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プリズン ドライビング・スクール

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炎暑編② ボボ・ゴンザレス登場

そうこうしているうちに、いよいよ学科講習の始まりだ。先生は、なんでも新宿警察(お隣葛飾区の『にいじゅく』けいさつ)の組織犯罪対策課、通称『組対』いわゆるマル暴担当のデカ長を定年退職した爺さんだ。

さすが、人相、目配りが尋常じゃない。ヤクザよりヤクザらしい風格があるな。噂によれば、組のガサ入れの時に、誤って若頭を撃ち殺したらしい。

誤射?昭和40年度全国警察射撃大会優勝で、オリンピック候補の腕前だったてのに?

第1時限は、運転マナーだ。

正しい挨拶を?ん?挨拶って何。「教習所内で指導教官とすれ違ったら、必ず仁義を切れよな。」おいおい。

「生徒はまず、こうして腰を割ってだな、右手のひらを上に向け三白眼で口上を述べるんだ。」

見本としてPanasonicの3D 100インチTVで映画を見る。エコポイントかなりだね。

松竹映画のオープニングだ。
♪ 俺がいたんじゃ お嫁にゆけぬ わかっちゃいるんだ 妹よ~♪
ん?なんか聞き慣れた歌だね。
「おひけぇなすって、手前生国は関東です。関東、関東と申しましても広うござんす。東京葛飾柴又は、帝釈天で産湯を遣い、姓は車、名は寅次郎、人呼んで、フー天の寅と発します。」
なんだ、なんだ男はつらいよじゃないか。そうだよお隣は葛飾区じゃないか。(ローカルネタだ)

どうしてなのか、極道のしきたりが延々と続く。俺は耐え切れずに言った。「先生、なんでこんなことばかりやるんですか。道路交通法とぜんぜん関係ないじゃないですか。」

「あ”ぁ?なんだ?そこの学生。俺様に質問するなんざぁ10年早ぇぞ。お前はアホか。教習所内でも、路上でも事故はいつ起こるか分かんねぇんだ。いいか、特に同業にはきちんとケジメを、トウシロには先手必勝だ!」 全く訳の分からない説明だ。

さて、次は実技教習第1時限。

いよいよAMGに乗るのだ。ちょっとうれしい。俺の指導教官は身長が2mはあろうかという黒人の大男、ハワイ生まれのボボ・ゴンザレス兄ぃだ。よし子伯母が気を利かせてくれて、俺にはチンピラはあてがわなかったのだ。ま、左ハンドルだし、憧れのハワイ航路ではるばる日本にやってきた、ゴンザレスが俺には適役だってね。

「ハ~イ フェニチャン ウエルカム、ビデオはSONYのハンディカム。このAMGはネ、ウィンドウは10mmの防弾ガラス使ってるシ、ドアの装甲は戦車並みにぶ厚いアルよ。チャカくらいじゃなんともないネ。さすが、ゾウに踏まれたらダメアル。」だれが、ゾウに乗って教習車を拳銃で撃つっていうの。

「それからネ、乗り込む時は、よろしアルか?あたりを良く見るアルネ。張り込みのデカと、ヒットマンに十分気をつけて、素早く乗り込むアル。」

たかが、教習車を運転するだけの素人なのに、そこまでするか普通。ドアを開ける時には、せいぜい後ろから来る車やバイク、ままちゃり、じいさんランナーくらいに気をつければいいだろ。

「No No 、近頃不景気で縄張り争い激烈なのヨ。この足立区と、隣の葛飾区は抗争中だがね。しゃぁけえ、JR,千代田線亀有駅前は、路上でもコースからはずしてあるよ。あそこの亀有煎餅屋のじっつぁんハ、優しそうに見えても前科十犯アル。せんべいと若い衆に焼き入れるのが、得意アルやんけ。」訛りがごちゃごちゃだあ。
今度から、煎餅買う時は、気ぃつけなくちゃ。

でも、初日からこれじゃ先が思いやられるよ。午後から上野のアメ横行って、中田屋商店でセラミックプレートの入ったケブラー繊維の防弾チョッキIOTVと、サバイバルナイフを買ってこなくちゃ。

いや、それに手榴弾、対戦車ミサイルランチャーと飯ごうもいるな。
そうだ、じっちゃんの鎧兜、鎖帷子、オヤジの海軍時代のサーベル、拳銃はもちろんニューナンブと、ヒットラーから貰ったって言ってた、ワルサーP38もいるよな。サラシを腹に巻くのは必須だね。

卒業するまで命が幾つあっても足りないかも。あぁ、前途多難!