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死生学研究科

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赤石「そうすか。」
中野「うん。」

中野は自分の席に着く。

赤石「ダメか。」
白井「いいよ別に。」
赤石「中野教授って前はもっと面倒見良かった気がするんだけど」
白井「まあ。教授も色々あるんだよ。」
赤石「そう。まあ、今後どうするかだな。」
白井「そうだね」

境がやって来る。

境「どうしたの二人して?なんか暗そうだけど」
赤石「汐也はなんか明るいな。」
境「まあね。」
赤石「なんか良いことでもあった?」
境「これからだよ。」
赤石「ふーん。」
境「はあーこの何とも言えない時間がいいよね?」
赤石「何言ってんだ?」
境「何だろな。なんか2人に言っとかなきゃいけない気がするんだけど。」
赤石「じゃあ言えよ。」
境「それが出来ないから困ってるんだよ。」
赤石「あっそ。」
白井「ねえユウ。相談があるんだけど。」
境「何?」
白井「私、院やめようかと思って。」
境「え!?それはもったいないな。あれだけ死生学頑張ってきたのに。」
白井「でも」
赤石「やっぱ汐也もそう思うよな。」
境「うん。アヤ、何でそう思ったんだ?」
白井「ここにいる理由がないから。」
境「でも、目標持ってただろ?」
白井「4年やってダメだったんだよ?もう分からないよ。」
境「そう。残念だな。」
白井「そうなんだ。」
境「俺はさ。死生学ってこの先もっと必要とされる分野だと思うんだよ。アヤだったらすごい学者になると思うからさ」
白井「そんなことないよ。」
境「いや、アヤは死生学の期待の星だよ。アヤの頑張りは俺がよく知ってる。」
白井「ありがと。お世辞でもうれしいよ。」
境「世辞じゃないんだけど。」
白井「でも、私がここにいる理由はそれとは違うところにあるの。」
境「そっか。」
赤石「何が正解かなんて誰も分からねえからなぁ」
境「シュウも暗いな」
赤石「俺はただ実験がうまくいってないだけ。」
境「元気出せって。そんな暗い顔。らしくないよ。」
赤石「ああ。」

福島がやって来る。

福島「え?何抱き合ってんですか?」
境「え?」
福島「あーそういう関係でしたか。うわー」
赤石「ちょ、うわーって何だよ。」
福島「えー抱き合ってたじゃないすか。つまりあれっしょ?」
赤石「違う。断じて違う。」
福島「あーそのむきになって反論する感じもうダメっす。アウトっす。」
境「そういうんじゃないから」
福島「それ以外で男が抱き合うことなんてないですよ。」
境「相談に乗ってたんだよ。」
福島「相談に?」
赤石「そう。」
福島「萌えっ子ホイホイのオフ会場所の行き方なら昨日説明したでしょ?」
赤石「バッおま。その相談じゃねえよ。」
福島「違うんすか?」
境「シュウってそんな会入ってんだ。」
白井「まぁ意外じゃないけど。」
赤石「ちょお、ひかれてるんだけどー。」
福島「じゃあ限定フィギュアの方?」
赤石「その相談も昨日終わったよ。今は俺の実験がうまくいってないって話。」
福島「そう。」

中野が電話を受け、足早に出て行く。

白井「私も相談受けてて、ここにいる目的がないからやめようかどうかって。」
福島「ふーん。やめたらいいんじゃないすか?」
境「おい。」
福島「だって人生って短いんすよ。だいたい約3万日って言われてるんす。だから僕らだと、残り約2万2千日ってとこすかね。ここにいる意味がないならもっと別のことにお金使った方がいいっすよ。」
白井「そうだよね。さっさと働いてお父さん安心させた方がいいもんね。」
福島「そうっすよ。シュウ氏はやりたいことやってるんでしょ?」
赤石「ああ。ただ、何故かしんどい。」
福島「なら休憩したらいいじゃないすか?」
赤石「休憩?」
福島「休憩っす。心の。あんまり詰め詰めでやると自殺しちゃいますよー?」
赤石「休憩が必要だったのか」
福島「そうっすよ。いっぺん離れる。そのことを忘れる。」
赤石「そうだな。じゃあゲームすっか。」
福島「そっすね。」
境「おいおい。」
白井「私もようやくお母さんから解放されるんだ。」
境「はぁ。」

高見がやって来る。

高見「おい。実験場の増設中止になるかもしれないらしい。」
境「え?何で?」
赤石「は?何でいきなり?」
高見「昨日の教授の自殺のことを問題にあげられてる」
赤石「それは」
高見「他にも色々あるが、今、下に委員会のやつが来てるらしい。」
福島「昨日のことでしょ。委員会ってそんなにはやく動けるんですか?」
高見「理由は分からない。応接室で話をしているとか。」
赤石「ちょっと行ってみるか。」
白井「本気?」
赤石「だって納得いかねえだろ。」
福島「行っても無駄ですよ。委員会は絶対ですから。」
赤石「とにかく様子だけでも見ねえと」
福島「仕方ないですね。」

赤石と白井と福島が出て行く。

境「それで、今どんな状況?」
高見「自殺の他にも色々問題点をあげられて、実験場の増設は間違いなく中止になるだろう。」
境「そうか。」
高見「それだけで収まるかどうか。」
境「それで、この状況どう思う?」
高見「妙だ。こんなに早く来るとも思えない。」
境「うん。」
高見「明日の件はどうするつもりだ?」
境「延期にした方がいいよね。」
高見「そう思う。」
境「分かった。この大学でテロを起こすのは、もう少し後にしよう。」
高見「ああ。」

暗転


シーン5

それから数日後。
場所は中野研究室。
赤石、白井、境、高見、森山、中野がいる。
森山が日記帳に何か書いている。

赤石「それ何書いてんの?」
森山「日記帳ですよ。」
赤石「へー日記なんてやってんだ。」
森山「はい。」
境「最近じゃ珍しいよね?」
白井「ホント」
森山「そうですか?」
赤石「ちょっと読んでくれよ。」
森山「えー?」
赤石「いいじゃん。」
白井「私も聞きたい。」
森山「仕方ないですね。」
赤石「おっ、事故った日のやつ頼む。」
森山「そこですか?」
白井「入院式前に3カ月入院したやつ?」
赤石「そうそう。3カ月も入院するなんてどんな事故だったのか気になるじゃん?だから頼む!」
森山「はぁ。仕方ないですね。」

照明変化。

森山「そうそれは軽やかな初春。街道の木々たちがみな桜色に頬を染めきってしまう少し前のことだった。僕は暖かい木漏れ日の中、春風の強さと四季の微妙な変化を感じながら、いつも通り街道を散歩していた。軍事用セグウェイで。」
赤石「何で軍事用!?」
森山「坂の上から一気にスピードを出して下って行った。すると、前の信号がもう少しで赤になるのが分かって更にスピードを上げたんだ。どんどんスピードを上げて、僕は風になった。」
赤石「風!?」
森山「そう、風。エアロ。」
赤石「エアロ!?」
森山「僕はギュンギュンスピードを上げて交差点に飛び込んだ。けど、そこには1台の車が来てたんだ。」
赤石「じゃあ。」
森山「ちなみに、まだ青信号だった。」
高見「そここだわるのか。」
森山「僕がその車に気付いたのは交差点に出てから。なぜだか分かります?」
赤石「前方不注意」
森山「相手が改造車だったんですよ。電気自動車は静か過ぎるから、わざと音を出して車の存在を分からせるように出来ているんです。だけど、その装置が外されていて。」
赤石「そうか。」
作品名:死生学研究科 作家名:黒木 泪