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はちみつ色の狼

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「あははは、ちょっと面倒くさいねぇ。」
「・・・はは、」


ルイスのこう言う微妙に天使のような朗らかな笑顔を作る時は、やばい。


「・・・退くべきだよね・・、本当に邪魔ったら、俺こういうの本気で・・・っ」
「・・あ、ほらっ」


ぶつくさ呟いているルイスを怖いと思ったのか、『開けゴマ』というよりか『海を真っ二つに割った』かのように壁側の道が開いていく。
その先にいる兵士は、笑顔と共に睨みつけられているのを感じていたのかルイスへと敬礼をしているのが、少し苦笑を誘う。
多分、この状況にならなければ多分ルイスは、ものすごい勢いで目の前の連中に当り散らしながら歩いていった事だろう。

まあ、これでルイスの機嫌が治るのであればお安いもんだ。

当人ルイスは、その開かれた壁沿いの道を先へと進んでいく。
別に何を気にする訳でもなく、敬礼をしていた兵士の目の前もただただ突き進んでいくのみであった。

「はははっ、ごめんねぇ・・・。」

ルイスの代わりになんとやら、ジャンは軽くその兵士の目の前を一礼しながら言い訳がてらそう言いつつ通り過ぎて行く。





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廊下の先は、掲示板付近とは全く正反対に静まり返っていた。
それはそうだ、殆どの兵士があそこに集まっているのだからな。


「・・・ん〜っ」
「・・・・。」


背伸びをしながらついでとばかりに欠伸をするジャンに対して、神妙な顔をしているルイス。
狭い通路は背が高いとは言え、やっぱり疲れる。
元来田舎生まれの田舎育ちのジャンには、あの人の多さ、混雑さは良くない意味で身にしみる。
二人はゆっくりと足を進めていく。
朝から疲れる行事


「ねぇ・・・。」
「あん?」

「・・・ジャンは誰が適任だと思うの?」


ルイスは隣を歩きながらそう呟く。
突然の問いにジャンは、びっくりしたように背伸びをした体制のまま、ルイスへと向き直った。


「誰?なにが??」
「何がって、今回の任務の件。」
「任務って、・・・あの掲示板のやつ?」
「それしかないでしょう?」
「ん・・・、おれかぁ?」


改めてこんな風に聞かれてジャンは、宙を見上げた。
誰がいいかなんて、まあ考えて無かった訳では無かった。

でも、あえて言うならば・・、誰だ?

ジャンは、背伸びをしていた腕を下ろして片方を腰へとあて、片方を自分の顎へと持っていき、その場で立ち止まる。
ルイスは、ジャンの横で自分も立ち止まる。
こういう場合、ジャンは神経が頭の考える方向へと力を優先させている為に、歩く事をやめてしまう。
ルイスはいつもそう考えているように思えたし、以前にこういわれた事もある。
脳みそも筋肉で出来ているに違い無い・・。
それは、まぁ・・・、そうかもしれないと思い否定も肯定もしなかったが、今は関係ないだろう。
ジャンは、宙を彷徨っていた瞳を前方へと戻して、口を開いた。


「リードは冷静沈着でなにがあっても大丈夫だろうな・・・と思うけど。」


本当に、偶然にリードが正面に居るのを捕らえたジャン。
ルイスもその視線の先に居る人物を探し当てたのか、目を凝らしていた。


「・・あの子ねぇ?」


ルイスが何気なしに、指の間接を鳴らす。
二人の視線の先、腕を組んで新人隊員達の後を一歩引いた距離から歩いてくる優男、リード。
隊員達は、何かの作業を終えたのか掲示板の方向へと歩いてくる。
彼は、ジャンとルイスに気が付いたのか遠いながらも一礼をする。
そしてそれとは対照的にその隊員の中心でムードメーカーっぽく俺が俺がと言う男シドもいた。
一度しか喋った事は無かったがなかなか我が強いタイプと言うか濃いキャラクターと言うか。

「あの一番後ろから付いて来る奴だぞ。」

一応の口添え。
万が一にも、あの我の強い「シド」があの任務に就いてしまったら冷静なんかは関係のない事になってしまう可能性がある。
ルイスは、その言葉に訝しい表情を浮かべてジャンを見たが、もう一度その隊員達へと視線を移すと一言呟いた。

「・・・わかってるよ、いくら僕でもあの中心にいる筋肉馬鹿を推薦するような事は絶対にないし・・・・、見くびってんの?」
「・・ごめん。」





作品名:はちみつ色の狼 作家名:山田中央