死生学研究科
赤石「死んだ後が何か分からなくて怖いから、天国探してんの。」
森山「へー。」
赤石「コタローはどうなんだよ?」
森山「僕ですか!?」
赤石「そーだよ。なんかここ来た理由とかあんの?」
森山「ありますけど、僕はまあそのうち言いますよ。」
赤石「今言えよ。」
福島がやって来る。
森山「あっ、メグロ君はなんか夢とかあります?」
福島「ないよ。」
森山「あ、はい。何もないんですか?」
福島「うん。」
森山「じゃあ何でここに?」
福島「それは院生やってると親から生活費出るから。」
森山「はぁ」
福島「ヲタクやるのも大変なんすよ。」
境「福島はホント…」
福島「あっ、そういえば今日なにもない所でこけたでしょ?」
境「え?」
福島「見ましたよ?境氏が廊下で。あれは恥ずかしかったでしょ?」
白井「そうなの?」
高見「福島。前言ってたネットのスゴ技教えてやるよ。」
福島「ホントっすか!?」
高見「ああ。だからこっち来い。」
福島「どういう風の吹き回しっすか。」
高見は福島を連れてパソコンの前へ連れて行く。
白井「いきなりこけたって、大丈夫なの?」
境「たまに目眩がするだけ。」
白井「気をつけてよ。」
境「うん。」
中野「じゃあ人も揃ったしそろそろ始めようか?今日の内容はねえ」
境「教授。ディスカッションにしませんか?」
中野「それでもいいけど」
境「ならお願いしたいです。」
中野「うん分かった。じゃあみんな準備して。」
赤石「何でディスカッションなんだ?」
境「いいだろ?今日ぐらい。」
赤石「は?」
中野「テーマは生きるとは何か。」
白井「はい。」
中野「じゃあ、いつでも。」
境「誰からいく?」
高見「俺からいこう。俺は、人は何かを成すために生まれてくるんだと思う。」
境「うん。」
白井「どうして?」
高見「人は罪深い生き物だ。なにか社会に影響することをして、やっとその罪を返済できる。」
福島「そうですか?」
高見「適当に生まれて、適当に生きて、適当に死んでいくのではダメだ。自分にしかできないことを探す。誰もまだ歩いていない道を歩く。それが生きるということだ。」
白井「なぜ何かを成す必要があるの?」
高見「人間っていうのは、死神のような生き物だ。1日生きるだけで何十個も命を奪う。間接的にも直接的にも。生きている限り殺し続けるんだ。俺が今日生きるだけで、いくつ命を消す必要があるか。何か成さないと浮かばれないだろ?自分の罪に似合うだけの貢献を。」
赤石「いやでも、他の命奪うっていうのは生物界の常だろ?人に限ったことじゃねーし。」
高見「確かにそうだ。けどな、そんなときだけ動物と同じ目線になるのか?普段は頂点気取って、動物という食物を支配してきた人間が。」
赤石「ヒトが哺乳類であることに変わりはねえ。当たり前のことを効率よくしてるだけ。」
福島「みんなで食べるのやめて一斉に死んだって、何がどうなるわけでもないですし。」
高見「人が頂点であることは認めるんだな?」
赤石「ああ。それは数値から見てもはっきりしてんじゃねえか?」
高見「それがもう罪なんだよ。命はみな平等だ。それを人間だけが特別であるかのように思い、他の命をないがしろにする。人間はもっと慎ましく生きるべきだ。それが出来ないなら、せめて世界に貢献しろ。」
白井・森山「おおー。」
中野「なるほどね」
赤石「はい。じゃ俺の意見言うわ。生きてることは幸せだと思う。どんだけ苦しかったって、死ぬこと考えたらまだマシに思える。死んだ後ってどうなるか分かんないし。だから俺今悩んでるけどそれも生きてるから出来ることじゃん。だからそれでいいんだと思う。」
福島「でも、もし天国があるなら死んだ方がマシかもしれなくないすか?」
赤石「今あるもんを捨てちまうようなやつが天国行っても、その先でマシな生き方できるとは思えねえな。」
森山「たしかに。」
赤石「自殺するようなやつは考え過ぎなんだよ。もっと気楽に生きればなんとかなんだよ。」
境「結局何?」
赤石「生きるってことは今ってこと。楽しんで苦しんで幸せな今。それを感じること。」
境「それじゃダメだよ。」
赤石「何がダメだ?」
境「それじゃ誰も救えない。」
赤石「救う?神様気どり?」
境「その生き方じゃ、何も残らない。」
福島「シュウ氏は生きて楽しめって言いたいんですよね?僕は人生ってただ死を待つものだと思うんすよ。いつ死ぬのか分からないけど、ただその時を待って2次元漬けになることが生きるってことっす。ね?シュウ氏?」
赤石「いや、死はなるべく避けたい。死にたくはない。」
福島「何言ってんすか?3次元はいつか滅ぶんすよ?そして2次元の世界が始まるんす。」
白井「それはないでしょ。」
福島「いやいや、次こそは2次元に生まれ変わりたいっす。そのときをずっと待ってるんすよ。ね?タカミィ?」
高見「いや、そんなことはない。」
福島「3次元には絶望してるって言ってたじゃないすか?」
高見「俺が絶望してるのは自分の人生にだ。」
福島「あんま変わらないと思うっすけどねえ?」
赤石「とにかく俺が言ってるのは、死を待つというか、今を楽しむということで」
境「俺の意見言っていい?」
赤石「ああ。」
境「俺は、人っていうのは何かを残すために生きてるんだと思う。」
赤石「残す?」
境「そう。自分が生まれてから死ぬまでの間に何が残せるか。そのことに一生懸命になればいい。」
赤石「何でそう思う?」
境「自分が生まれる前と死んだ後で、世界になにか残せていたら、その命は価値あるものと言えるだろ?」
赤石「たしかにそれは認めるけど」
森山「なぜ相手が世界なんですか?スケールがちょっと」
境「いや世界って広いけど、この今を構成してるもの全部で世界だから。今ここにある空気だって世界の一つだよ。」
赤石「それだったら特に意識しなくても残せるんじゃねえか?なにかしらは。」
境「それじゃダメなんだよ。自分で残せたって思えるようなものじゃないと。」
赤石「そう。アヤはどう?」
白井「私はいいや。教科書通りのことしか言えないし。」
赤石「そう。」
中野「じゃあそろそろ出た内容まとめようか。」
境「はい。出た意見としては社会に貢献出来る道を探すこと。なにかを残すこと。ただ死ぬのを待つことと今を感じること。」
中野「そこ4人は二分したね。」
境「はい。生きてることに意味を見出そうとした側と今を楽しむ側ですね。」
中野「うん。他人の意見聞いて何か気付いた人いる?」
赤石「はい。俺が死んだ後のことばっか考えてたってことを。何故生きてるかとかあんまり考えたことなかったです。みんなそんなに生きてんの嫌か?」
境「そんなことないよ。ただ、生きるのに理由が欲しいだけ。」
赤石「そんな理由付けしなくたって生きていけるじゃん」
高見「生きるっていうのは苦しみなんだ。」
赤石「それは分かったよ。」
高見「そうか。」
境「理由がないと生きてはいけないよ。」
赤石「そんなことねえよ。極論言えばさ、水と飯さえあれば生きていけんだ。生きるのに罪悪感とか感じなくていいし。どんな充実した人生歩もうかワクテカしてるだけでいい。」
境「その充実させる方法を考えてる。」
赤石「そんなもん人それぞれだ。」