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ef (エフ)
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夢の途中3 (86-120)

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するとこの支店長、【ぶぶ漬け】が『お茶漬け』であることは知っていたし、京都の美味い漬物やお茶を連想し、気軽に
『はい、頂きます♪』と返事してしまった。
京都で『ぶぶ漬けでも出しまひょか?』と云うのは、その言葉に相手が恐縮して、「いやいや、それには及びません。ぼちぼちお暇しますさかい」と返される事を予測しての【掛け言葉】なのだ。
まさか『頂きます♪』と返されるとは思っても居なかった女将ではあったが、自分から言い出した立場上平静を装い、支店長を座敷に上げ、急ごしらえではあったが、お茶漬けどころか相当な料理で歓待した。
この支店長、大変満足してこの老舗を後にしたのだが、
その後件の女将は・・「〇〇銀行の支店長さんはえらい図々しいお人で、初対面の家に上がって昼間っから呑むは食べるは・・もう、常識のないお人でびっくりしたわ」と同業者の老舗の女将さん連中に貶しまくったとか・・・・
皆さん、【京のぶぶ漬け】にはご注意を<(_ _)>


香織は物干し台から下りると、急いでシャワールームに飛び込んだ。
何か弾んだ気持になった。
顔見知りとは言え、先月知り合ったばかりの男を自分の店に食事に誘うとは自分でも意外だった。
香織は例え冬でも湯船に浸かる事は無く、常にシャワーですませた。
その代わり毎朝毎晩、日中でも1,2度シャワーを遣う。
バスルームから上がると、上半身が写る洗面台の前に立ち、少量のタルカムパウダーを手に取ると、脇や首筋に軽くはたく。
そして鏡の前に顔を近づけ、両手で顔を挟み、持ちあげ、表情を作る。
グッと口角を上げると、両方の頬にエクボが出来た。
首の下に香織の白い乳房が続く・・・
香織は自分の両手を乳房に添えて持ちあげた・・・
子供を産まなかった香織の乳房はいまだに張りが在り、美しい谷間を作っていた。
ただ・・・・・
左の乳房の下側に大きな手術の跡が在った。

ドライヤーで髪を乾かしながら今夜の献立を考えた。
自分独りなら作り置きした常備菜で何時も簡単にすますのだが、『幾ら何も無いけど』と宣言しても、まさか「お茶漬け」を出す訳にはいかない。
店の冷蔵庫に常連の客から貰った鮭の半身が冷凍してあったのを思い出す。
(・・・!(^^)!そうだわ、鮭のバター焼きにしようかな♪付け合わせの野菜はブロッコリーを茹でて♪)
香織は素早く顔に薄化粧をして、薄紫で小さな紫陽花の花弁をデザインしたワンピースを頭から被った。
店の厨房に降りた時、優一と約束した時間まであと5分しか無かった。

その頃、優一もシャワーを遣い、洗面台の前でシェービングクリームを顔に塗り髭を剃っていた。
今日初めて遣った部屋のシャワーの出は悪く、中々湯にならず、しかも暫く赤錆びた水が出た・・・
この事は後であの【土方家4代目当主】に是非とも言っておかねばならなかったが、シャワーが正常になるまで時間が掛ったので、「喫茶・ラベンダー」のママとの約束の時間まであと10分しかなかった。
(・・(--〆)あの男の長話に掴まったら堪らん・・・・)

安全カミソリで髭をアタリながら、優一は自分の顔をまじまじと見ていた。
(54歳、流石に老けたな・・(・_・;)・・・)と我ながら思った。
5年前離婚してから以降、再婚を考えた事はおろか、女性の肌に触れることさえなかった・・・
生理的に欲望を感じる事はあっても、長い単身生活の経験のお陰で?身の回りの事は一通り総て自分で出来たし、今更女性を愛する事が面倒だと感じている部分も少なからず
あったことも事実だ。
娘の由美に早く再婚しろとこの前も言われたが、これは相手の要ることであり、ましてや、本人にその意思が無い事にはどうしようもなかった。
(・・・ま、仕事を定年退職したら、四国で【お遍路さん】でもするか(^。^)y-.。o○・・)
精々そんなことしか考えていなかった優一であった。
しかし、図らずも先ほど花田香織に夕食をと声を掛けられ、何か心が高揚している自分が意外に思えた。
洗面台の大鏡の前で自分の身体を正面から、斜めから映して見た。
流石に54歳ともなれば20、30代の若者の様に引き締まった身体である筈も無く、自己管理で節制しているとは言え、下腹部に余分な脂肪が溜まってぽっこり出ていた。
『メタボ』と言われる程のモノではないにせよ、これから女性の処に行くと言うことで、何時になく優一は意識していた。
優一は先ほど荷ほどきして、部屋の作り付けのクローゼットに吊るした白で半袖のポロシャツに首を通し、ベージュ色のコットンパンツを履いた。
幾ら急な事とは言え、招かれたのだから手ぶらと云う訳にもいかない・・と優一は思った。
幸い、大阪駅で生八っ橋の「おたべ」を3箱買って来たのでそれを持参する事にした。


優一は花田香織に指定された時間丁度に部屋を出た。
土方支配人には「チョット出掛けて来ます」とだけ言った。
妙な詮索をされるのが嫌だったからだ。
香織の店の前に着くと、相変わらず入口のドアのガラスにはカーテンが掛っていたが、その隙間から光が漏れ、中に人の居る事がうかがい知れた。
優一はドアを軽くノックする・・
暫くして、中から靴音と共に女の声がした。

『いらっしゃい♪(*^_^*)さあ、お入りになって♪』
「じゃあ、遠慮なく^^;」
『あ、このテーブルにお座りになって♪』
香織はカウンターと通路を隔てた窓際のテーブルを指差した。
店の中は一か月前に訪れた時と変わりなく、やや照明を落とした感じで、磨きこまれた飴色のカウンターに、同じ色のテーブルと椅子・・・
カウンターの中の厨房では香織がきびきびと動き回っている・・
カウンター横のポットが湧いて、しゅ~~~っと勢いよく湯気を吐き出していた。
『あ、暑くない?一応冷房はかけてるけど・・・今日は一応休みだし、窓を開ける訳にはいかないものね^^;・・』
「ああ、大丈夫ですよ」
実は少し寒い位に冷房が効いていたのだが、熱くて狭い厨房の中で立ち振舞う香織の事を想って言わなかった。
『今夜は【鮭のムニエル】にしたんだけど、林さんお好きかしら?』
「ああ、鮭の・・それは良い♪好物ですよ♪」
『あら、ホント?良かったァ~♪私、鮭の皮をパリッと焼いたのが好きなの♪(#^.^#)』
「そうそう、そこにバターを溶かしこんで醤油をチョコット入れて♪(^。^)y-.」
『うふふ♪その食べ方、私も大好きよ♪(^^)v』
「あ、忘れるとこだった^^;・・・急だったモノで、こんなモノしかないけど、ここに来る前に関西に寄ったから買って来たんですよ^^;・・別に誰にあげようと決めていた訳じゃなかったんで・・・こんなモノで申し訳ないけど・・」
『アラ?【おたべちゃん】?京都に行ってらしたの?(^_-)-☆』
京都と聞いて香織の目が輝いた。
「いや、京都は生まれたトコだけど、今回は行ってない。
今朝、新大阪の駅で買ったんだよ^^;・・近頃は何処でも買えるからね・・」
『へぇ、京都のご出身なんだァ♪
私、京都好きですよ♪何度行っても飽きないわァ♪(^^♪で、まだご実家にはご両親もご健在で?』