笑撃・これでもか物語 in 歯医者
マークは何か探し物をしているようだ。そしてしばらくして、再登場。しかしその手には、奇妙な物がしっかりと握り締められている。
高見沢はそれが何なのかと目を凝らして確認してみると、それは丁度口の中へ入る大きさの……チェンソーのような物。
高見沢はそれを目の当たりにして……血の気が引いた。なぜならマークの魂胆が読めたからだ。
まことに不幸なことに、その予感は当たってしまう。そう、マークは親不知を輪切りするように、躊躇なく切れ目を入れ始めたのだ。
小型チェンソ−が口の中でガ−ガーと唸りを立てている。高見沢は今にも卒倒しそう。
こんなクレージーな処置の後、マークは少し手を止めて、自分の計画を説明し始める。
それによると、まず最初に、親不知の円周囲にワッパの切れ目、つまり溝を作る。その次に、そこへしっかりと糸を巻き付ける。そしてその糸を思い切り引っ張って……、悪魔の親不知を引っこ抜く。
これこそがアメリカ男が目論んだ抜歯。そしてマークはまことに自信たっぷりの御様子。
だがこのアイデアは、高見沢が予感した最悪のシナリオ。こんなマークの計画を再確認して、ショック死しそう。
それでもそんなワッパ掛け作業は、着々と進められて行った。
高見沢が下目を使い、口元の辺りをチェックしてみると、自分の口の中からタコ糸のようなものが、ぶらっと垂れ下がっている。そしてふらふらと揺れている。
そこから先へと糸を辿って行くと、まさに最先端、つまりその一点は、マークの毛むじゃらの指先で……、きゅっと摘ままれているのだ。
作品名:笑撃・これでもか物語 in 歯医者 作家名:鮎風 遊