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プリズン ドライビング・スクール

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炎暑編① ベンツC63AMGでGO!

じりじりと焦げ付くような太陽が、容赦なくオレを痛めつける。
その関東広域指定マル暴梅ノ塚自動車教習所(認可名称はかくも長い)は、東京都内23区のチベットとも言われる足立区(あだちくが正しい、あしだちくは間違い)の、そのまたはずれの河川敷にあった。川を挟んだ向かいは、もう埼玉県の川口市だ。キューポラが今は見えないのが惜しいんだが。

経営者はオレの伯母、関東スズラン会吉田親分の愛人、よし子だ。倒産した教習所を、ただ同然で引き取って、よし子伯母が乗り込んで再建にこぎつけたって訳だ。

もちろん、その筋の若いもんの運転教習だけじゃなく、表向きは結構まともな看板で、いつも空いているものだから、宣伝もしていないのに、時折間違えて堅気のお坊ちゃま、お嬢ちゃんが迷い込んでくる。

ただ、一度玄関をくぐると、ガラ(身柄)は拘束されたも同然だ。その場でサラ金から電話一本で借り入れさせられ、教習料金の全額を前払いさせられるからな。

50台ある教習車は、すべてベンツの最新型、シルバーのC63AMG(アー・エム・ゲー)排気量6208cc、DOHC V型8気筒エンジンで最高出力は457馬力、最高速は時速260kmを軽く越えるというバケモノクルマだ。

ノーマルで1台1,060万円はするが、バズーカ砲でもびくともしない防弾ガラス、特殊装甲に換装、護身用カラシニコフを車体前後左右に16丁ばかりと地対空ミサイルのフェレットを2機仕込んでいるので、改造費も軽く1,000万円を越える。これは吉田のオジキのこだわりで、どうしようもないと、よし子伯母がいつも嘆いていた。

教官達は皆、ブルースブラザーズの映画の見過ぎなのかどうかは知らないが、真夏日がいくら続いても黒のスーツ、ネクタイ、靴、レイバンのサングラス(ウェイファーラー)、ソフト帽を目深に被って涼しい顔をしている。ま、どう見ても、メン・イン・ブラックにしか見えないけどね。

教習所の広さは2haほど、ついでに国有地を払い下げで手に入れたから広大すぎるほどだ。もっとも、こっそり教習コース上に9ホールの河川敷ゴルフ場を作って、近場の親分衆がアイアンを振り回している。たまにゴルフボールが教習車を直撃するが、この装備ではへこみもしないだろう。まったく、ご愛嬌だねと笑っている場合ではないが。

オレは親戚ということで5割引にしてもらったけれど、所詮学生の身分。バイトで必至に貯めた虎の子貯金は、前払いで全額消えた。こうなったら、腹を括って、最短時間で卒業するしかないよね。