笑撃・これでもか物語 in 歯医者
まず最初にマ−クが持って来たのは、馬にでも打つようなぶっとい麻酔注射器二本。それから「オ−プン・ユア・マウス、プリーズ!」といきなりの指示を飛ばされる。
高見沢はもう戦々恐々。
そのためか半分だけゆるりと口を開けると、マークは高見沢の唇を、有無も言わさずにくるりんとめくってしまった。そして高見沢は太い木綿針をブスッと歯茎にぶち込まれたのだ。
それはあっという間の出来事。高見沢には「止めてくれ!」と叫ぶ時間の余裕もなかった。
次にマークは、麻酔で痺れ切った高見沢のオチョボ口、そこにそのド太い親指と人差し指を無理矢理に侵入させてくる。そして、高見沢の愛着籠もる親不知を掴み、力まかせに左右に揺すりにかかってくるのだ。
日本の歯医者では「恐くて抜歯出来ません」と診断されてきたほどのシブトイ歯。その根はどこまでも深い。マークはその指先にますます力を集中させて、高見沢の顔が左右に大きく振幅するほど揺り動かしてくる。
激痛が何度も走るが、歯はびくともしない。
マークは汗まで流し、こうなればもうヤケクソ気味。だが少し疲れたのか、「ふー」と大きく一息吐いた。それからカーテンの向こうへと、さあっと消えて行ってしまったのだ。
作品名:笑撃・これでもか物語 in 歯医者 作家名:鮎風 遊