笑撃・これでもか物語 in 歯医者
しかし麻酔が徐々に抜け、痛さが増してきている。思い切って「仕事に行くから薬を下さい」と要望する。するとオバチャンからは、あっさりと冷たい返事が。「薬はないわ」と。
そしてとどのつまりに、オバチャンは究極の指示を飛ばしてくれた。「自分の力で直しなさい」と。
犬でもあるまいし、高見沢はこれには頭にきた。
「もうこんな歯医者には、二度と来るものか」
高見沢はそう捨てゼルフをモグモグと吐きながら、マークのデンティストを後にしたのだった。
そんな親不知の抜歯治療から一週間が経った。
高見沢はオバチャンの指導の通り日々のリハビリを頑張り、もう四センチの丸棒が簡単にくわえられるところまで回復した。
確かに肝をつぶすほどの荒治療だった。しかし、信じられないことだが、治り方は薬なしでも意外にも順調。
日本では何年も手がつけられなかった親不知。それが一日の通院で取り去られ、スカッとした。そして高見沢は今、デンティスト・マ−クと歯科助手のオバチャンに感謝の念さえ覚えている。
作品名:笑撃・これでもか物語 in 歯医者 作家名:鮎風 遊