【第六回・伍】茶柱の心
「いっぺんに聞かないで下さい」
次から次へと質問を投げかけてくる京助の頭を乾闥婆が湯飲みの乗ったお盆で潰した
「…わかりました…少しだけ…話します」
溜息をついて乾闥婆がお盆を床に置いた
「その前に」
乾闥婆が窓の方に目を向けた
「そこの窓、たぶん凍ってて開きませんよ迦楼羅」
京助が窓を見ると見覚えのある布がハタハタと風に靡いていた
「…よくわかったな;」
「毎度のことですから」
顔を引きつらせながら京助が言うと乾闥婆がにっこり笑って言った
「また窓から入ろうとしたんだっちゃ?;」
服の裾に雪をつけた迦楼羅を見て緊那羅が苦笑いで言った
「だってだなッ!!;」
雪を払いながら迦楼羅が声をあげた
「積もった雪で窓に届くようになって入ってこれると思ったんだろ」
京助が言うと図星だったらしく迦楼羅はふぃっと横を向いた
「学習能力皆無なんだやな」
コマがケラケラと犬の姿のまま笑った
「な…ッ!!;」
迦楼羅が顔を赤くしてコマを見た
「駄目駄目なんだやな」
同じくケラケラとイヌが笑う
「やかましいッ!! たわけッ!!;」
ガーッ!! と迦楼羅が怒鳴ると紅蓮の炎が口から吐かれた
「だぁッ!;」
「火ーッ!:」
京助と緊那羅が爪先立ちになって炎を避けた
「やめてください」
「だっ!;」
乾闥婆が迦楼羅の髪を引っ張った
「どうしてきちんと玄関から入ってこないんですか」
グイグイと髪を引っ張りながら乾闥婆が言う
「わざわざ雪の中に入って服を濡らさなくても入ってこられたでしょう?」
にっこり笑っているがかなりご立腹のよう乾闥婆がさらに迦楼羅の髪を引っ張っている
「いだだだだだッ; 髪を引っ張るなといっているだろうがッ!;」
髪を押さえて迦楼羅が怒鳴る
「…引っ張りやすそうな髪してるから悪いんだやな」
イヌがボソっと言った
作品名:【第六回・伍】茶柱の心 作家名:島原あゆむ