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庭自慢とビスマルク

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 夫の姿は想像できたが、自分が同じ格好で悩んでいる姿は思い浮かべることができない。きちんと、見合う服があっただろうか、と考える。一緒に並んだとき、グレゴリオが恥ずかしい思いをしないような。以前勝手もらったキツネの毛皮はどうだろうか。『白が一番高貴な感じがするだろう?』そう、あのショールは確かに豪華だった。眼を傷めるほど白さは輝き、毛並みは柔らかかった。余りにも豪華で高貴で素晴らしかったので、コーディネートの仕方が分からず、茶色に染め直したいと口にしたとき見た夫の悲しげな表情を思い出した途端、何が何でもあのショールを身に着けなければならないという義務感に駆られた。いつでもそう思いながら諦めるのだが、今日こそは。クローゼットの奥で丸い箱に収められているそれを引っ張り出して。結局一度として身に着けてはおらず、最近は蓋すらあけてもいないから、虫に食われていないか心配だった。数ヶ月前にナフタリンを交換しておいたからまず安心だろうが、薬剤の強烈なにおいについては、諦めざるを得ない。


「何かありませんか」
 いつの間にか、赤毛の少女が切羽詰った顔でこちらを見つめている。首を傾げると、目の前の豊満な頬はその髪に負けないほど鮮やかな色で染まった。
「あの、友達に言っちゃったんです。グレッグのサインを貰ってくるって」
 隣で俯いた彼女の友人は、まだしつこく髪を弄っていた。
「撮影所に行ったら、会えるでしょうか」
「ええ、それは……けれど関係者じゃない人は通してもらえないし、撮影所は広いから、探すのが大変よ」
 1度しか行った事のないセットの風景を思い浮かべながら、グリアは慌てて首を振った。
「そうね、サインはないけれど……」
「何でもいいんです」
 自分のローファーに視線をやった茶色い髪の少女は、弁解するような口調で言った。
「洗濯ばさみでも、何でも」
「洗濯ばさみ?」
「グレッグの服を洗った」
 最後の辺りは、押し付けられて潰れた気管のおかげで不明瞭だったが、確かに聞こえた。赤毛の少女も、同意して何度も首を振る。
「お願いです」
「ええ、そりゃあ」
 まるで少女たちの言葉が作り出したかのように、エプロンのポケットに入っていたブリキの洗濯ばさみは今更存在感を増す。膝を動かせばぶつかり合って音を立てるそれを引っ張り出し、差し出す。
「こんなのしかないけれど」