死生学研究科
白井「そうですか。セキュリティーが使えないんなら、勝手に怪しいやつが入って来ても分からないってことですよね?」
中野「まあそうなるな。」
森山「それはつまり?」
白井「もし犯人の目的がセキュリティー装置をおかしくすることだとしたら」
森山「ここで何か起こすつもり。」
白井「うん。いきなり乗り込んで来る可能性もあると思う。」
福島「ふっ。許せないっすね。いや、許したくないだけかもしれない。」
白井「メグロ君?」
福島「もう僕はキレました。僕のものに手を出したことを後悔させてやるっす。」
森山「おお、オーラが見えます。」
福島「ミクを、デラフェリカさんを、マイマイ萌えぴーを失った僕の悲しみは、絶対100万円にして返してもらうっす!」
森山「お金でいいんですか!?」
福島「いいです!」
白井「それでどうするつもり?」
福島「ますは犯人の居場所を探し出す。」
白井「どうやって?」
福島「無事なパソコンとネット環境さえあれば何とかなるっす。」
白井「それでその後は?」
福島「犯人を捕まえて、縛り上げて、これはミクの分!これはデラフェリカさんの分。これはマイマイ萌えぴーの分。」
白井「かっこ悪い。」
福島「そして僕の探し出すまでの仕事量および慰謝料込みで100万円分のエロゲを請求するっす!」
白井「100万円で止めて。」
森山「すごい数になりそうですね」
福島「今から興奮してきたっす。」
白井「いっぺん深呼吸しよっか。」
森山「教授。大学側はどういう対応を取りそうですか?」
中野「んー学長中心で対策本部を設置ってとこかな。」
森山「学長が?」
中野「あの人に任せとけば何とかなるよ。」
森山「そうですか。個人情報の流出はどうなるんですか?」
中野「ああ、そこは大丈夫だと思うよ。個人情報には厳重にロックかけてあって数日で破られることはないから。あ、でも君たちのパソコンから漏れるのは防げないんでそこは申し訳ないと思う。」
森山「やっかいなことになりましたね」
その後も4人で話していると、フードを被った男がやって来る。手には包丁を持っている。
男は突然4人を殺害し、客席を向く。
男がフードを取ると、フードの男は赤石である。
赤石「これにて終演。」
中野から順に皆起き上がり始める。
中野「いや、ないからー。」
白井「そうよ。」
森山「いきなりですね。」
赤石「たまにあるじゃん。こう、みんな死んで終わりっていうの。」
福島「シュウ氏は僕を怒らせたいみたいですね。」
赤石「おいおいそんなキレんなよ。」
森山「僕ここのノリについていけるようになってます。」
赤石「お前は元々そんなだろ?」
森山「そうですね。」
白井「それで何でいきなりこんな茶番?」
赤石「茶番って言うな。セキュリティーが壊れてんだから、いつこんなやつがやって来るか分かんねーだろ。そのシュミレーションだよ。」
白井「みんなやられちゃったよ。」
赤石「だから、本番でもそうなるんだよ。もっと気を引き締めねーと。な?」
森山「はぁ。」
赤石「うーし。しっかり準備しとかねーと。」
森山「足震えてません?」
赤石「びびってねーよ。俺はびびってねえ。」
白井「びびってるよ。」
赤石「びびっちゃいねえ。決して。」
白井「そう。」
赤石「でさ、この噂知ってる?」
白井「噂?」
赤石「なんかサイバーテロなんだって。」
白井「テロ?これが?」
赤石「そう、うちだけなんだよ。こんなネットが麻痺状態になってんの。で、うちの大学の特徴って言ったらやっぱ死生学やってることじゃん?」
白井「うん。」
赤石「だから、犯人は死生学に対して何か主張持ってんじゃねーかと。それでその主張をテロという形で表した。」
白井「可能性はあるけど」
赤石「だろ?」
白井「でも、根拠が不明確。」
赤石「そこは仕方ねえ。」
森山「テロだとしたら、何を主張してるんですか?」
赤石「うちへの不満とか、死生学反対とか。」
白井「探りを入れてるのかも。反応を見てるとか。」
森山「そうですね。」
白井「別にテロを正当化するつもりはないから。」
森山「それはそうですよ。どんな理由であれ厳重に処罰されるべきです。」
白井「うん。」
福島「考えるに学長絡みじゃないですかね?色々黒い噂ありますし。」
赤石「なるほど。」
白井「学長への恨みを大学に晴らすってこと?」
赤石「うーん。ちょっと違うか。」
白井「そうだね。」
赤石「だな。」
教授が席を立つ。
白井「教授、私たちはどうすればいいんでしょう?」
中野「どうするって、どうもしなくていいよ。」
白井「そういうわけにはいきません。私たちの大学でもあるんですから。」
中野「いいよ。教授陣で何とかするから。」
白井「じゃあ教授のお手伝いを」
中野「その気持ちだけでいいよ。じゃあ帰宅命令出してもらえるようにかけあってくるから。」
白井「何か手伝わせて下さい」
赤石「アヤ」
白井「私たちだけだと、何していいか分からないんです。」
中野「何もしなくていいよ。ちゃんとした大人に任せておけばいい。」
白井「院生は大人です。」
中野「まだまだ。」
中野が出て行く。
赤石「アヤがこんなに意気込んでるとは、驚いた。」
白井「私たちで考えるしかないよね。」
赤石「何を?」
白井「対策だよ。何が起こるか分からないでしょ?」
赤石「まあ。何が起こるんだよ?」
白井「それが分からないから、対策を立てるの。」
赤石「分からないと立てれねえだろ?」
福島「とにかく僕は止めれないですよ。ヲタの逆鱗に触れたことを後悔させてやる」
赤石「メグロ?」
福島「まずは無事なパソコンを探してくるっす。」
福島が出て行く。
赤石「あれは、本気だな。」
白井「当たり前でしょ。」
赤石「まあ。」
白井「で、どういう対策とる?」
赤石「テロに対抗する気か?」
白井「まあ、そうなるね。」
赤石「俺らに何が出来んだよ。身を守んので精一杯だろ」
白井「そうやって線引きしない。」
赤石「いや無理だって。さっさと逃げた方がマシ。」
白井「シュウ。」
赤石「当たり前だろ?俺なにか間違ってる?」
白井「自分の大学のピンチでしょ?」
赤石「危機的状況に自分から突っ込むやつがあるかよ。人間生きててなんぼだろ?」
白井「それはそうだけど。ねえコタロー君は?コタロー君は手伝ってくれる?」
森山「いや、僕はちょっと。」
白井「どうして?手伝ってくれたって」
森山「まあ出来ることはしますけど、そんな積極的には。」
白井「そう。」
赤石「なあ、汐也とタカミィはどこ行ったの?」
森山「今日休みだそうです。」
赤石「休み?こんなときに。」
森山「そうですね。」
赤石「じゃあ俺もう帰るわ。」
白井「本気?」
赤石「当然。コタローは?」
森山「そうですねえ。」
シャッターの下りる音。
森山「何ですこの音?」
暗転
シーン7
場所は学長室。中野と学長が話している。
中野「つまり、研究棟が封鎖されたってことですか?」
学長「そういうことになりますね。」
中野「そんなことどうやって」
学長「ウイルスがセキュリティーの遠隔操作を可能にしたんです。」
中野「そんな。」