夢の途中4 (121-151)
『うふふ♪好きなだけよ(#^.^#) ♪好きこそもの上手なれ♪って云うでしょ?アレよ♪(*^^)v
あ、そうそう、今ね、新プリンセスホテルの【ブリティッシュガーデン】でこの秋から放送されるテレビドラマの撮影が始まってるってご存知?確か、【風のガーデン】』
「ああ、そう云えば・・・前回五月に来た時フロントのマネージャーが言ってたね♪僕が滞在してた時は丁度撮影のない時の様だったけど・・・」
『あ、前回いらした時、プリンセスホテルにお泊りでしたものね♪ もう二年も前からホテルの山側の敷地にとっても素敵なお庭を作って。 まだ一般にはお庭は公開になって無いけど、きっとまた藤野の新しい名所になるわね、きっと♪
(^_-)-☆ ドラマも楽しみだわ♪』
香織は白いレースの日傘をさして、優一と語らいながら花畑を歩いた。
『ねえ、そろそろお腹すいたでしょ?もう1時廻ってるわ(#^.^#) 』
「もうそんな時間?夢中で花を見てたら時間を忘れるね(^_^;)・・」
『お弁当、さっき静ちゃんに冷蔵庫入れて貰ってあるから、売店に戻って頂きましょ♪(^_-)-☆きっと熊田さんも帰ってるだろうし♪』
「(^_^;)ああ、そうしよう・・・」
香織の薦めで二人は元来た花畑の小路を戻って行った。
熊田と顔を合わせるのだと思うと、何故か気が重い優一であった。
花畑を見渡せた小高い丘まで帰って来ると、売店の傍で小さな人だかりが出来ていた。
その中に、最初に出会った熊田の次女・静子も居た。
[あ、香織ママ、大変!父ちゃんが!父ちゃんが!]
香織の姿を見つけた静子が、香織に向かって大声で叫んだ。
二人は自然小走りになって人だかりに近づくと、その輪の中心に熊田が足を抱えうずくまっていた。
彼らの側に農作物を運搬するための小型のトラクターと、その後部に連結していたであろう車輪付きの台車があった。
台車にはタマネギが満載されていたのであろうが、台車はひっくり返り、辺り一面にタマネギが散乱している。
[とうちゃん、店で売るタマネギを台車で引っ張って来たんだけど、そこの砂地でタイヤを取られたもんだから、よせばいいのにトラクターから下りて、あの丸太、台車のタイヤに噛ませて、独りでエンジン蒸かして(ToT)・・・]
確かに、散乱するタマネギの中に1メーター程の丸太が転がっていた。
[無理やり丸太にタイヤ乗り上げて、砂地からは出られたんだけど、今度は台車がバランス狂って、父ちゃんの上に台車ごとひっくりけえって・・・]
{うるせぇ~~!こんなもん、大したことねぇ~!あ!痛てぇ~~!(>_<)}
熊田は思わず、右脚を抱え込んだ。
熊田の額は苦痛に歪み、脂汗が流れていた。
「熊田さん、無理しちゃだめだ! 」
優一は熊田の側に膝まづき、作業ズボンの上から、そっと熊田の右脛の辺りを触った。
{い、痛ってぇ~~~~!(>_<)ナニしやがるんだ!}
「娘さん、すぐ救急車よんで!多分、折れてる・・・」
15分程して救急車が農園に到着し、ストレッチャーに移された熊田は運ばれて行った。
運悪く、次女の夫も長男夫婦とも連絡が取れないまま、売店を離れる訳にいかない静子に代わって、香織が救急車に同乗した。
多分、藤野市には一つしかない急救病院、【藤野総合病院】に搬送される事は間違いなかった。
優一も車で後を追う事にした。
熊田の怪我は軽度の全身打撲と右脚脛部の複雑骨折であった。
後に全治3カ月の診断が出た。
熊田が救急車で農園をでた直後、長男夫婦と連絡が取れ、駆けつけた。
『林さん、御免なさいね(/_;)・・』
「そんな・・・香織さんが謝る事じゃなよ・・・・事故は嫌だね・・
魔がさすと云うのかな・・・・僕らの仕事も常に危険とは背中合わせで、いつも口を酸っぱく注意していても事故は起きる・・」
『林さんもお怪我された事在るの?』
「いや、僕は幸い入院するような怪我は無いけど・・・・・・
まだ若い部下や、下請けの職人さんが・・・・・・亡くなった人もいるよ・・・」
『そうよね、何時も古畑さんに言ってらっしゃるものね・・・
でも、・・・・・熊田さんの処、大変だわ・・・今お花畑で、観光客でいっぱいでしょ?タマネギやジャガイモの世話もこれからなのに・・おまけに、これからドライフラワー用のラベンダーの刈り入れやら天日干しやら、一年中で一番忙しい時期なのよ・・・私、お店休んで、熊田さんの面倒看て上げようかな・・熊田さんには今まで散々お世話になってるし・・・・・』
優一はハッとした・・・・
香織が熊田の看病?・・・・・・・
元看護婦の香織の看病なら誰も文句ないだろう・・
気遣いも出来る・・・・
内臓の疾患では無い熊田の身体なら、病院食にも不満が出る。そんな時香織の手料理なら・・・
ましてや熊田は香織に好意を持っている。
熊田にとってこんな素晴らしい看護人はいないだろう・・・
「ああ、それは良いね(^_^;)・・・熊田さんもご家族も喜ばれるよ・・・」
優一は心にもない言葉を
口にしていた・・・
翌朝、香織の店に【都合により暫くお休みします】と貼紙が貼られた。
狭い町故、熊田の事故の事はその日の内に常連の耳に入っていたから、知らずに訪れるものは少なかった。
熊田は事故の翌日に4時間に渡る脛の骨折修復手術を受けた。
香織も朝から病院に駆けつけ、熊田の家族と共に見守った。
熊田の経過は順調であったが、リハビリも含め一カ月の入院生活と、完治するには更に二カ月の通院が必要だった。
優一は香織の店のお陰で、このところ朝食をきちんと摂る習慣に戻っていたが、香織の作る朝食で無ければわざわざ何処かで買って食べる気も起らず、以前のように朝食抜きの生活に戻った。
昼食も香織の店で摂る事が多かったが、古畑共々現場事務所で取っている仕出し屋の弁当に切り替えた。
バイパスの工事の方は順調で基礎部分のパイル打ちの1/3が予定通りに進行していた。
鍬入れ式直後の長雨による工程の遅れはすっかり取り戻していた。
香織の朝食が食べられなくなった所為でも無かったが、札幌支社での仕事が多忙になり、藤野に戻れない日もあった。
この藤野以外の市町村での新たな受注活動や打ち合わせが活発になったからだった。
今までならどんなに遅くなっても藤野に帰り、翌朝香織の店に出向いた優一であったが・・・・
手術6日目、その日も香織は朝から熊田を見舞っていた。
熊田ファームは【夏の掻き入れ時】を迎えていたし、北国の短い夏にあって、その他の農作業にも人手は幾らでも欲しく、家族の負担を少しでも軽減してやりたいと思ったからだ。
「ママ、すまねぇなァ♪(*^。^*) 」
『おはよう、熊田さん、どう?お加減は?(=^・^=)』
「ああ、お陰で、松葉つえをつきながらならション便にも一人で行けるようになったよ^^;・・どうもあの[シビン]て奴には慣れねぇ(ToT)・・・・ああ、今静子も来てくれててよ、ママが来たら待っててくれってよ♪(^^)/」
『ああ、静ちゃんが?農園忙しいでしょうに・・』
作品名:夢の途中4 (121-151) 作家名:ef (エフ)