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長浜くろべゐ
長浜くろべゐ
novelistID. 29160
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朝霧の中で・・・

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「もっと冷やした方がいいね。氷、貰ってくる」

宿のおばさんは親切で「こっちの方がいいよ!」とアイスノンを貸してくれたのだ。

「これ、使えって」
「うわ〜、嬉しい!」

ボクはアイスノンを右の足首に当てて、包帯を軽めに巻いた。
その時、座って片ひざを立てた彼女の浴衣の隙間から・・・白だった!

「あ、見えた?!」悪戯っぽく赤バンは笑った。
「うん、見えたけど・・見てない」ボクも笑った。


赤バンは恵子という名前だった。


恵子は、22歳でお茶の水にある建築会社で働いてると言った。
包帯は同じ部署の同期。
二人とも会社のワンゲルに所属してて、今回は副部長である包帯の下見に同期の恵子が同行することになって、乾徳山に来たとのことであった。

ボクは17歳だったから、22歳は完璧にお姉さんだった。
女兄弟はいなかったから憧れみたいなものもあったのだろう・・・。

色々話してるうちに夕食の時間となり、一階の食堂に行った。
お決まりの食事ではあったが、年上のお姉さんとの食事はまた格別であった。
周りは男だけのパーティーや家族連れが殆どで、形だけとは言えカップルはボクらのみ。
何か・・・優越感!


夕食後にやっと包帯が宿に着いた。

「あ〜、疲れた!でも、いい山ね、乾徳山。いいレポート書けそうよ!」
慌ただしく食事を済ませた包帯は、風呂上りにビールを買ってきた。

「さ、コレにしよ?!」
「かんぱ〜い!」三人で今日一日の出来事を話した。

ボクらは下山の苦労を、包帯は慌ただしかったが乾徳山の魅力を語った。

そして缶ビール6本程空になった頃「ゴメン、私、お先に休むわ。疲れちゃった・・」と包帯が言った。
そして「ケイコ、ボクちゃん襲っちゃダメよ〜ん!」と言い残してさっさと襖の向こうに行き、数分後には「スピ〜スピ〜」と可愛らしいいびき。
これには恵子もボクも笑ってしまった。

普通、山小屋や麓の宿の夜は早い。
大抵九時消灯が基本だったから、その後は恵子と二人でスタンドだけにして話した。






第二章  語らい





スタンドの明りだけが灯る部屋で包帯の小さないびきを聞きながら、恵子とボクは語りあった。

福島生まれで、短大を出た後に建築会社に就職して二年経つこと。
訛りが嫌で、始めは人と話すのが苦手だったこと。
昔から山歩きは好きで、父親とよく一緒に登ってたこと。
今でも酔うと、福島弁が出ること・・など。

ボクは、都内の高校に通ってること。
山は中学生の時に同級生に誘われて登り始めたこと。
最近は、単独が多い・・などなど。

「まだ痛むの?」
「ビール飲んだからかな、少しね」
「薬、まだあるよ?あげようか?」
「いいよ、大丈夫」

アイスノンはそろそろ体温と同じになってたから、恵子がディパックから湿布を取り出した。

「これにするわ」
「あ、やってあげる!」
「そんなこと言って、また見たいんじゃない?」
「そ、そんな。だって、恵子さん一人じゃ、うまく包帯巻けないでしょ?!」
部屋が明るかったら、見透かされての赤面がバレバレだったろう。

「じゃ、お願いね」

恵子は片ひざを立てて、右足を前に出した。
ボクは湿布を貼り包帯を巻いた。

「今度は、見えた?」悪戯っぽく恵子が笑う。
「ううん、暗くて見えなかった」と正直なボク。
「見たいの?」
「・・・・そりゃね」

「何で?」
「だって、男って、そういうもんでしょ」

「ふ〜ん・・」
恵子は小首を傾げて、言った。
「助けてくれたお礼・・かな?いいよ、見たいのなら」
「少し酔ってるかもね、私」

恵子は首を後ろに伸ばして、少しだけ、ひざを開いてくれた。
「・・・・」

スタンドの白熱電球の淡い光に、恵子の太腿の奥に白いパンティーがほんのりと浮かび上がって。

「足、痛くない?」とんちんかんなボク。
目は一点集中であった!

「もう、いい?」
「まだ、もうちょっと・・」

恵子は急にパタッとひざを閉じて、言った。
「ね、キスって、したことある?」
「う、うん。昔ね」
「高校生の昔って、いつよ〜!」

恵子は笑いながらボクに顔を近づけて言った。

「ねぇ、キスしたい?」
「うん!」頷くだけで精いっぱいのボクであった。
「昔、どんなキスしたの?」と恵子は言った。
「・・・・」
迷ってた、言うべきかどうか。
だって中学生の頃のあまりに幼いファーストキスだったから。

「好きだった子とね、放課後に偶然、教室に二人っきりになって・・・かな」
「へ〜、可愛いじゃない。レモンの味だった?」微笑みながら恵子は言った。

「ううん、味はしなかった」
「私のはね・・よせ鍋の味だった!」
短大時代のコンパで、気になってた人に奪われた!とのこと。

「気になってたんなら、いいじゃんよ、好きだったんでしょ?」
「でもね、酔って鍋食べた後、店の廊下で・・だからね。雰囲気も何もあったもんじゃないでしょ」
恵子は笑いながら言った。

「・・少し寒くない?」
「布団に入ってもいい?」
断る理由なんかある訳ないじゃん!

確かに夏とはいえ、川沿いの麓は夜になって冷え込んだのだ。
お互いに浴衣一枚だしね。

「一緒に入っていいかな?」なんでボクが聞いてるんだろう、ボクの布団なのに。

二人で腹ばいになって「ね、電気、消そうか」と恵子が言った。
「うん」
ボクは手を伸ばしてスタンドの紐を引っ張った。
カチッと音がして、部屋は青い月明かりに包まれた。

一つの布団の中で腹ばいになったまま、恵子は言った。

「今日は本当に助かったわ、有難う」
「だって、怪我人を放っておく訳にはいかないでしょ。誰だって助けるよ!」
「そうなのかな、私はいい人に助けて貰ったって、思ってるよ?!」
「支えてもらって、足を滑らせた時には下敷きになってかばってくれて嬉しかった」

「おんぶもね、何年振りだろうね、おんぶしてもらったのって・・・」
安心してしがみついちゃった・・と。
恵子がボクの方を向いた。

顔がすぐ近くにある。恵子の可愛らしい顔が。

「・・キス、してもいい?」言ってしまった。
「うん」恵子は眼を閉じた。

初めての恵子とのキスは、柔らかくて温かかった。

「こういうの、したことある?」
二度目のキスの時、恵子は舌を入れてきた。

温かい柔らかい舌がボクの口の中に入ってきて、ボクの舌を探した。
ビックリしながら、その何とも言えない感触にボクの頭は嬉しくてパニック寸前だった。

お互いの舌が絡み合いながら、ボクはいつの間にか恵子を抱きしめていた。
恵子も拒む様子は見せずに、ぎゅっと抱いてくれた。

そして、恵子の足がボクの足の間に割って入ってきて、手と足で二人は絡み合った・・。
二人は絡み合ったまま、何度もなんどもキスをした。
初めてだった、貪りあうキス。

これが大人のキスなのか・・。

「ね、女の人、知ってるの?」
「うん・・知ってるけど知らないかも」

「何それ?」
「・・・うん」

中学三年生の夏、ボクは男になっていた。
相手は学校の音楽の先生で、放課後にふとしたはずみで男女の仲になっていたのだ。
作品名:朝霧の中で・・・ 作家名:長浜くろべゐ