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はちみつ色の狼

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そして、同じくクッキーを口に入れるジャン。


「おいしいですね。」
「おいしいな。」




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「スナイデルは、バス停から乗って15分くらいです。」
「ありがとう。」
「いいえ、迷子にならないか心配だから付いてってあげましょうか?」
「・・馬鹿か。」


迷子と言う言葉に過剰に反応を示すジン。
二人はすでにバス停に程近い場所にいた。

時間はもう3時40分。

あのカフェに何時間いたんだ?という疑問はかなりあるが、まあ時間はともかく楽しかったし、緑さん(?)の疑問にも答えてもらってなかなか有意義であった。
別にその為に誘ったわけでもなく、忘れてはなるまい引ったくりの大男を見事に吹っ飛ばしたからに他ならない。
ジャンは、今日はありがとうございましたと呟くとジンに頭を下げた。
そんなジャンの行動に一目おくことも無く、通り過ぎてバス乗り場に向かうジン。
だが、その方向にはジンの目指す場所へと行くバス停はない。


「?」
「なんだ?」
「そっちじゃなくて、こっち・・・。」
「?ああ、右だろ?」
「13番乗り場だって、俺言ったよね?」
「だから13番はあっちだろ?」


彼が指差した方向には確かに13番の文字が書かれた看板が存在するがそれが示すのは、明らかに違うなんか怪しいお店13番である。
本人もその看板の意味にやっと気が付いたのか、俯いてしまう。

「・・・・。」

なんで、こんな基本的なことを間違うのかすごく疑問である。
これで大佐がやっていけるのだろうか?
もしも大佐で隊を纏めて戦闘になれば、戦闘とは逆方向へと目指していくタイプなのではないだろうか?
こんな場所でも迷子になるような人が東部でちゃんと仕事をしていたのかすごく疑問だ。
だから東部に帰りたくないとか、・・・もしくは帰れないとか?
ジャンは頭を抱えるが、すぐに視線をジンへと戻すと諭すように呟いた。


「・・・・・・・俺送りますから、ね。」
「・・・ありがとう。」




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「ジャン、人の話を聞けって!」


ルイスの声と、飲み屋のBGMと周囲の雑音が混じって聞こえにくい。

バス停へとまっすぐに連れて行って、ジン・ソナーズがバスに乗り込むのを見送って、そのままルイスとの待ち合わせ場所へと歩いていく。
ルイスとの約束の時間は、7時。
まだまだ時間があると踏んでいたジャンは、「ヘンダーソンズ」で手始めに軽いスコッチをコーラで割って飲んでいた。
そういえば、さっきも疲れが出たのか胸付近に痛みを覚えた。
健康だけには自信があったのになぁ・・。
健康がどうとかと考えながらもジャンは、何杯目かのコーラスコッチを飲み干して、そのままビールへと変えていくとそのうちにルイスが店へとやってきた。
ルイスは、元来話し好きの性分で自分の好きな事をしゃべり続けているのを聞いている”ふり”をしていれば何の問題もないだろうと踏んでいたが今日は、何かと構ってくる。

「・・なんだよ、ぼけっとくらいさせろよ。」
「寮に帰ったら嫌でもぼんやりして過ごす奴が今くらい話し聞いてろ。」
「・・はいはい。」

確かに、話は聞いているだろうに。
そうは本人には言わないが、ルイスの話は続いていく。


「この前さ、情報部の女の子達と合コンした時に、その内の一人がキミーって言って黒髪で痩せててなんだかつれない態度が可愛い子で。電話番号教えてくれる迄頑張っちゃった。」
「ああそう、よかったね。」
「そのキミーが実は君のファンらしいから紹介しようと思ってたのに。」

ジャンは一瞬、はいはいとルイスの言葉に聞いた”ふり”で済まそうとした。
が、紹介しようと言う言葉で我に返った。


「、は?ええ?」
「冗談。お前が聞かないからだよ。」


ルイスが一生懸命もぎ取ったチャンスをやすやすと人に渡すなんて事は在るはずがないと解っていたのに少しでも信じたジャンが馬鹿であったが、人が悪い。
目の前のビールのジョッキを一気に飲み干して、お代わりを頼み俺が好きなのは金髪ボインですと言い張る。
そんなことをここで宣言しなくてもいいだろうがと一瞬思ったものの言ったものは仕方ない。
マスターは、いつものように新しいジョッキをジャンの目の前において、そのグラスの下に敷かれた紙製のコースターにマークをつけていく。
今は、線が6本と3個のSマーク。それは、明らかにこの店に着てから飲んだSはスコッチとコーラ割り、そして6杯のビールのジョッキ。


「ヘェ・・、俺てっきりお前のタイプはキミーちゃんタイプだと思ってたのにさあ。」
「?なんでよ?ルイスちゃん?」
「医務室の先生と演習の時にさあ、」
「・・ルイス。」
「ああ、分かってるよ、あれだろ、あれ?誰かが暗殺とかなんとか言う。でもあの先生男だし、キミーちゃんはでかいボインがあるよ?」


あのなあ、事件を信じない親友の話となんだかジンへの微妙な気持ちを見透かされた自分への恥ずかしさから、ジャンは机に突っ伏す。


「ただ俺はお前が男色でも、俺に手を出さない限りは友達で居てやる。」


・ ・ありがとうと言っていいのか悩む。

別段本当に付き合った訳でもないし、実際に何かをしたわけでもないのだ、只の気の迷いが・・・。
今日も紅茶を飲むのを誘って、その際になんだか訳のわからない事態になっただけで、そのほかには何も無い。
そんな事をルイスに伝える義務も無く、ジャンは自分のグラスの中にあるビールをぐいっと飲む。


「そういや、その先生繋がりだけどさっき、ニュースナイデルで見たよ。」
「ニュースナイデル?」


スナイデルまで無事に着いたのかと子供をお使いにやった親のように気持ち。
バスに乗せたはいいが、その後のバスの降り場をまちがえないだろうか?とハラハラしたのだが、目的地へと到着できた事をしってひとまず安心をした。
でも、ニュースナイデルですか?

「ってあの新興住宅とかの?」
「そうそう、あのニュースナイデル、ニュースナイデル♪新しき未来にスナイデルホーム住宅♪の。」


嬉しそうにテレビのニュースの合間に流れるCM曲を口づさむルイス、彼も結構飲んでいるのか呂律は回っていない。
その割りにはグラスを開けるスピードは速い。


「家でも買うとか?」
「んなわけないべ、一応延長とは言え、いつまでいるかも解んないのに。」


ああ、でも、今日シャワーで出会ったので合点が行った。
シルベウスの大祭の時期に来た大佐殿は官舎に泊まることになったがあの官舎、たまに水しかシャワーが出ない。
その為に、終始お湯が出るシャワーをしにジムにきていたのだろうか。
そして、今はニュースナイデルに、新しい家捜し・・・か。

さぞかし、でかい豪邸をお借りになるんだろうな。
作品名:はちみつ色の狼 作家名:山田中央