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死生学研究科

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赤石「だって生きてるからじゃん。苦しいのも楽しいのも。それはさ、一度きりかもしれない人生を謳歌するためでもあるし、天国に行きたいからでもあるんだよね。」
高見「じゃあ赤石は自殺したいって思ったことないのか?」
赤石「考えたことあっても本気でそう思ったことはねえよ」
高見「そうか。」
赤石「だからさ、そういう風に生きてることが苦しみだみたいな考え方してるやつが、自殺するんじゃねえかと思うんだ」
白井「ふーん。」
赤石「で、ちょっと脱線するんだけど、天国の科学的証明っていうのをやりたくてさ。もし証明できたら死ぬことへの恐怖はなくなるんじゃねえかと思って。」
森山「どうやって?」
赤石「命って脳の持つ意識だと思うんだよ。」
森山「意識?」
赤石「人は目に見えないものを感じることが出来るだろ?シックスセンスなんて呼ばれることもあるけど」
森山「はぁ。」
赤石「虫の知らせって世界中で報告されてんだよ。親族が死んだとき妙なことが起きたとか、歯が抜ける夢をみたとか。」
森山「ああ。」
赤石「つまり死という事象が目に見えない情報のような形で伝わったんじゃないかなって。人の住む3次元とは別の次元って可能性もあるし。」
森山「はい。」
赤石「でその理由を考えたら、人が脳の意識だからじゃないかって。体が死んだときその意識が体から離れて、親族に伝えにいったって。」
高見「相変わらずオカルトチックな話だ。」
赤石「それはまあ。」
境「脳が死んでも意識が消えないっていうのが腑に落ちないな」
福島「その離れた意識が何で天国に行くのか分からないっす。」
赤石「仮説の段階だよ!もういいよ。」
白井「拗ねなくても」
境「人の価値観によって自殺するかしないか決まるっていうのは、共感できるね。」
高見「そうだな。」
境「みなそれぞれ色々思うことがある。だから話し合いが必要なわけだし。」
白井「そうね。」
高見「赤石は楽観的過ぎる。世の中には、生きているのに理由が必要なやつもいるんだからな。」
境「うん。」
白井「自殺とは何なのか」
森山「えっと。」
白井「どうしたの?」
森山「一個知ってることがあって、自殺の持つ影響力について」
白井「うん。」
森山「自殺するとその遺族の4人に1人も自殺したいって考えるそうです。」
白井「うん。その関係だとウェルテル効果もあるよね?」
森山「ウェルテル効果?」
白井「知らない?フィリップスが発見したものなんだけど、自殺報道の後は自殺数が若干増加するんだよ。」
福島「自分も死にたいって思うんすかね?」
白井「多分そういうことだと思う。今は報道の仕方を工夫してるから大丈夫だけど。」
高見「そっちに興味があるのか?だったら死場学の分野だな。」
森山「死場学?」
高見「死に磁場の場で死場学。さっき教授が言ってたろ?」
森山「ああ。」
白井「死の残す影響を調べる学問だよ。」
森山「自殺って影響するじゃないですか。家で自殺者が出たら周りからどんな目で見られるかとか。」
境「そうだね。」
白井「今の日本だと、なにか問題があったって思われるよね。」
森山「ええ。」
境「けど、遺書とかでよくあるだろ?家庭に問題があったとかって思わないでほしいって。全部自分の中の問題なんだって。」
森山「ええ。でも社会の目はそれを許しませんから。」
中野「そろそろ時間かな。」
森山「あっ、はい。」
中野「ちょっと用事があるから出るね。」
境「何の用事ですか?」
中野「実験場の増設についての会議があるんだよ。」
境「ああ。」
中野「じゃあ行ってくるよ。」
境「後はどうしとけば?」
中野「なんか適当に。」

中野が出て行く。

福島「じゃタカミィ。今の間に、例のパソコンテク教えて下さいよ。」
高見「断る。」
福島「何でですか?」
高見「あれは必要ないだろ。どうせ趣味に使うつもりだろ?」
福島「当たりっす。」
白井「そうだ。ここの中案内してあげるよ。」
森山「助かります。」
白井「シュウも行こう?」
赤石「俺行かね。」
白井「いつまでしょげてるの?」
赤石「気分が乗らねえだけだ。」
白井「ふーん。そう。じゃあコタロー君行こっか?」
森山「はい。」

白井と森山は出て行く。

赤石「なあメグロ?」
福島「何すか?」
赤石「今から狩り行かね?」
福島「あっ、ゲーム持ってきてたんすか?」
赤石「まあ。」
福島「モンスターに憂さ晴らしとはなかなかっすねー。」
赤石「何が?」
福島「はまり度合いっすよー」
境「高見、ちょっと。」
高見「ああ。」
境「じゃあちょっと出るわ。」
赤石「おう。」

境と高見が出て行く。

福島「何狩ります?」
赤石「亜種系まだ残ってんだよなー。」
福島「Gクエすか?」
赤石「いや上位の方。」
福島「そんなの一人でやって下さいよー。」
赤石「ええ?めんどくさいじゃん。報酬も少ないし。」
福島「シュウ氏はランゴスタレベルの人間ですね。」
赤石「あーまた言った。散弾と拡散弾でいじめてやるから。」
福島「じゃあ僕もガンナーでいくんで」
赤石「関係ねーし。メグロ狙うから。」
福島「モンスター狙って下さいよ。」
赤石「あっ、じゃあ貫通弾でメグロごとモンスターずーんって。」
福島「本気でやる気ですね。」
赤石「当たり前」

暗転


シーン3
場所は廊下。境と高見が話している。

境「準備は進んでる?」
高見「もちろん。なあ本当にいいんだな?」
境「何が?」
高見「2人に言わなくて。」
境「ああ、うん。」
高見「そうか。」
境「シュウも言ってたけどさ、今っていう時間も大事にしたいんだよ。」
高見「ああ。」
境「データは準備出来てるんだよね?」
高見「いつでもいけるようになってる。」
境「分かった。決行日は明後日。それでいい?」
高見「問題ない。」
境「楽しみだな」
高見「境はそういう気分なのか。」
境「不謹慎だった?」
高見「いや、その気持ちで間違ってないんじゃないか。いやむしろそうあるべきか」
境「そう。高見はどんな気分?」
高見「緊張している。」
境「きっと上手くいく。」
高見「そうだな。」
境「明後日。この大学で。」
高見「人が来そうだ。場所を変えて話そう。」
境「ああ。」

境と高見が出て行く。
白井と森山がやって来る。

白井「で、ここが廊下。で、ここが女子更衣室。」
森山「え?あ、はい。」
白井「で、向こうの男子トイレの奥が女子トイレ。」
森山「あの」
白井「ん?何?」
森山「大体構造が分かりました。」
白井「そう。」
森山「質問なんですけど、アヤさんはどうして死学部に入ったんですか?」
白井「唐突ね。」
森山「はい。院までくるような人ってどんな風に思ってるのか気になって。」
白井「それは死生学を勉強したかったから。コタロー君は?」
森山「いや、僕は単なる好奇心ですよ。」
白井「そう」
森山「それでアヤさんは死生学研究して今後どうしていきたいとかありますか?」
白井「面接官みたい」
森山「あっ、いや。僕は分からないことばっかりなので、みんながどういうスタンスで臨んでるのか気になって。」
白井「そう。」
森山「早くみんなに追い付きたいですから」
白井「それなら私より他の人に聞いたほうがよかったね。」
作品名:死生学研究科 作家名:黒木 泪