はちみつ色の狼
ジャンが、想像しているのはあの伝説の『象』という大きな生き物が6匹は余裕で入るほどの豪邸に、ちょこんと居るジン・ソナーズであった。
官舎と一口に言っても全てが個室かと言えばそうでもない。
個室になるのはやはりそれなりの上位になってからだろう。
どんなエリート士官生でも始まりは雑魚寝部屋。
二階立てのバンクベットが六台も入って窮屈な所に今は医者先生と言えども、大佐級の人間には無理だろうし。
まあ先生が運が良かったとして、個室に行けたとしても、風呂つきはあいにく誰もが出たがらないので無理。
少し苦笑が漏れてしまうジャン。
大佐級の人間とは言え身分を隠してるただのお医者様には、文句が言えないのはこの西部の仕組み。
「ジャン、なんか顔にやけてる。」
「・・?」
「なんだよ、気持ち悪い・・。」
「にやけてるか?俺?」
「まあどうでもいいけど・・、今夜は付き合うんだよね?」
ルイスは、自分のジョッキを飲み干すとまたマスターに新しいジョッキを要求するようにジョッキを高くあげ合図を送ると、気を利かせたマスターがジャンのと合わせて二杯のジョッキを持って現れた。
「明日は休みだしな。」
二人は、新しく目の前に置かれたジョッキを高く掲げて乾杯と打ち合わせると勢い良く喉の奥へと流し込む。
それが、数十回続いた後一瞬自分の意識を手放しそうになるが、辛うじてビールのグラスを開け続ける。
次の休みはベットの中に半日。
半日は二日酔いに苦しむこになるのであるが、それは明日の話である。