夢の途中3 (86-120)
『(#^.^#)おはようございます♪あ、沼田さん、相席お願いね♪』
[ああ、どうぞどうぞ^_^ ]
沼田と呼ばれた白髪頭の紳士は昨夜優一と香織が夕食を摂った窓際のテーブル席で一人新聞を広げ、半分に切られたバタートーストを齧っている。
「失礼します。」
[ああ、どうぞ。お見かけしないお顔だが、お仕事で?]
「はい、今度川沿いに出来るバイパス道路の工事をやらせていただく夢島建設の林と申します。」
{おお、あのバイパス工事をやる夢島建設の人け?}
首にタオルを巻いてカウンター席に坐る別の男が話しの中に割って入った。
「はい、暫くご迷惑を掛けると思いますが宜しくお願いします<(_ _)>」
{あの先の雑木林は、熊さん、アンタとこの地所でなかったかい?}
男は自分の左隣に座る大柄でイガグリ頭の男の顔を見た。
[ああ、そうだ・・・市役所の奴らにうまく丸めこまれて、二束三文だ・・]
イガグリ頭の男は苦虫を噛み潰したように顔を歪め、コーヒーカップを口に運んだ。
『は~い、おまたせ♪』
そう言って香織が銀盆にプレーンオムレツ、フランクフルトソーセージ、サラダののった皿と、アメリカンコーヒーを淹れたカップを運んで来た。
『皆さんに紹介しておくわね♪こちら夢島建設の林さん。
バイパス工事で今日から11月までソコの角を曲がったところの【常盤ホテル】にお泊りなの。皆さん、宜しくね♪(^_-)-☆』
そう言って、優一を常連客に紹介した。
「初めまして、林です。私も暫くの間朝食をこちらで頂く事になりました。どうぞ宜しくお願いします<(_ _)>」
優一はその場を立ち上がり、改めて一同に頭を下げた。
[いや、こちらこそ♪(^。^)y-.。o○私は沼田と云います。
駅前で旅行社やってますがね、今は息子に皆任せて、私は気楽な隠居ですわ♪]
[沼田さんはよォ、今の仕事は競馬と株だ、な?がははは♪(=^・^=) 俺はよォ、魚の仲買人で作山てのよォ。ここいらのホテルに魚を納入してるのよ♪ あ、そいでこの人はここいらの【顔役】で熊田さんて言ってよォ、この顔に似合わず【観光・お花畑園の園長さん】よォ♪(=^・^=)]
[馬鹿、余計な事言うんじゃねぇ!(--〆) ママ、そいじゃァ、ごちそうさん]
熊田は作山の頭を軽く叩き、ぶっきらぼうに席を立つと、優一とは目を合わせず出て行った。
その後も作山は意に介せず、四人程居た常連を一人づつ紹介してくれた。
何れも毎朝此処に朝食を取りに来ている常連で在り、【余所者(よそもの)】は優一だけだった。
【余所者】に対する反応も様々で、作山の様に興味津津なもの、熊田の様にあからさまに敵愾心を見せるもの、沼田のように無関心なものと三者三様に別れた。
[林さんはナニかィ、そのォ~、単身赴任なんだろ?それじゃァ、おっかぁのナニが恋しいんじゃないのォ~?(=^・^=)ここいらはよォ~、女が居るような気が効いた店は全然無くてよォ、まあ、旭川まで行かねえとなァ(/_;)・・・あ!そんときゃよォ、俺に一言言ってくれりゃァ、良いトコ紹介すっからよォ~!(#^.^#)もォ、胸がでかくて尻もプリンプリンでさァ、良い子が居るんだその店♪なんなら今夜一緒に行くか?良い子紹介すっからよォ~♪(^v^)]
『作ちゃん、また良からぬ仲間に林さんを引きずり込んじゃだめでしょ?(-_-)/~~~ピシー!ピシー! 奥さんに言いつけちゃおうかなァ・・・(-。-)y 』
[あああ、いや、そのォ~、俺はただこの旦那が寂しい想いしてんじゃないかと思ってよォ~!(^_^;)・・・・人助け・・そう!人助けのつもりで言ったんだからさァ!(ToT)/~~~
おっと、もうこんな時間かよ!これ以上油売ってると、カカアにどやされるんで^^;・・・・旦那、気が向いたら声掛けてくんな♪(^v^)ママ、ゴチになりまァ~~す♪]
『いってらっしゃ~~い♪(^.^)/~~~』
常連客は皆、こうして香織に送りだされ、各々の職場に散って行った。
【鍬入れ式】は2日後の7月1日だった。
下準備の工事は既に10日前から始まっており、地元の土木業者により、現場事務所設営も終わっていた。
そして当座の工事基材・重機も揃いつつあった。
優一は香織の店を出て一旦常盤ホテルに帰り、5日前に古畑が札幌支店から持ち込んだ小型のセダン・白いブルーバードに乗って現場事務所に向かった。
毎朝八時半から現場事務所では朝礼が行われる。
優一らゼネコン、地元の下請けやその孫請け会社も一緒に行った。
土木の現場で一旦事故が起きれば、死者さえ出る重大事故も珍しく無い。
毎朝朝礼で申し送る具体的な連絡事項は少ない。
が、一般には大げさに映る大声で行う点呼・指先確認も、
始業前に気合いと適度な緊張を共有するために行う大事な
儀式であった。
優一は現場事務所の敷地内に車を停めると、敷地内の資材や重機置き場の配置を確かめながらプレハブ造りの事務所に入った。
『あ、部長、おはようございます!<(_ _)>』
「あ、古畑君、おはよう。現場の配置も相変わらずちゃんと整理出来てるな♪(*^_^*)」
『あ、もう観ていらしたんですか?(#^.^#) なにしろ【整理・整頓】は【安全第一・林組】の基本ですから(^^)v 』
「そうだ、先ずは第一期の11月末まで【無事故】で行きたいものだ。一日の鍬入れ式にあたって特に問題は無いかね?」
『はい、準備万端で問題なし、と言いたいところですが・・・
二日後の天気予報が思わしく無くて・・・・』
「そのようだな・・・例年なら本州と違って梅雨など関係なしの北海道なんだが・・・」
二人が嘆くように、ここ数年、世界的な異常気象もあって、梅雨とは無縁であった北海道にも、梅雨前線に似た前線が停滞することがあり、長雨や低温が続く事があった。
秋には滅多に来ない台風が北海道を横断する事もあった。
「まあ、泣く子とお天気には敵わないさ。雨天も予想して大きめのテントを用意しておこう(^。^)y-.。o○ 」
『はい、分かりました(^^)/』
午後、お昼時をわざとずらして香織の店に昼食を摂りに古畑と出掛けた。
別に古畑の絶賛するカレーが売り切れでもそれはそれで良かった。
昨夜のサーモンのバター焼きにしても、香織の作る食事は美味いからだ。
2時近くになって一旦車を常盤ホテルの駐車場に停め、
香織の店に入ると案の定、他に客は無かった。
カランカラン・・
『アラ、いらっしゃい♪(#^.^#)あ、古畑さんも♪多分お昼にお二人が来てくれるんじゃないかと思ってたの♪(^_-)-☆』
「ああ、お昼時じゃ常連さんでいっぱいかと思ってね♪
昼時をわざとズラしてやって来たんだよ♪(^。^)y-.。o○」
[だからママ、もう腹、ペコペコだよォ~~!(@_@;)]
『あらまァ、大変、古畑さんを餓死させたら、新婚の奥様に恨まれちゃうわ(^^♪ ねえ、何になさる?良かったら今日のお薦め【塩サバ定食】は如何?先週作山さんから良い真鯖を仕入れたから土曜日から塩して仕込んでたの♪皆さん美味しいって言って下さったわよ♪(^_-)-☆』
作品名:夢の途中3 (86-120) 作家名:ef (エフ)