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夢の途中3 (86-120)

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「ああ、良いね~♪(^。^)y-.。o○塩サバは大好物だよ♪僕はそれを貰います♪」
[じゃあ僕も塩サバ定食で♪(^^)v]
『はい、少し待ってね♪(^^♪』

カウンターの中で香織が背中を向けて調理に入った。
今朝と同じで、古畑が一緒で在る手前、「昨夜はごちそうさま(^^)v」とは言えなかった・・・

[部長、昨日の夜はどうされたんですか?]と、いきなり古畑に質問された・・
「(・_・;)・・・ああ、駅前の居酒屋で簡単にすましたよ^^;・・」
[それだったら電話して下さったら良かったのに・・・
部長がよろしければ女房に夕食ぐらい用意させたのに(/_;)・・・]
「ああ、いや、それこそ、新婚の奥さんに恨まれちゃうよ^^;・・ご存じのように、俺は一人で食うのに慣れてるからさ^^;・・」
『アラ、林さん昨日は駅前の居酒屋でお食事を?残念だったわ~、私も昨日は一人寂しく夕食頂いてましたのに(/_;)・・一声掛けて戴いたらご一緒できたのにねぇ~♪(^_-)-☆ね、古畑さん?』

(^^;・・・・・このママ、結構性格悪かったりして?(>_<)・・・)
優一は曖昧に肯くしか無かった・・・(ToT)/~~~



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章タイトル: 第17章 熊田の恋 2008年夏


この年は7月の北海道とは思えない程雨の多い年だった。
古畑達が心配した通り、7月1日の【鍬入れ式】は一日中雨だった。
藤野市長や助役、国交省の役人、地元の有力者等の大勢の来賓が、事前に用意されたテントの中で鍬入れ式を行った。
こう云う時のお決まりの文句、『雨降って、地固まりますと云いますように・・・』はその時の藤野市長の式辞の一節で在った。
が、鍬入れ式からの二週間、雨が降ったりやんだりして『雨降って地固まる・・』どころか、地盤は雨で緩む一方で在った。
元々砂礫が多い丘陵地の地質故、川沿いの堤である予定地には重機を使ってコンクリート製のパイルを何本も地中深く打ち込んで補強する必要がある。
しかし、雨水を含んでより軟弱になった地盤の上で100トンを超す重機を稼働させる訳には行かなかった。
夢島建設の工事日程は早くも少し遅れだした。

優一は元々当初から藤野市の現場と札幌支社を3:2のペースで行ったり来たりしていたが、現場の遅れが気になり、支社に居ても気が気ではなかった。
しかし、こんな時こそ無理は禁物で、改めて【安全作業】を肝に銘じなければ、そのしっぺ返しは取り返しのつかない事故に繋がる。
今まで嫌という程そんな経験をしてきた優一は、イラつく古畑を【喫茶・ラベンダーの香り】に誘った。
この日も朝から小雨がパラつき止む様子は無かったからだ。
優一は札幌支社に通う日も、毎朝香織の店で朝食を摂った。
支社での会議が長引いても、最終電車がある限り藤野に帰った。

「ま、こんな日は美味いコーヒーでも飲むに限るさ♪
ママ、古畑君に美味しいブレンドコーヒー淹れてやってよ♪
(^。^)y-.。o○ 」
『アラアラ、古畑さん、浮かない顔ね?』
[そりゃ、ママ、こう降られちゃ参っちゃうよ~!(ToT)/~~~]
「昔から言うよな、土方殺すにゃ刃物は要らぬ、雨の十日も降れば良いってね♪(^^)v」
[(*_*;部長~、そんな呑気なこと言わないで下さいよ~!(ToT)/~~~]
「ま、古畑、こんな時だからこそ焦るな。 今は道路の最も土台となる部分を作る時期だ。 こんな雨の中で無理をしても良い土台にはならないさ・・・例年ならこの時期北海道でこんな梅雨の様な気候に出くわすとは誰も予想しなかった。
今は辛抱の時さ・・」
優一は自分にも言い聞かせるように呟いた。

[・・・(*_*;はい、分かってはいる積りなんですが、つい・・・]
しょげた古畑の目の前に香り高い香織のコーヒーが置かれた。
『はい、古畑さん♪(^O^) コレ飲んで元気出して♪(^_-)-☆
林さんにはアメリカン♪( ^^) _U~~ 』
「ああ、良い香りだ♪(^^)v」
『本当にこの頃変ね・・・此処でこんな長雨って滅多にないモノ・・・熊田さんの処の【お花畑】も、長雨と日照不足で7月も中旬だと云うのに大幅に開花が遅れてるんですって・・花によっては先に咲いちゃうのも出て来るから、あの虹色のグラデーションが今年は見られないかも知れないってすごく心配してたもの・・・』

熊田は此処の常連の一人で、殆ど毎朝優一とは顔を合わせていたが、二週間以上経った今も親しく言葉を交わす事は無かった。
それどころか、【敵対心】すら感じる時も在った。
多分・・・・・・・
熊田は香織に気が在ると優一は感じていた。

熊田政夫は先祖代々藤野市の郊外で広大な農園を経営し、ジャガイモ・タマネギ、ホワイトアスパラの他に、農園の一部をラベンダーを中心にした【観光・お花畑】として無料で観光客に開放していた。
7月上旬から9月中旬まで、ポピー、百日草、カスミ草、カンパニュラ等の花で丘陵地に目にも鮮やかな虹色のグラデーションを描いて評判を呼んでいた。
その評判は年々大きくなり、他の農園も同じような【お花畑】を作り始めたので、藤野市の夏の重要な観光資源となって、日本全国から大勢の人を呼んだ。
熊田は率先して地元の為に他の農園を指導して廻ったのだ。
以前同じく常連の作山が【此処の顔役】と言って紹介したのも、そう云う側面であった。
熊田は十年前に長らく苦楽を共にした妻を亡くした。
【お花畑】の発案も最初はその妻だったと云う。

熊田は香織がこの店を引き継ぐ前の、前オーナー・北村昭雄・和子夫妻の頃からの馴染みだった。
熊田は妻の死を乗り越え、必死で4人の子供たちとこの農園を守ってきた。
子供たちは其々自分の家庭を持ち、今では長男夫婦と次女夫婦が熊田の手となり足となり農園を盛り上げるようになっていた。
苦労が報われ、ひと段落ついた時熊田は60歳になっていた。
そんな時、香織がこの町にやって来た。
詳しい事は分からなかったが、北村の妻・和子と古い知り合いだと聞いた。
半年ほど和子の店を手伝った香織は一旦この町から消えた。
そのあと熊田は和子から今の店を閉めてニュージーランドに移住する事になったと告げられる。
そして、店のその後は香織が新たに店の名前も替えて引き継ぐので宜しく頼むと託された。
北村夫婦も元々この地の人では無かった。
20年以上も前にこの藤野に親子4人で流れ着き、駅前で喫茶店を始めたのだ。
その時の店の名前は【紫陽花】だった。
熊田に拒絶する理由は無かった。
香織が店を手伝うようになって、溌剌(はつらつ)と立ち振舞う彼女の姿を見る事が毎日の楽しみになっていたし、その姿が何処となく亡き妻に重なった。
熊田と香織は歳で一回り違っていたが、和子から香織は前夫と死別して独身だと聞いていたので、【後妻】の二文字が
思わず頭の中を駆け巡るようになった。
新しい店の名前が【喫茶・ラベンダーの香り】と云うのも熊田には嬉しかった。