金持ちのボンボン=玉の輿】と云うチャッカリ女子の方程式に乗っかり、それまで受験勉強で抑圧されていた分、大いに弾けた。

 美智子の事は最初の三か月で忘れた・・・



美智子が二十歳の成人式を祝う為に帰国していた時、巌は孝則・登美子の前で二人の婚約を切りだした。
孝則・美智子には勿論、妻の登美子にも相談なしであった。
巌は自分の病院でも家庭でも暴君であった。よって、誰に相談する必要も感じなかったのだ。
当然、孝則は反発した。
「父さん、それはどう云うことですか?僕たちに何も相談なしに・・一体、どう云う積りなんですか!」
『あなた、孝則さんの云う通りですよ! こんな大事な事、誰にも相談なさらずに・・・第一、美智子さんだって・・・』
[・・・・・・・・・]美智子は黙って俯いていた。

{うるさい!何も今すぐに、と言っておるのでは無い!孝則がこの後医師免許の国家試験に合格し、一端の医者になってからの話だ!しかし・・・・・・最近の孝則を見ているとフワフワ浮つきよって!・・・そんなことで、ワシの【花田総合病院】を継げるとおもっておるのか!  美智子を見ろ!16歳で単身渡英し、今ではあの名門ケンブリッジの大学生ではないか! そうなるまで美智子がどれだけの苦労と努力をしてきたか、お前らに分かるか!お前にとって美智子は嫁として勿体ない位だが、頼り無いお前には過ぎた嫁になる・・・それに・・・・・孝則、ワシが何も知らんとでも思っているのか?・・・・・}
孝則はハッとした・・・それはじっと俯いて話を聞いていた美智子も同時に驚いた表情で顔を上げた。

{お前らは・・・・元々好き合っているのではないか?・・
それに・・・・
はっははっは!隠さんでも良い! 若い娘と若い男が同じ屋根の下で暮らしておれば自然の成り行きじゃ♪}

(・・・(・_・;)父さんは・・俺と美智子の関係を知っていたのか・・しかし・・・・それはもう5年前の話し・・・美智子だって、もう忘れていることじゃ・・・・あ!(*_*; まさか、美智子が・・・)
孝則が顔を上げ美智子を見ると、無表情だった美智子の口元が僅かに笑った・・・



 その事を切りだされて、孝則としても、「アレは遊びだった・・」とも言えず、登美子とて、息子と美智子が男女の仲になっていたと在っては拒絶する訳にも行かなかった。
その時、美智子の口が動いた。
『叔父様、今は未だそんな事おっしゃらないで・・・孝則さんと私がそんな事になった事は・・・事実です。
だけど・・・・私、孝則さんを好きだったから、何も後悔していません。
むしろ、叔父様や叔母様を裏切った様な気がしてずっと苦しんでいたんです・・・
だから、今は何もおっしゃらないで・・・私、ここまで育てて貰って感謝の気持ちでいっぱいなんです!なのに、その上孝則さんと結婚だなんて・・・幸せすぎてバチが当ります・・・
私は未だ3年間、イギリスに居なくてはなりません。
このお話は私が卒業して帰国してから改めて、にして頂けませんか?』
{うむ、美智子、良く言った!どうじゃ登美子、健気な娘ではないか?あっはっは! }
同意を求められた登美子も、美智子の殊勝な物言い感動した。
「そうよ、美智子さんに孝則は勿体ない位だわ!でも・・・・・案外、お似合いなのかもね?おっほほ♪(*^。^*)」

(・・・・(/_;)一体、どうなっているんだ?・・・・・)

一人孝則だけは笑う事が出来ないでいた。



その頃、孝則は翌年に控えた【医師国家試験】の為猛勉強の最中であった。
巌の云うように「浮ついた気持ち」など、自身では無いものと思っていたが、美智子との過去の事を持ちだされると、その事に反発出来なかった。
美智子とは彼女の渡英と孝則の名古屋での新生活により、互いが時折大宮に帰る事が在っても、滅多に顔を合わせる事は無かった。
それは孝則自身が美智子を避けていたという理由もあったのだ。
 孝則は今更ながら、自分の薄情さを恥じていた。
美智子の言葉により、正式な婚約は取りあえず3年後とはなったが、実質的には孝則の両親に認められたのも同然であったから、翌日から美智子は孝則に対して婚約者として接した。
 孝則自身も、大学に入学当初の『放蕩生活』とは決別していて、特に親しくしていた女性も居なかったこともあって、多少の違和感を感じながらも美智子の情熱に流される形で彼女の気持ちに応じた。
 孝則と美智子は5年ぶりに結ばれた。
今度は堂々と両親に言って出掛けた。
そして、横浜の夜景の見えるシティーホテルに二人で投宿する。
5年の歳月は当時15歳の少女を眩しく妖艶な程の女に変えていた。
 『お兄さん、私・・・嬉しい・・・・』
美智子は窓辺のソファで孝則の腕の中に抱かれ呟いた・・
 『私の全てはお兄さん、貴方のものよ?』
下から見上げる美智子を見つめるうちに孝則は愛おしさが溢れてゆき、5年前よりは少し落ち着いて唇を重ねた・・
右手で弄る美智子の胸の膨らみは5年前とは比べ物にならない程豊かだった・・・
ベッドで横たわる美智子の全裸の身体を見、その均整のとれたプロポーションに思わずため息が出た・・・
(・・・・コレが総て俺のもの?・・・・・・)
「美智子・・・・」
孝則は美智子の全身を愛撫した。
その愛撫の一つひとつに美智子は激しく反応していく・・
美智子に重なり、交わった時も孝則の背中をキツク抱き、爪を立てた・・・

孝則は今までの女の誰よりも美智子を素晴らしいと感じた。



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章タイトル: 第20章 取引 1992年冬


 親族の焼香が進む中、同時に一般参列者の焼香も始まった。
孝則と香織は一般参列者に混じって焼香した。長い読経も終わり、通夜の焼香は終わった。
従弟の間島文雄が改めて、巌の傍により何か耳打ちした。
相変わらず、巌は瞑目したまま文雄の言葉に耳を傾けていた。
話が終わり、巌が立ちあがり、続いて美智子もそれに続いた。
二人は無言で広間を出て行った。
程無く、文雄が孝則等の傍に寄り、告げる。
「孝ちゃん、叔父さんが書斎で待ってるよ。」
孝則と香織は意を決して、広間の脇の廊下を歩き、普段巌が書斎として遣っている部屋に入った。
「父さん、ご無沙汰しています。」『お父様、ご無沙汰しております。』
二人は揃って頭を下げた。
[お前ら、一体此処に何をしに来たのだ? ワシは遠の昔にお前を勘当したお前も、そしてその横にいる泥棒猫女も、この家にはもう拘わりの無い者ばかりじゃ!一般客が登美子に焼香するのまでワシには止める権利は無いと思う故目を瞑ったが、この上何か云いたい事でもあるのか?]
「いえ、別に・・・ただ、母さんにお別れを云いに来ただけです。 貴方とは勘当されて縁は切れているかも知れないが、僕にとって母さんは母さんだ!アンタに何か云われる筋合いはない!」
作品名:夢の途中4 (121-151) 作家名:ef (エフ)