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はちみつ色の狼

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4 work for real world.




そこは、まさしく荒野の果て。





車中は、まるでサウナのような熱気のようになっていた。
10数名の男が乗り込んだ、軍専用のトラックの屋根は布製のタープで出来ておりそのゴム臭い匂いと人数分の男臭さも相俟って
車酔いを催しそうになる。汗も、穴と言う穴から噴出してくる。
一番前の運転席には、ルイスが座りその横にジャン。
隊員たちはシートベルトも何もない車内を縦横無尽に動くというより、飛び跳ねる。
たまに砂漠の砂山でジャンプすることがあり、その度に後部座席から大きな声が聞こえてくる。
がんがんと頭でもぶつけているのだろうか?
20分掛けてドライブしているが、そこにはどこまでも続く砂、山のようにどこまでも続く、砂スナ、すな。
たまに、何処かの家畜が野垂れ死んだのか、骨があるがそれ以外は目新しい物はない。
道は、元はあったであろうが砂の中に埋もれてしまいどこがどこやら解らなくなってしまっている。
風によって描かれた波のような紋がどこまでも続いていき、時折吹き荒ぶ風でフロントガラスに砂が吹きつける。
先ほどから同じ道をくるくると回っているようにも見えるが、ここは砂漠、どこまで行っても同じに見えるのはしょうがない。



「ここら、あたりかな?」


ルイスは、そんなことを考えて不安そうな顔になるジャンには眼もくれずに、零れ落ちそうなとっておきの笑顔を見せる。


「・・この辺り??な〜んもないように俺には見えんだけど。」
「・・・あれ??そう??」


ルイスは、でもここだよと呟きつつ後ろの隊員は何も気に留めていないのか急ブレーキを踏んでその場に止まる。
座席のすぐに後ろで、ぎゃっと小さく悲鳴のような声と大きな物音がする。
まあ、大体想像が付くが隊員たちは、ブレーキの衝撃で前のほうへと団子状態で詰まっているのであろう。
申し訳ない気はするが、運転手だが、兼今回のこの隊の隊長ルイスがすることだ、隊員も文句が言えるはずはない。
それはそうと、車体の中央に配置されたナビゲーションシステムには、確かに軍のアンテナのマークが映し出されているので
作業の場所には間違いはないのであろうが、実際に目の前にあるのは砂の海でアンテナらしきものは全く無い。

「でも、ナビはここだって言ってるし。ここだね。」

車のドアを開けて、足を砂の上に下ろすとぎゅっと言う音がし、まるで雪を踏みつけた時の音のように、独特の雰囲気をかもし出している。
ジャンはそのまま、隊員たちが乗っている後部へと周り、大丈夫か?と一言掛けながらトラックの後部の布をめくり上げる。
そこには、恨めしそうな顔の隊員が数名と顔を青ざめた隊員が床へと蹲っている姿があった。
思ったとおり運転席の方へと移動している隊員の姿にあっちゃ〜と頭を掻く。
人のひじで顔を、車の天井やなんかで体中を打ち付けたのだろうか、改めてルイスの運転のひどさを物語っている。
が、これも軍隊の作業の一つ。
甘い顔をいつまでもしていられないし、ジャンやルイスが仕官学校の生徒だった頃にもこれに似た状況下で
作業をしたこともある。つらいが、これも仕事。

「疲れているところ悪いが、あと、10分後に作業を始めるので用意を始めてくれ。」
「Aye Aye sir!!」

返事だけは良いのだが、身体は付いては着ていないようでまだ床に這いつくばっている隊員も見受けられる。
まあ、隊員が休める籤運が悪かったとは言え今回の隊の長である自分達で頑張ればそれで済むことであるのだが、
ジャンは、未だに運転席にいるルイスの方を見るが、ルイスがそこから動く様子は全く無い。
それどころか、どこから取り出したのかサングラスと雑誌を取り出してのんびり読もうと画策しているようにも見える。

「ルイス・・・・・?ルイスさん?」
「あああ?何?」

なんだかいらいらとした顔で本から顔をあげるルイス。
こう言うときのルイスに何を言ったとしても無理だと解っているが、試さずにはいられない。
そうしないとこの砂漠の真ん中に永遠に留まったままになって、先ほど見た家畜の死骸のようになってしまう。

「あのさ、隊員達に仕事させないと俺達も帰れないし、早く手伝って終わらせようぜ。」
「・・・ええええ、なんで、俺達がすんの?一応隊長だし。」

その言い分は、ジャンも納得することだが、ここでの作業は何も解らない者が解らないままで始めるよりは、解る者が始めの内に教えるほうが
早く仕事も終わり一件落着するというもの。

「・・・でもさ、隊長さんには悪いけど、これ終わらないと大祭にも行けないだろ?」

ルイスは、大祭と聞くと急に座席を立ちこちらに勢い良く振り返り腕時計を確認する。
彼の腕時計は、日付も一緒に見えるようになっておりシルベウス大祭の始まりの日を示していた。


「!!!!今日って大祭?!」
「そう、その大祭が始める日。」
「あっちゃぁ〜〜、そりゃ仕方ない手伝うか・・。」

手伝うっていうよりも、率先しなければいけないんじゃないのか?と突っ込みながら一応やる気の起きたルイスの後を続いて
車に隊員と同じく積み込まれたスコップや、鉄くずなんかを発見するための重たいはずの2台の装置を軽々と下ろして、隊員の前へをおく。
もちろんそこには、忘れかけていた砂作業用のゴーグルも含まれている。
さて、シルベウスの大祭は、国を挙げての祭りで年に一度だけある流星群と秋の豊作祭りを掛け合わせた大行事である。
ルイスの目当ては、大祭に必ずと言って良いほどの付き物である大祭のメインイベントの大祭クィーン選びのショウ。
運がよければそのクィーン達とお近づきになろうと毎年画策をしては、仕事の都合なので毎年画策のままであったが。
今年のルイスの目はキラキラといつもよりも輝いているのが一週間も前からわかっていた。
なぜなら今回のイベントの主催者の男がルイスの知り合いで、特等席を用意しておくという約束をしていたからだ。
なんで、こんな主催者まで行き着くほど顔が広いのか疑問であるが、それと同時に、なぜ去年までのイベントに約束を取り付けていなかったのかと言う疑問も起る。
まあ、きっと約束は取り付けられてはいたが、去年のこの日に起った任務は大きなテロだったため、イベント自体が消滅してしまったのでしょうがないということもあったのかもしれない。
今、この話題を出せばルイスがやる気を出すのも、計算ずくでもある。
もちろん、隊員たちの中にも楽しみにしている者達がいる祭りなのでもちろん早く終わらせて帰らせてやりたいと言う気持ちもある。
先ほどの車酔いで床にへばり付いていた隊員たちも大祭のことを持ち出すと俄然やる気を見せだしていた。

「よ〜〜〜し!!早く終わらせて大祭に繰り出そう!!!!!」

ルイスは、そう大きな声で隊員たちに言うと隊員たちも大きくかぶりを振った。

「おお!!!!」

男達は、それぞれスコップだったりくわだったちと色々な物を手に持ちながらゴーグルをして思い思いの場所へと向かっていく。
ジャンは、少しだけ現金な奴らだと思ったが自分もその大祭を楽しみにしている人間、スコップと装置もちろんゴーグルを一個手にとって、
ルイスが行ったのとは反対の方向へと足を延ばす。
作品名:はちみつ色の狼 作家名:山田中央