【第七回】感想肌の君
「あれ? 中島お前どこいくんよ?」
下校途中自宅とは反対方向に足を向けた中島に南が声を掛けた
「京助ン家」
中島が隣にいた京助の肩を軽く叩きながら言う
「何しに」
坂田と南がハモった
「愛を語りに」
中島が京助を抱きしめると京助も中島を抱きしめ返す
「まあ!! 奥さん! 見てくださいませ!! こんな公衆の面前で破廉恥な!!」
南が【きゃぁ】と声を上げて顔を両手で覆いながら言う
「本当! 何を考えておりますの!?」
坂田が片手を口元に当てて【いやーねー】のポーズをする
「ってか公衆いねぇし」
中島が突っ込む
「まぁ…うんそうなんだけどね」
さすがは田舎の正月町人通りが滅多に無い
「貸してたCD取りに行くんだ」
京助との抱擁をといて中島が鞄を肩に掛けなおす
「明日持ってきてもらえばいいじゃん」
坂田が言う
「…忘れる可能性はいくつですか京助君」
中島が手でマイクの形を作って京助に向けた
「100%は軽く越えると思われます」
京助が胸を張って言う
「100%軽いのか~…」
南が苦笑いした
「もうかれこれ10日は出張してるんでそろそろな」
雪の溶けてきた道を歩きながら中島が京助を見る
「ハイハイ; お返しいたしますヨ;」
京助がヘッと口の端を上げる
「…てか…なんでお前等もコッチきてるんよ」
違和感無く一緒に並んで歩いている坂田と南に京助が聞く
「なんとなく」
南が言うと坂田が頷いた
緊那羅に入れてもらった肥料を丁寧に根元に埋め込んだヒマ子さんが軽く伸びをした
「そろそろ京様がご帰宅なされますわね」
ガタッ
「…?」
京助を出迎えようと気合を入れて鉢ごと体を戸に向けたヒマ子さんが窓の方からの物音に振り向いた
「どなたですか? ゼン様? ゴ様?」
ヒマ子さんが物音のしたほうに向ってゼンゴの名前を呼んだが返事は無く
「風でしょうか…」
再び戸口に向けて鉢ごと動こうとヒマ子さんが気合を入れる
「開かないんだけど」
聞き覚えの無い声がしてヒマ子さんが振り返った
作品名:【第七回】感想肌の君 作家名:島原あゆむ