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はちみつ色の狼

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もちろん、出来上がったあつあつのハッシュブラウンを口に入れるのは忘れない。
まだ熱いポテトが、咥内を少しだけ焼くが腹へりと言う調味料には負けるのか、ジャンは口に次々と突っ込んでいく。
たまねぎとポテトの塩味がたまらなくうまい。


「なんだかんだ仕事してたら情報部のやつらと一緒になって、その後に飲むことになって。」
「くまの原因は仕事というか・・、飲みっつう訳?」
「そうとも言うかな?まあ、それで飲んでたらあの情報仕入れた。君が吐きそうになったあれについて。」
「・・・なに?」


ポテトに伸ばされた手を一旦止めて、あの情報について考える。
吐きそうになったあれ・・。


「ああ、緑のグロイ・・、」
「うん、その緑の遺体の人物特定が済んだらしいって。」
「・・へぇ。」


そこまで興味がある訳でもないが、自分達が見つけた遺体でその性で何人もの人間が死んでいるのだ聞いて損はない。
あんな殺され方した人間だいい事をしている人間ではないだろう。
どちらかと言うと人に恨みでも買ってそうな人間かもしれない。


「そんで誰?」


ジャンは、考えるのをやめて口を開いた。


「トラヴィスだよ。」


名前を聞いた途端、ぽかんとした表情を浮かべるジャン。
その表情のジャンを見て、眉間に皺を寄せるルイス。
そして、はあと大きなため息を吐きながら頭をぽりぽりと掻いた。


「ジャン、新聞をちゃんと読もうねっていっつも・・・・。」


姉か母のように冷静に諭されて、新聞の位置までさらりと伝えられ「軍隊にとって時事ニュースを知る事は大事なことでそのために控え室に、休養所に、喫煙所にまで一日の初めてに情報部の人が・・・」とくどくどと続いて行く説教っぽい言葉。


「あ、ああルイス、ルイスさん?」

「早く止めてよ。いくら僕でもあと5分もしたらネタ切れになる。」
「で、本気でだれ?トラヴィス誰?」
「・・トラヴィス中央部総指揮官。」
「ええ!!!バイス・トラヴィス?!」


さすがの新聞音痴のジャンでもその名前は知っていた。
この国の軍隊の中で2番目に偉い地位にいる人間である。
最近は表舞台には登場しないと思っていたが、まさか死んでるとは・・、誰も思っていなかっただろう。


「なんか陰謀感じない?」
「陰謀だぁ?」


にやりと笑いながら、ジャンの小さなハッシュブラウンを口に入れるルイス。
そしてもう一度笑うと、「陰謀だよ」ともう一度呟いた。


「それにしても、良くそんな公式に大きな情報が出回ってるのに、飲みに行けたもんだな?あいつら・・。」
「まぁ、死んだ人間をどうこうあがめたって、生き返って来るわけでもないし。」
「・・・、まあそりゃ・・・そうだ。」
「冷たいって思っただろ?でも、明らかにもうご遺体は中央に輸送済みだし、あの事件から何日もたってもう管轄だって中央だろうしね。」

「俺たちが、」
「出る幕は、」
『全くないってか。』


二人は、同じような内容を同時に呟きそして、同じく同時に頷き、同時に目の前のハッシュブラウンを口に入れた。
ジャンは、続けざまに口へと運んでいくが、ルイスには次のハッシュブラウンが口に入ることはなかった。

ジャンによって阻止されたのは言うまでもない。



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扉の上には、『情報部』の文字が木製の板に金色の文字で書かれた看板がぶら下がっている。
別に先ほど聞いたルイスの話が気になるから脚を運んだわけではない。
朝から書いていた昨日の仕事の報告書に、次の演習の指示書を中央へ送付する為に総務部に定期便の封筒を運んだのだ。
それはいつもどおり書類に決裁を頂く為のことでごく当たり前のことなのであるが、その総務部で定期便が今日は滞っていると言う話を聞いたからだ。

便は、毎日定時に行われている。

各班、係から集められた決裁や、資料などが定期便という名の軍の車に乗せられて運ばれていく、所謂郵便屋さんである。
それは中央、西部、東部、北部の4つすべての部署にあり、時間で回っていくようであった。
詳しいことはわからないが、その郵便部署は情報部でもあるのだ。
ジャンは、扉をとんとんと叩いて一応失礼しますと言いながら扉を開いた。
総務部の部長曰く「今行っても帰ってくるのは、今は忙しいという言葉だけだ」ということであるが、一応チャレンジはしてみるものだ。


「今朝の書類を中央に届ける・・・定期便は・・、」


ジャンの声は、中の喧騒にすぐにまぎれてしまった。
部屋の中はいつもとは違い騒然として忙しく動き回っていた。
外の清々しい風とは裏腹に、情報部の部署は慌ただしい。

なんだ?
昨日は、トップ2が妙な死に方しても飲みに歩いていた部署の人間が、おかしくないか?

ここだけの話、はっきり言って「バイス・トラヴィス中央部総指揮官」と言う人間は、いまでこそただの軍のトップ2と言う地位にいるが、以前の大戦では前線で指揮を執ったほどの人間だ。
その損失ははっきり言ってこの国の大きな痛手であろう。
今は齢70の高齢にもなるが、体力知力共に劣ったという噂もなく、その人間をあんな遺体にする能力のある人間というのはどこの誰なのか?ものすごく興味がある事実でもある。

しかしっ、とジャンは首を捻る。

目の前を通り過ぎていく武官はジャンには目もくれずに過ぎ去って行く。
忙しそうに走る彼らの表情は、少し戸惑い気味で、そして何か困惑しているようでもある。
手に持っていた定期便封筒の角で頭を掻く。
扉をすぐ入った壁際でずっと立ち止まってその様子を眺めているだけでは仕方がない。


「ん〜〜〜・・・。」


数名通り過ぎた後、見知った顔が前の数名と同じく通りすぎて行こうとしているのを見つけたジャンはその人物の正面に立ちはだかった。
そして、その右腕を掬い取り持ち上げた。
身長の小さなその情報部員は簡単に腕ごと身体を持ち上げられたようた状態になった。
そして夏にも関わらずかっちりと着込まれた制服の下から白いシャツの裾が飛び出してしまう。

「おはよう、アキラ。」


ニッコリと笑ってジャンは自分のすぐ近くにあるアキラの顔を見る。


「アキラ?」
「おはようじゃないですよ!し、少尉!今構ってられなくて、申し訳無いんすけど今ちょっと情報が混乱しているんで、・・・」


アキラはジャンの腕を引き剥がそうとしているがそれはかなわない。
ジャンは、何も隠さないが力と身長だけは人一倍なのである。
引き続き何かをしゃべっているが、それを軽く聞き流しながら考えるジャン。

例のバイスの遺体の件かな?
ルイスが言ってたのは、もうすでに事件は中央部に移行したとかって話じゃなかったか?

右手にじたばたする気配を感じて視線をやると、アキラが不服そうに眉間に皺を寄せ、ジャンを睨み付けているのが見える。


「あの少尉、放して下さいますか?」
「ああ、ごめんごめん。」

作品名:はちみつ色の狼 作家名:山田中央