死刑執行のパラドクス
<考察2>
「えー?」
僕はあからさまに異を唱える。
「だって、奥さんは、1日中、贈り物はティファニーのダイヤのネックレスかも知れないって頭を悩ませてたんですよね。それで、『意外な贈り物』って言うのは、ちょっと……」
「私も同感だ。贈り物がなんなのか、全く見当がつかない状態で、そのプレゼントを受け取った場合と比べて、インパクトがガタ落ちなのは明白だ。はっきり言って、この問題は、『死刑執行のパラドクス』の単純化としては失敗作だと思っている」
「いいんですか。そんなこと、言っちゃって」
「何が?」
「この問題、考えたのって、いずれ名のある数学者なんじゃあ……?」
「大丈夫だ。こっちは、いずれ名もない数学教師だ。聞こえる訳ないし、相手にもされないし、この後、持ち上げる」
「持ち上げる?」
「『持ち上げる』訳じゃなくて、本当にそう思ってるんだが、この『死刑執行のパラドクス』の『ひみつ』というか『本質』をついた言葉を、この人が言っていた」
「それはなんですか?」
「それはつまり、
『実行不可能なことをやると言ってる人間を信用するのが、そもそも間違っている』
ということだ」
作品名:死刑執行のパラドクス 作家名:でんでろ3