朝霧の中で・・・
「出ようか、そろそろ・・」
恵子に促されて、店を出た。外はまだ明るい。
「蒸し暑いよね、夕方になっても」
「そうね、真夏だものね」
「うち、来る?」
「うん、行きたい!」
「じゃ、ご飯は今日は外食にしようよ。さっと食べて・・それならノブ、うちに行っても少しは勉強出来るでしょ?」
「分かった。恵子は、何食べたい?」
簡単なものがいい、と恵子は言った。ボクも同感。
ボクは、一刻も早く恵子と二人っきりになりたかったから。
二人で駅に行き、総武線に乗った。
総武線の中で「ノブを連れて行きたいお店があるんだ」と恵子が言った。
秋葉原で下りて、恵子の家に向かう途中の小さな中華料理屋に入った。
「ここの炒飯、美味しいんだよ?!」
「あとね、餃子も」
「へ〜、じゃ、ボク、炒飯と餃子にするよ!」
「うん、私は・・・冷やし中華にする!」
ビールも・・と言いかけたが、恵子に止められた。
「ダメ、少しは勉強しなきゃ!ビールは・・勉強の後、お家で飲も?!」
はい、了解です、恵子せんせ。
「お待ちどおさま」
運ばれてきた炒飯と餃子は美味しかった、本当に。
「ね?!美味しいでしょ!私、こっちに引っ越してきて最初に見つけた美味しいお店なの、ココ」
「うん、うまい!」
恵子も美味しそうに冷やし中華をすすってる。
「そっちは?どんなの?」
「食べてみる?」
恵子ととっかえっこして、冷やしも食べた。
こっちもうまい。酸っぱく無くて、程よいゴマラー油の香り?
二人でお腹いっぱいになって、家に帰った。
夕方とはいえ夏の宵であったから、二人とも汗をかいていた。
「ふ〜〜、やっぱ、暑いね」
「うん、冷えたビール・・あ、ダメか」
恵子はボクに、2時間位は勉強して欲しい・・と言った。
「いいけど、何で2時間なの?」
「だって・・」
ま、いいや。何となく分かったから。
きっと恵子もボクも、考えてる事は同じなんだろうな。
第九章 二人の部屋
取り敢えず、ボクは先にシャワーを浴びた。
恵子はその間、部屋のクーラーをつけて、テーブルの上を片付けてアイスコーヒーを淹れてくれた。
「サッパリしたよ・・・お先に!」
頭をバスタオルでゴシゴシ拭きながら、トランクス一丁で出てきたボクに恵子が聞いた。
「今夜は、何時頃までいられるの?」
「恵子さえ良かったらオールナイトだよ。今夜は理系の友達んちで勉強教わってくるって言ってあるからね」
「悪いんだ〜ノブ、嘘ついて!」
「だって、しょうがないじゃん?正直に言ったら、うちの両親、ブっ飛んじゃうもんね」
それはそうだけど、何か、いいのかな・・と恵子が呟いた。
「いいんだよ、今までにも友達んちなんて、何度もあったしさ」
「それに勉強するのも本当でしょ?」
恵子はやっぱり真面目なんだな、と思ったりした。
「さ、じゃボクは勉強するから・・・恵子、シャワーしといでよ!」
「・・・うん」
恵子がシャワー浴びてる間、ボクは物理の教科書と参考書を開いた。
けど・・・なかなか集中できないんだね、こんな場面では。
好きな女の人が、シャワーを浴びてる。
当たり前だけど、裸でね。
「いかんいかん、集中〜!」
ものの20分でシャワーの音が止んで、ドライヤーに変わった。
だめだ、やっぱり気になって。
何て意志が弱いんだろう、ボクは。
「やってる?」恵子が入ってきた。
「勿論、バリバリやってるよ!」うそであった。
「やっぱり、ビール・・飲む?」
そうこなくっちゃ!返事は勿論、イエスであった。
「勉強、出来る訳ないよね、この位の時間じゃ」
「いいよ、もともと、今日はデートって決めてたんだからさ、ボクは」
「今夜だけね」
「うん、今夜だけ」
恵子が冷蔵庫から出してきたビールは、冷えていた。
「じゃ、ノブの医学部受験の決意と、これからの苦労に・・カンパ〜イ!」
なんじゃ、それは。ま、いいか!「カンパ〜イ!」
うん、二人で飲むビールはやっぱり美味しい。
「ふ〜、夏はビールよね・・」
同感です、恵子さん。
「シャワーしてて思っちゃった。これから私、ノブに何回ウソつかせるんだろうって」
恵子が伏せ目がちに言った。
ボクは恵子に言った。
「一緒に居たいって思うのはボクだし、自分の事は自分で頑張るし、高校生になってまでいちいち親の承諾を得てから・・なんておかしいじゃん?!」
特に男女の付き合いに関して、親の許可なんて・・と。
「でもね、思ったの。私がノブと同級生だったら、ノブは嘘つかなくてもいいんじゃないかなって」
「僻みかもしれないね、年上の」
恵子が一口、ビールを飲んだ。
「そんなことないよ、仮に同級生であっても彼女の家に泊まりに行くなんて言ったらアウトでしょ」
「年上、年下関係無くね」
「それは、そうだろうけど・・」
「大丈夫、恵子と知り合って好きになって、何かボク、人生を真面目に考えるようになったんだからさ」
「本当?」
「うん、本当に。進路に関しても、背中押してくれたのは他の誰でもない、恵子だからね」
「じゃ、私、ノブのこと好きでいていいの?」
「何言ってるの!好きでいてくれなきゃ困るよ、オレ」
初めてオレって言った。慌てたからか?
別段、今まで意識してボクって言ってたんじゃないんだけどね。
「ノブの・・オレ、初めて聞いた」
「男らしくていいね、オレ!」良かった、やっと恵子が笑った。
「そうか、今までボクだったもんね。普段、仲間と居る時はオレなんだよ」
「いいよ、そっちの方が好きかな、私」
「えへ、じゃ、今後はオレでよろしくね!」
うん、こちらこそ・・・変なコト言ってゴメンなさい、と恵子が抱きついてきた。
「ゴメンね、私って、僻みっぽいんだね」
「自信が無いの。こんな私でノブの彼女になれるのかなって」
「バカ、最初に好きになったのはオレの方だよ?!恵子は、オレの彼女だよ、大事な・・」
恵子は黙って聞いてた。
抱き付いたまま・・・そして言った。
「好きなの、どうしようもない位。こんなの初めてだから自分で自分が良く分からなくなるの」
ボクも言った。
声聞きたくて、会いたくてキスしたくて、抱きしめたくて・・・ずっとそればっかり思ってたと。
「ほんと?同じ?」
「うん、同じだと思う」
「嬉しい・・・」恵子がキスしてきた。
ヤバ、餃子食べちゃった。
「にんにく、気にならない?」
「全然、気になんかならない・・ノブ、好き」
恵子は舌を入れてきた。ボクも応えた。
二人の舌は、口のなかで絡み合ってお互いを確かめ合った。
「会いたかった、ずっと思ってた。二人っきりになりたいって」
「・・・私も同じ。ほんとは、すぐにでも帰って来たかったの」
「ノブに抱きしめて欲しかったから」
もうだめだ。ブレーキはスっ飛んでっちゃった!
恵子を押し倒して、シャツを捲りあげた。
「あれ、何でブラなんてしてるの?」
「うん・・だって、お勉強するかなって」
「もう、こんなのいらないよ、二人っきりの時は」
ボクはブラを外して、恵子のシャツを脱がせた。