笑撃・これでもか物語 in 歯医者
「トドス、ラクゥエンタ?」(全部で、いくら?)
高見沢は頃合いを見計らって勘定を聞いてみた。するとドクトルから信じられない言葉が返ってくる。
「いくらにしようか?」
高見沢はこれを聞いて呆れてしまった。とにかく歯医者さんに行って、今までこんなアホな質問をされたことがない。初めてだ。
「いくらにしようかって聞かれてもなあ、困るよなあ」
高見沢はそう呟き、あとは「う−ん」と呻きながら沈黙してしまう。しかしドクトルの方から、さらに意見が求められる。
「普通、世間では……、いくらくらいなの?」
「そんな事、突然聞かれても、歯医者の相場なんてわからないしなあ」
高見沢は一旦迷った。しかしハズミで、適当に口走ってしまう。
「 USドルで、丸く、一〇〇ドルでどうだろうか?」
ドクトルはこの高見沢の提案を聞いて、間髪入れずに大声で、「ノ−・プロブレマ!」(問題なし!)と一発合意。
それはまことに簡単な値決めだった。
高見沢がドクトルに一〇〇ドルを渡すと、堅い握手が求められてきた。そしてそれに応えながら、「そうだ、治療費を会社請求するから、レシ−トが要るよな」と思い出した。
「レシボ・ポルハボ−ル」(領収書を下さい)
高見沢はドクトルに要求した。ドクトルはこれにも気前良く、「ノ−・プロブレマ!」(問題なし!)
作品名:笑撃・これでもか物語 in 歯医者 作家名:鮎風 遊