笑撃・これでもか物語 in 歯医者
高見沢がこんな疑いを掛けている時に、オバチャンは大きな声を突然張り上げる。
「イチロー、ユー、マスト…、トゥライット!」
こう命令されて、五ミリも開かない高見沢の可愛いオチョボ口に、直径三センチの丸棒がねじ込まれてくるのだ。
高見沢は余す力を振り絞って、重量級のオバチャンに抵抗を試みた。しかしその抵抗は、オバチャンに対しての敗戦国・日本人の反抗と取られたようだ。
「指導に従わなければ、もう許しません」
オバチャンはそう言い切って、丸棒を高見沢の口の中へと無理矢理に突っ込んでくる。
高見沢は涙ながらにやっとくわえ込んだ。するとオバチャンは……大感激。高見沢はオバチャンからお褒めのお言葉を頂くのだ。
「グッジョブ!」
歯科助手のオバチャンは「それじゃ一時間毎に、この訓練をやりなさい」と強く仰る。高見沢はもう二度と反抗はしませんという忠誠の態度をアピ−ルし、素直に「イエス・マム」と答えた。そしてやっとのことで、高見沢は解放されたのだ。
最後にオバチャンは、自分の息子を見るような慈愛の目をして仰られる。「さっ、イチロー、今から仕事に行きなさい」と。
高見沢は、「口は開かないし、しゃべれないし、痛いし、どうして仕事に行けるのかよ」と反発したかったが、ここはさらに服従度合いを上げて、「イエス・クィーン(はい、女王様)」と。
作品名:笑撃・これでもか物語 in 歯医者 作家名:鮎風 遊