死刑執行のパラドクス
<考察3>
「なんですか? それ? いきなり、数学から、光の速さで遠ざかったような気がしますが」
「そうでもないが、そうでもある。ここで、私の中学生のころの話をさせてくれ」
「飛びますね」
「いいから、聞け。当時から、数学が得意だった私は……」
「自慢話ですか」
「自慢がしたい訳じゃない。先生に指名されて、ある問題の解答を、教室の前に出て、クラス全員に教えなければならなくなった」
「先生役って訳ですね」
「そうだ。その問題ってのが、こうだ」
そう言うと、先生は黒板に正方形と長方形を書いて、それぞれの中に線を書いて、三角形2つと台形2つに切った。そして、正方形の下に図1と書き、長方形の下に図2と書いた。
「あー、その問題、知ってます」
「ああ、そうか。有名な問題だからな。しかし、問題の本質は、この問題にある訳じゃないので、問題を確認させてくれ」
「ややこしいですね」
「まぁまぁ、聞け。当時の再現で行くぞ」
「そんな昔のこと、覚えてるんですか?」
「問題の本質を再現するということだ。問題文はこうだ。
『図1のように1辺8cmの正方形を2つの三角形と2つの台形に切り、図2のような長方形に並べ替えます。
すると、面積が64平方cmから65平方cmに増えます。これはなぜですか?』」
「はーーーい、はーーい、はい、はーい」
「はい、山田君」
「それは、実は、長方形に並べたときに、真ん中に、1平方cm分の隙間が開いているからでーす」
「そうだ。そして、私も、当然、そのように、説明したよ」
「わざわざ、こんな話をするってことは……」
「そう、上手く行かなかった」
「その頃から説明が下手だったんですか?」
「そう、その頃から説明が下手で、今も授業が分かりずらく……って、おいっ」
「ノリツッコみありがとうございます」
作品名:死刑執行のパラドクス 作家名:でんでろ3