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死生学研究科

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学長「現在中に入る手段はありません。なんとかヘリをチャーターしようとはしていますが、あまりうまくいっていませんね。」
中野「ちょっと待って下さい。まさか中だけで解決するつもりですか?」
学長「ええ。」
中野「そうですか。」
学長「何とかするしかないんです。」
中野「何とかなりそうですか?」
学長「どうでしょう。情報学部の教授たちにウイルスの対処を頼んではいますが、こちらもあまり。」
中野「やはり警察に連絡した方がいいと思いますが。」
学長「中野教授。それは私もよく分かっているのですが、他にも問題がありまして。」
中野「他の問題?」
学長「ええ、1つは委員会のことです。今まで隠していた死学部の問題を少し暴かれてしまって。今死学部は危ない状態なんです。」
中野「それは、取り壊しということですか?」
学長「ええ。ですからこのことを知られるわけには。」
中野「分かりました。」
学長「それと、問題はもう1つありまして。これは調査しているときに分かったんですが、うちの大学の生徒がこの事件に加担しているんです。この2人なんですが。」

学長は写真を取り出して机に置く。

学長「普段から大学内で怪しい行動をとっていて、おそらく施設の構造を調べていたんだと。どうしました?」
中野「いえ、この2人が何を?」
学長「中野教授。」
中野「はい。」
学長「知ってる2人ですか?」
中野「はい。私の教え子です。」
学長「そうですか。死生学の。これはますますバレるわけにはいきませんね。」
中野「すいません。」
学長「この2人がどれぐらい深く関わっているのかは分かりません。大きなバックがいるのかもしれませんし、2人だけで行ったのかも。」
中野「分かりました。私がなんとかします。」
学長「中野君。」
中野「私に責任があるので、失礼します。」

中野は出て行く。

暗転


シーン8

場所は中野研究室。
赤石、白井、森山が椅子に座っている。

白井「どうしよっか?」
森山「どうするって、どうするつもりなんですか?」
白井「脱出とか。」
森山「はぁ。出来たらやってますよ。」
白井「うん、そうだよね。」
森山「何とかして警察に連絡取りたいところですね。」
白井「それはないんじゃないかな。」
森山「それはないとは?」
白井「うちの大学あまり警察は呼ばないから。」
森山「なるほど。そういうことでしたか。」
白井「うん。学生間でも暗黙のルールみたいになってて。あっ、でも自殺とかしたら呼ぶよ?」
森山「そうですね。でも、この規模のテロとなるとさすがに連絡するでしょ」
白井「どうかな。」
赤石「もしかしたらさ、この電波障害って学長の仕業なんじゃ。」
白井「ああー」
森山「まさか?」
赤石「もしそうなら完全に孤立だ。」
森山「さすがにそれはしないでしょ?」
白井「いや、自殺も揉み消したって噂もあるし。どうか分からないよ。」
森山「本当ですか。」
白井「だから、中にいる私たちで何とかしないと。」
森山「信じられない事実です。けど協力せざるおえないみたいですね。」
白井「うん、ありがと。じゃあまず、どうしよっか?」
森山「うーん。セキュリティーを破りたいところですね」
白井「それは無理だよ。ここはセキュリティーの頑丈さが売りだから。」
森山「やっかいなものを作ってくれましたね。」
白井「そこまでは想定出来なかったのかな。」
森山「今日のシュウは口数が少ないですね」
白井「そうよね。シュウもアイディア出してよ?」
赤石「だから俺テロとか無理なんだって。」
白井「無理って何?」
森山「過去に何かあったとか?」
赤石「別にトラウマがあるとかじゃないんだけど、これテロなんだぜ?」
森山「そうと決まったわけでは」
赤石「ネット使えなくしてセキュリティーで閉じ込めて、俺らは人質なんだよ。15分おきに一人殺されんだ。」
森山「映画の観過ぎですよ。ここには犯人もいないんですから。」
白井「もっとしっかりしてよ。」
森山「本当にびびってますね。」
白井「そもそも、もしホントにそういう状況だったら何か起こさないとやられちゃうよ?」
赤石「だからこうして目立たないようにしてんじゃん。」
白井「シュウ、何とかするためにはシュウの力が必要なの。だから力貸してくれる?」
赤石「うん。」
白井「何か気付いたことある?」
赤石「なんか、電子音が聞こえる。」

デジタルのタイマー音が鳴っている。

白井「ホントだ。」
森山「どこから」

森山と白井は部屋の中をあさり始める。
森山が爆弾らしきものを見つける。

森山「これって。」
白井「え?何? 爆弾?」
森山「たぶん。」

赤石は爆弾から距離をとる。

赤石「ちょっ勘弁してくれよ。もう無理だって。」
白井「それどんな感じ?」
森山「どんなって、タイマーがついてます。あとスイッチ。」
白井「スイッチ!?」
森山「押せって書いてます。」
赤石「それ絶対押さない方がいい」
森山「後はコードぐらいですね。」
白井「タイマーはあと何分?」
森山「2400秒です。」
白井「だと40分か。」
赤石「40分…。」
森山「どうします?」
赤石「どうするって」
森山「押すか押さないか。」
赤石「押したらダメだろ。」
森山「でも押せって。」
赤石「子供じゃねーんだから。そのまま真に受けるやつがあるか。」
白井「シュウが言っても説得力に欠ける。」
赤石「押すなって書いてたら押すけど、押せって書いてたら押さないだろ普通?」
白井「どこの理論よ。」
赤石「犯人が押せって言うことは、悪いことが起きる。」
森山「でも、普通無いですよね。爆弾に、押せなんて」
白井「たしかに。」
赤石「爆弾のスイッチなんて用途は一つだろ。」
森山「押してみるのもありじゃないですか?意外と爆弾じゃなかったりして。」
赤石「そんなわけあるか。」
森山「でも杞憂に終わる可能性もあるでしょ。」
赤石「待てって。もしそのスイッチ押していきなり」

突然、爆発音が響く。

白井「何の音?」
森山「爆発?」
白井「下からじゃない?」

白井と森山は窓の側まで行く。

森山「よく分からないですね。」
白井「でも、煙が上がってるみたい。」
赤石「はっはっははっはっ。もう無理。無理だ。みんな死ぬんだ。」
白井「シュウ。」

白井は赤石の元に駆け寄る。

白井「落ち着いて」
赤石「だって。」
白井「大丈夫だから。」
赤石「だって爆弾だぞ?何が出来んだよ」
白井「出来るよ。」
赤石「何が?」
白井「スイッチ。」
赤石「は?今の爆発音聞いただろ?」
白井「聞いたよ。」
赤石「だったら」
白井「シュウは下がってていいから。」

白井は爆弾の元へ向かう。

赤石「おい。」
森山「本気ですか?」
白井「ちゃんと勝算はあるよ。」
森山「勝算って。」
白井「わざわざこんなスイッチが付いてるのも小さく電子音が鳴ってるのも。多分私たちの反応を見るため。このスイッチが前に進むための鍵なんだよ。」
森山「でもそれけじゃ」
白井「あともう一つは勘。スイッチ押すから離れてて。」
森山「アヤさん。」
白井「大丈夫。」

白井はスイッチを押そうとする。

赤石「ちょっ待てよ。」
白井「シュウ。」
作品名:死生学研究科 作家名:黒木 泪