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長浜くろべゐ
長浜くろべゐ
novelistID. 29160
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朝霧の中で・・・

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でも、当時はひたすら隠していた。
先生の立場も考えたし、何より平凡パンチや週刊プレーボーイで興奮している同級生の前では、とても「オレ、男になったぜ!」と言える訳はなかったから。

先生は体は許してくれたが、キスは最後まで唇だけだった。
訳は聞いていなかった。「そういうもんか・・」位にボクも納得してたのかもしれない。

だから恵子とのキスに感動したのだ。
「これが本物のキスか!」と。





第三章  愛の交歓





長い時間、ボクらは絡み合って何度もキスをした。
上になり下になり・・・。

「ね、聞いて欲しいの」恵子が唇を離して、言った。
「何?」
「私ね、半分バージンなの」
「え、半分って?」

恵子はボクの下、ボクは仰向けの恵子に腕立て伏せの格好で覆いかぶさっていた。

「私ね・・」
恵子は静かに語りだした。

それは、以前お付き合いしてた彼とのエピソードだった。
ボクは聞きながら胸がザワザワしてしかたなかったのだが、恵子の横に仰向けになり天井を見ながら聞いた。

今までにお付き合いした人は二人で、初めての彼は短大時代のファーストキスの相手。
しかし何故かシックリいかずに、すぐに別れてしまったと。
二人目は社会人になってすぐに声をかけられた社内の先輩。
この彼が初めての相手だったと、心持ち小さな声で言った。
「でもね・・・」

恵子は横を向いてボクを見た。
ボクも、恵子を見た。

「何度か、試したんだけど、うまくいかなかったのよ」
「ちゃんと途中までは出来るんだけど、最後はムリだったの」

「結局はそれが原因なのかな、お別れ言われちゃった・・」
「だから・・このままだと、最後までいきそうでしょ?うまくいかなかったら悪いなって思って」
驚いた。
と同時に、こんな可愛い恵子を振るなんて・・とボクはその男が不思議でしかたなかった。

「今は?」
「え?」
「今でも・・その人の事、好き?」

「ううん、去年の事だし、もう何とも思ってないの」
「考えてみたら東京に出てきて就職して、私も舞い上がってたのかな・・」
「ほんの短いお付き合いだったから」

「良かった!」
そこまで聞いて、心底笑顔になれたボクだった。

5歳年上のバージンか・・こっちは大人のキスに感動したけど、取りあえずは経験者。

「ボク、こんなキスは初めてだった。凄く・・うまく言えないけど、気持ちよくて頭まで痺れそうで・・」
「でも白状するけど、童貞じゃないんだ」

「15歳の時に年上の女の人に教えられたんだ、色々」
ボクは、中学時代の先生との事を全部話した。

恵子はちょっと驚いた風だったが、すぐにニッコリしてくれた。

「じゃ、お互い、中途半端な経験しかないんだね?!」
「うん、そう思う」

「良かった、何か嬉しいわ。でも怒らない?うまくいかなくても」
「怒るワケないじゃん、きっとうまくいくよ!任せといて?!」
全く根拠の無い自信であるが、少し余裕みたいなものも感じ始めていたのだ。

安心したのか、恵子は強く抱きついてきて耳元で言った。
「ね、優しく触って・・」 

ボクらはそのまま自然に愛し合った。
恵子の心配は、全て杞憂に終わった。

終わったあと恵子は、ボクを下からギュっと抱きしめて「有難う」と言ってくれた。
ボクは恵子に体を預けて、グッタリしていた。

心臓の鼓動が速い。
胸を合わせている恵子の心臓もドキドキしてて、同じリズムだった。
それが何か嬉しかった。恵子とボクで何かの共同作業を終えたみたいな感覚かな。

「スタンド、点けてくれる?」
「うん」
スタンドの紐を引く。
カチン・・と部屋の中に白熱電球のあたたかい光が広がった。

恵子の頬は、上気して汗ばんでいた。
「恥ずかしい・・・」可愛かった。

ボクは恵子の上から下りて、仰向けになったまま少し休んだ。

どうやらそのまま、ボクは眠ってしまったらしい。
暫くしてから、恵子に起こされた。

「ね、汗流しに行かない?」
湯治場も兼ねている宿だったから、お風呂だけは24時間入れたのだ。

「うん、一緒に行こう。だってまだ足・・痛いでしょ?」
「やだ、さっきは痛いの忘れてた。今すごくズキズキする!」
ボクは恵子に肩を貸して暗い廊下を静かに歩き、階段を降りていった。

案の定、宿の風呂は開いていた。
脱衣所に小さな裸電球がひとつ、あたたかい光をはなっていた。

「恥ずかしいから・・・先に入ってて?」
「うん、分かった」

ボクは浴衣を脱ぎ棄てて、スリガラスのドアを開けて風呂に入った。
湯船にはまだ十分な湯が残ってて、ザっと体を流して浸かった。

少し遅れて、恵子が髪を器用にまとめてタオルで体の前を隠しながら入ってきた。
「痛いよ、足くびが」笑いながら。

湯船に浸かったボクの目の前で、恵子も桶で湯をすくって体を流した。
片ひざを立てて斜めに首から、ザ〜っと二度、三度。
風呂場の裸電球が、恵子の裸を美しく浮かび上がらせている。

「綺麗な体・・」
「ちょと、そんなに見ないでよ」
「高校生のセリフじゃないね、それって」
お互いに笑う、確かに。

「・・・入るよ」

恵子が湯船を軽く跨いで、入ってきた。
「少し、ぬるくなってるね。夕方より」
「うん、でもボク・・からすだから、これ位がちょうどいいよ」

ふふ・・と笑いながら、湯を胸、首にかける恵子。
「あのね、こことお腹の奥、少しジンジンしてるの」
と恵子は、乳首とおへその辺りを撫でた。

「ゴメン、乱暴だったかな・・最後」
「ううん、そうじゃないと思う。晴れてバージン卒業したからじゃない?」
良かった、そうなんだ。

「こっち、おいでよ」
ボクは恵子を湯船の中で抱きよせた。
そのまま後ろから抱き抱えるみたいな格好で、恵子の華奢な首筋にキスをした。

「ふふ、くすぐったいよ・・」
恵子は笑っただけで、拒みはしなかった。
そうやって暫く2人でジャレながら浸かっていたら、ボクは急にドキドキしてきてめまいを起こしそうになった。

「ごめん、上がるね!」
ボクは湯船から出て、洗い場に座り込んでしまった。
ヤバかった・・・と呟きながら。

「私も、もうダメ!」
ザバっと恵子もお湯から上がった。
「私も、のぼせちゃったよ」

洗い場に座って首を後ろに反らせて、恵子の綺麗な胸が上下していた。
それは素敵な光景だった。

「大丈夫?!」
今度はボクが心配する番らしい。
「うん、平気。でも温泉って温まっちゃうんだね、ほんとに・・」
本当にそうだ、心も体もね!

「窓、開けていい?」
恵子は立ち上がって、風呂場の窓を開けた。
冷たい美味しい空気が流れ込んで来て、深呼吸したボクはめまいが治まってホっとした。

いつも間にか山の稜線の色が少し変わってた、黒から紫に。

「夜明けだね」
「乾徳山って、あれかな」

「うん、多分」
「今度はさ、二人で登ろうね、必ず!もう私、捻挫しないから」
開けた窓の桟に両手をついて、恵子は外を眺めながら言った。

その後姿に見とれた。
くびれた腰の線、柔らかそうなヒップにスラっと伸びた足。

思わず後ろから抱きしめて言った。
「今度は二人で登ろう、必ず!」
「うん、絶対にね」
作品名:朝霧の中で・・・ 作家名:長浜くろべゐ