死刑執行のパラドクス
<単純化>
「でも、どうしてこんなことが起こるんですか?」
僕は、訳が分からず聞いた。
「問題を考える上で、『単純化』というのは大切だ」
「単純化……ですか?」
「うむ。この問題の単純化として、ある人が提唱した問題がある。それはこうだ。
ある朝、正直者で絶対に嘘をつかない夫が妻に言った。
『今日、僕が君に贈る誕生日プレゼントを当てることは絶対にできないよ。なんていったって、ティファニーのダイヤのネックレスなんだからね』」
「なんですか? それ?」
「奥さんも当然、『なんですか? それ?』となる。1日中、頭を悩ませるわけだ。
『正直者で絶対に嘘をつかない夫が、誕生日プレゼントは、ティファニーのダイヤのネックレスだと言った。じゃあ、誕生日プレゼントは、ティファニーのダイヤのネックレスなのかしら?
でも、それだと、私が誕生日プレゼントを当てることは絶対にできないということと矛盾するわ。
それでは、誕生日プレゼントは、ティファニーのダイヤのネックレスではないのかしら?
でも、それだと、正直者で絶対に嘘をつかない夫が、嘘をついたことになるし』」
「で、結局、どうなるんですか」
「問題の提唱者の用意した結末はこうだ。
その夜、妻は、夫から、ティファニーのダイヤのネックレスという意外な贈り物を贈られて驚く」
作品名:死刑執行のパラドクス 作家名:でんでろ3