笑撃・これでもか物語 in 歯医者
第4章 日本の巻
高見沢一郎は今テクノ歯科の治療椅子に座って診察を待っている。
その待ち時間に、ついついアメリカとメキシコの歯医者さんで起こった『これでもか』の体験をボーと思い出した。そしてその間、目の前にあるモニタ−画面では、タイタニックのシネマ映像がずっと流れ続けていた。
高見沢がこんな時間を持て余し始めた時に、年の頃は三〇半ばの若い先生が現れ出てきた。
「まずはレントゲンを撮ってみましょう」
先生はそう言って、いきなり高見沢の頭に輪っぱのようなものをかぶせ、それを歯の位置にセットした。
高見沢にとって、こんな機械は初めて。「すごいですね」と感心すると、その若い先生は自慢気に説明を始めた。
「これ、最新設備なんですよ。この地区では私のところが初めてでしてね、全方位から歯のレントゲンが撮れるのですよ」
高見沢は「さすが日本、こんな歯医者さんまでもが、ハイテクだよなあ」と恐れ入った。そしてその次に、シャカシャカと手際よく数枚のレントゲンが撮られた。
その処理のためにか、先生は事務室の方へ一旦消えた。だが三、四分後に高見沢のところへ戻ってきて、その後、いきなりモニタ−の横にあるマウスをチャカチャカと慣れた手付きで動かした。
作品名:笑撃・これでもか物語 in 歯医者 作家名:鮎風 遊