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庭自慢とビスマルク

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 余りにも無邪気な笑みで毒気を抜かれてしまったが、キャロルとグレゴリオは数本の映画で共演した中で、親交が深い。映画雑誌に二人並んだ写真が掲載される事は数度あったし、彼女が今年結婚するまで、何度かゴシップ記事の餌食にもなっている。すっかり忘れていた。何しイエローペーパーの記者たちは、紙面の余白に困るたびに、役者たちの恋愛譚か、ジーン・ハーロウの死に関する真相を鳴り物入りで書き立てる。

 引っ越してすぐの頃はほぼ毎日言い争いをしていたが、半年で諦めた。そもそも最初から、彼女の分が圧倒的に悪すぎたのだ。敬虔なカトリック教徒が離婚という言葉を口にしない事、何よりもシチリア出身の両親を見て育った娘が夫に本心から逆らえないということを、全く同じ境遇の地で育ったグレゴリオが知らないわけがない。情事に関する全ての痕跡を消して家のドアを潜るだけ、他の男たちよりもマシだと思わねばならない。施された躾と経験が、聖母の顔で諭す。一言怒鳴るたびに、後悔するよう促す。

 必死の忍耐の結果、神は素晴らしいものをグリアに授けた。それが途方に暮れるための無知と、広い庭だった。これからもより一層慈悲に縋るようにと、十字架の真上で手を差し伸べる。慈愛と、天の恵みが得られるよう、彼女は去年の冬から、日曜日の礼拝を再開している。ユダヤ教徒ばかりのハリウッドにおいて教会が遠いのは残念だったが、元来グリアはこの地に友人などいない。パーティーにすら殆ど出席しない。

 

 かまびすしい西海岸で唯一彼女の気にいったものがあるとすれば、それはこの温暖な気候だけであった。痺れるような寒さと、じとついた暑さに苛まれるニューヨークと違い、カリフォルニアは年中暖かく、湿気も少ない。寝不足の気だるさを振り払う爽やかな秋の予兆に、ダリアの花は更なる彩を加える。昨晩の鬱屈も軽く吹き飛ばす鮮やかな色は、雲ひとつない空と繁る芝生の間で、伸びやかに揺れていた。