はちみつ色の狼
擽ったそうにいやいやをするジンの首筋に鼻を近づけてくんくんと匂いをかぎだすジャン。
「っな、!!!!こら!!!!お前、犬か?」
擽ったそうに身をよじるジン。
その顔は、その状況に焦ったように赤く染まっている。
それでも、なかなか離れようとはしないジャン。
金木犀の匂いが、鼻先を掠める。
びくんと体を震えさせるジン。
多分、この人の体臭が花の匂いなんだな・・。
ジャンの妙な攻撃から逃げ出すように、急いで個室に入り込んで行くジン。
バタンと後ろ手に閉められた個室の扉を苦笑しながら見つめるジャンであったが、トントンと扉をゆっくりと叩く。
「・・・それと、」
「なんだ、まだなんかあるのか?」
「俺のシャツとトレーニングウェアもまだその個室の中に・・・。」
そう言い終わるか終わらないかの時、個室の扉の上から飛び出してきたジャンの服。
それは、コントのごとくうまいこと背の高いジャンの頭の上に引っかかり、ついでに顔の前に垂れ下がった。
「うっわ〜・・・・、ありがとうございます。」
汗っぽくてすっぱい匂いの服がびったりとシャワーし立てのフレッシュな顔にへばりつく。
思わず親指と人差し指の先を使ってつまみにかかる。
頭の上から降ってきた汗だくシャツとズボンを顔から取り去ったとき、もうすでに目の前の個室の中からはシャワーが開いたときのお湯の音が流れ始めていた。
変な奴だと思われたな、完璧に。
本能的にそのまま匂いを嗅ぎにいってしまった。
犬といわれても仕方ないか??
犬の中でも、従順なゴールデンレトリバーくらいなもんだけど。
ジャンは、そう考えながら頭をぽりぽりと掻くがそのうち、まあっいっか?とのほほんと考えていた。
縁があればそのうち、縁がなければ仕方がない。
そのうち、また先ほどのように違う兵士から声を掛けられるジャン。
「こんにちわ、少尉!」
「ああ、元気かぁ??」
ジャンは返事をしながらひらひらと手を振り、汗っぽい服を肩にかけてそのままシャワー室を後にした。