笑撃・これでもか物語 in 歯医者
「ツ・ノビア・エス・ム−チョ・ボニ−タ!」(お前の恋人、めっちゃベッピンだよ!)
高見沢がそう持ち上げてやると、ドクトルは無邪気に喜んでる。
しかし、高見沢はこんなドクトルが羨ましく、「クッソー! この色気のあるお姉さんは、おまえの女かよ。女に自分の助手をやらせて……、チェッ、人生、ホント気楽にやってやがんの」と頭にきた。
高見沢がこんな事を思っている内に、いよいよ治療へと入って行く。ドクトルはすぐに研磨に取り掛かってきた。
しかし、高見沢は研磨をしてもらっていて、どうもおかしいなあと感じ出す。なんとなく口からきな臭い匂いが出てきているのだ。
「ウン・モ−メンティ−ト。ネセシト・アグア」(ちょっと待ってよ、水がいるんじゃない)
まずはそう訴えてみた。
そうなのだ。研磨には冷却水がいるというのが、歯医者さんの常識ではなかろうか。
ドクトルはハッと気付き、「わかった」というようなそぶりで水を歯にかけ出した。
水をかけては研磨……、研磨しては水をかけるという具合にだ。
「おいおいおい、研磨した後に急に水をかけたら、歯が冷却割れするじゃん」
高見沢はそう思いながら我慢していた。しかし、その内にどうも口の中で、時々火花が飛んでいるようだ。
「もう止めてくれ!」
高見沢はとにかくそう叫びたかった。
作品名:笑撃・これでもか物語 in 歯医者 作家名:鮎風 遊