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プリズン ドライビング・スクール

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炎暑編③ フィリピーナ フィリピーナ

マガンダング ウマガ クムスタ カ フェニ?アハハ
おはよう、元気してる フェニチャン?アハハ

オレはにっこり笑ってこう応える。

おうさ、マブーティ!JUN グ マンダ カ アノ! ヤクイイヤク?
もち元気だよ!JUN今日は一段と綺麗だねぇ!いいヤク持ってる?

実技教習の予約は、教習所の事務所で、女子事務員に頼むのだ。携帯もPCもまだなかった頃だったからね。さて、見渡しても事務員は日本人ではない。前の経営者が破綻して、従業員はみんな解雇されたのだ。朝から、黄色い声が飛び交っている。タガログ語だ。生徒のお嬢ちゃん、お坊ちゃまは、目を白黒させている。

そう、フィリピーナが、事務員なのだ。どうしてフィリピーナなのかって?彼女たちは夜7時からは、教習所の隣にあるフィリピンパブ『セブ・アイランド』のホステス兼ショーガールだからね。もちろんママはよし子伯母さ。19歳のオレは、いつも堂々と表から『セブ・アイランド』に入っている。バイトで皿洗いをやってるから。

実技教習の予約システムは、毎日1時間好きな時間を選べる。そしてもう1時間だけ、予約の取り消しがあった分、車に乗れるのだ。俺はJUNとはもういい仲だし、バイクの後ろに乗せてしょっちゅう同伴出勤?してるから、取り消し順番待ちの、いつも先頭に入れてもらっている。学生で、暇を持て余しているので、毎日2時間乗れる。だから、20日かからないで卒業するつもりだ。

マラーミング サラマートゥ。 マハル キタ JUN。Tyu !
ありがとう。愛してるよJUN。ほっぺにチュッ!ヤク臭せぇぞ。

とりあえず、仮免許を最短で取って、一刻も早く路上に出なくっちゃ。既に自動二輪免許を持っているし、普段の足はホンダCB750、通称ナナハンだ。時速180kmは出るからね。このあたりの日光街道国道4号線、環七通り、水戸街道国道6号線は、オレっちの庭みたいなもんだから。

2時限目も、当然ゴンザレス兄ィだ。オレはもうエンストなんてゼッタイしない。バイクもそうだけど、友人のトニー、(東京都立大学の自動車部員)のいまにも壊れそうなダットサンブルーバード310で、しょっちゅう246を通って沼津やら、湘南海岸に連れて行ってもらっている。先日は青山霊園でオレがこっそり練習していたら、あやうく爺さんを跳ね飛ばすところだった。

AMGのコラムシフトは、ハンドルの右側から、ターシグナルのレバーは左側から生えている。国産のちっぽけなクラウンなんかとは、全くの逆だ。ステッキ状のパーキングブレーキも、右手で操作する。右からオルガンタイプのアクセルペダルが床から立ち上がっている。ブレーキ、クラッチペダルがそれに続く。左足を置く位置には丁度前輪のふくらみにあわせフットレストが付いている。さすがアウトバーンを何時間も走れるようにできている。ブレーキぺダルも、スポーツカーらしくヒールアンドトゥがしやすい高さになっている。ワイパーはベンツお決まりの1本アームではなく普通の2本アーム。大きなウィンドウだからね。

さて、ヘルメットを被り、AMGに乗り込んでミラーを合わせる。国産車にはない4点式シーベルトをしっかり締める、気分はもうレーサーだ。
身長168cmのオレだと、シートはだいぶ前に出さないといけない。ゲルマン民族は足長だと、つくづく思う瞬間だ。エンジンのトルクがぶ厚いから、トップの3速発進も可能なのだが、そこは教習所。おきまりのローから発進しなくちゃいけない。うっかりアクセルを踏むと、3秒で時速100kmに達するので、余計に神経を遣う。

兄ィは構内では時速40kmに留めろって言うが、直線はたった50mしかないんだぜ。そろそろとアクセルを踏んで行く。ハンコを貰うためには、2秒でセカンド、トップと加速して行く。急がしいったらありゃしない。よっぽどナナハンのほうがイージードライブだ。

直線はあっという間、直角カーブだ?教習所の構内で直角だぁ?事務所に突っ込めば、オジキの性格じゃぁ指1本どころではすまない。ガツンとブレンボの4輪ディスクブレーキを踏んづけ、扇風機のようにハンドルを回す。右へターン。尻が左へ流れて行くのを、逆ハンドルで押さえ込んで事務所を掠めていく。これじゃドリフトキングでしょ、

フェニ坊、イイネ、イイネ このカンジだよ。これなら敵対する亀有小桜会の組事務所に、手榴弾を上手く投げ込めるアルネ。合格アルヨ!ハンコ ハンコ!2つサービスネ。それは意味が違うでしょ。
でも、くれるものは貰っとく。