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あの頃・・・それから

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 桂子「そうしなさい。美味しいモノ作るから、ご両親には後で主人から電話   してもらうから。(幸一に向かって)ねえ、そうして?」
 幸一「ああそうしよう」
 菜々「決まりでしょ?」
   巧一、親子の会話に戸惑っている
 祐介「ウチの女どもは一度決めたら後へ引かないから、諦めて従うことだ    な?」
 幸一「そうそう」
   祐介、出て行こうとする。
 巧一「あれ!先輩どこへ行くんですか?」
 祐介「ちょっと用があって出かけるんだよ」
   菜々、巧一の手を引っ張っていこうとする
 菜々「出かける人はほっときましょう?」
 桂子「そうそう」
 祐介「そうそう」
   そう言うと出て行く
 菜々「そうそう。行きましょう?」
   巧一、何も言えず菜々に従って中へ入る

34・同・住まい

   店から桂子の声
 桂子「(声のみ)冷蔵庫にケーキがあるえわよ、後で紅茶を持っていくわ    ね」
 菜々「はーい!」

35・巧一の部屋
  
   ベッドの上、菜々と書かれた表紙のアルバムが一冊、二冊、三冊と
   時間の経過のように重ねられていく

36・同=一ヵ月後=
  
   菜々、ベッドに座りアルバムを観ている
   巧一、お揃いのマグカップを持って入って来る
 菜々「うわー嬉しい。この間買ったマグね?早速ね?」
 巧一「ああ」
 菜々「(マグを受け取り脇のテーブルに置く)やっぱこれにして良かったわ」
 巧一「そうかい?それより写真はどうなんだよ」
 菜々「もちろん気に入ったわ。でも良く撮ったわねー」
 巧一「(菜々の横に座る)全部だよ」
 菜々「そうよねー。これ全部だもんねー?」
 巧一「そうさ、全部だよ」
 菜々「そうぜーんぶ、巧一が撮ったのよ」
 巧一「菜々だけを」
 菜々「幸せだわ、あたしって」
   そう言うとマグカップを取ろうと手を伸ばす、菜々を突然の激痛が襲う
 菜々「アー!いたー!」
   そう言うとうずくまる、菜々
 巧一「どうした、菜々。どこが痛いんだ?」
 菜々「(頭を押さえる)頭・・・いたたたたー巧一・・・・助けて!」
   おろおろする、巧一
 巧一「どうすればいい?」
   菜々、言葉も出ないほどのたうちまわる
 巧一「どうしたらいいんだ?」
 巧一、菜々を抱きかかえて横にする。
 巧一「ちょっと待ってて?電話してくるから、いいね?菜々いいね?」
  
37・巧一の家の前=数分後=
  
   建物の壁や窓に救急車の赤い点滅ランプが反射している
   建物からストレッチャーに乗せられた菜々運ばれてくる
   巧一と菜々の両親が続いて出てくる
   巧一、憔悴しきっている。
 幸一「桂子、菜々と一緒に行ってやれ。俺と巧一君は俺の車で後を付いて行   くから」
 桂子「そうね。そうするわ」
   救急車、スタートする
   そこへ、巧一の両親亮と町子が帰って来る
   巧一を呼び止める、町子
 町子「巧一!どうしたの?(幸一に気づき、お辞儀をする)
   ああ、いつも巧一がお世話になって・・」
 幸一「初めまして」
 亮 「初めまして、何かあったんですか?」
 幸一「ええ、菜々が発作を起こして今、病院に運んだところです
   大変ご迷惑をおかけしまして、申し訳ございません」
 町子「菜々ちゃんが?(巧一を見て)あなた一緒にいたの?」
   巧一、涙ぐんでいて答えられない
   亮も巧一に迫る
 亮 「巧一、何とか言いなさい」
   幸一、亮と町子をなだめる
 幸一「いいやお父さんお母さん。巧一君は何も悪くありませんからご心配な   くむしろ、良く対処してくれました」
 町子「そうですか?」
 幸一「それより、病院に向かいます。巧一君をお借りします」
 亮 「はい!わかりました。では行ってください」
 幸一「さあ!巧一君行こう!」 
   巧一、うなずいて幸一の後から車に乗り込む
   亮と町子、見送る

38・病院

   病室の明かりが浮かぶ病院の夜景

39・同・ロビー

   憔悴しきってベンチでうなだれている、巧一
   その巧一を挟むように幸一と桂子が座っている
 幸一「(巧一の肩を叩きながら)そんなに落ち込まなくていいんだよ
   巧一君のせいではないんだから」
 桂子「そうよ、発作なんて、いつ起きるか予想なんて誰にもつかないのよ」
   そこへ、祐介と小夜がやってくる
   幸一、立ち上がる
 幸一「おお祐介、小夜さんまで、今、処置中だよ。巧一君の素早い対応のお   陰で素早くにここへ運べたよ」
 祐介「そうか(巧一に寄っていき)ありがとうな?」
 巧一「お・おれ・おれ・・おれは何にもできなかったんです。菜々が苦しん   でいるのに・・・何にも・・ただおろおろとしているだけで・・・」
   小夜、巧一の前にしゃがみこんで手をつかむ
 小夜「誰だってそうよ。ね?(裕介を見て)そんなに自分を責めちゃいけな   いわ」
 幸一「そうだよ、菜々に笑われるぞ?本当に苦しいのは菜々なんだから」
  
40・同=数十分後=

   全員、左右のベンチに分かれ座っている
   ドアが開かれ、器具を着けられ眠っている菜々を女性の看護士二人が
   運びだして来る
   全員立ち上がる
   少し後ろから、主治医の山村が出てくる
   桂子と幸一が近づく
 桂子・幸一「先生」
   山村、マスクを脱ぎながら言う
 山村「まあ、落ち着きましたから」
 桂子「有り難うございます」
 山村「ただ、これからは発作の間隔は短くなるでしょうな」
 幸一「そうですかー」
 山村「そうだ、その辺のことを相談しましょう。ご両親はちょっと来てくだ   さい私の部屋で話しましょう」
   さっさと歩く山村に幸一と桂子ついていく

41・病室
  
   午前0時過ぎを指す時計
   菜々、眠っている
   祐介と小夜が菜々の右脇に並んでいる
   巧一は離れて座っている
   病室には機械の音だけが響く
   そこへ、幸一と桂子は行って来る
 幸一「巧一君ちょっと(手招きする)」 

42・廊下 

   幸一と巧一、ベンチに腰掛ける
 巧一「なんでしょうか?」
 幸一「ああ、今日は本当に世話をかけたなあ、まあ、ついでといっちゃなん   なんだがもっと世話をかけようと思っているんだよ」
 巧一「はい、僕にできることなら」
 幸一「では、話そう。最近の菜々は巧一君と出会えてとても明るくなったん   だよ 父親の私から言うのも変だけど、菜々は巧一君のことが大好きら   しいんだよ家族みんなにそう話しているんだよ、あの子は」
 巧一「そうですか」
 幸一「巧一君はどうなんだ?」
 巧一「もちろん好きです」
 幸一「いつも一緒にいたいと思っているかい?」
 巧一「はい!思ってます」
 幸一「そうかそれなら頼みやすいよ。実はこれから話すことは菜々の人生    とって、とても大事なことだから、しっかり聞いて欲しい。いいね?」
 巧一「はい」
   巧一、居住まいを正し幸一を見る
   それを見て、幸一うなずく
 幸一「実は、菜々は・・・あと三ヶ月の命なんだよ」
作品名:あの頃・・・それから 作家名:Riki 相馬