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はちみつ色の狼

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最初の内は笑って「祖国の為ね」と許してくれていた彼女の顔から笑顔が消えたのは何回目のデートの途中の呼び出しだろうか?

私と仕事と言う問いに、一瞬頭を抱えて考えたが、答えは出ていて一発顔に平手を受けた。
そして、その前に選んだ(告白された)女の子も殆どが町の女の子で、軍人とはなるべき離れた距離感の女性を選んでいた。
仕事についてはわからないほうが、わずらわしいこともない。
だが、実際には最後の彼女と同じように急な召集で約束には行けないことが何度となく起こったり、相手が軍人であれば理解してもらえることが多々あったのは言うまでも無い。
そして、悲しいことにいつだって、最後は彼女の方から別れを告げられるジャン。
今まで一度だって、ジャンから告げたことなんて無い。

最後の彼女に別れを告げられたとき、ジャンはいつものように一度は引きとめようとしたが、最終的には引きとめなかった。

『そういう、淡白なところがいやなのよ!』と、言われその場はおわりになってしまった。
他の彼女には、「あなたは本当に素敵だから。わたしよりも、素敵な人とであえるわよ。」と言われてどういえばよかったのだろうか?
彼女が一番だったから付き合ってたのに・・・。
「もう、世界の平和だけを夢見てるあなたには疲れたの。」と言う言葉に対して、「わかったよ」と、素直に引き下がった俺に彼女はなんで、あんなことをいったのか?
なぜか、その一言に逆上をした彼女は、「本当は、好きじゃなかったんでしょ?!私もあんたみたいな男なんか願い下げよ!」あの最後の言葉が聞いたのか、ジャンはあれから本気で探してはいない。
あれだけ、本気でやさしく彼女達を扱っていたジャンであるが、・・・なんだか心が折れた。

かるく、女性不審になりそう。

だったら、なんで軍人を選ばないのか?

という疑問は多々あるだろうが・・。
同じ兵舎の女性は、なんだか家族・・・、しいてはなんだか妹か、姉のような感じがしてどうも恋愛対象という訳にはいかん。




「・・・はぁ・・。」


時間にして、数分だろうが考えただけでもため息しか出ない。

そして少し、立ち上がってきたやつが、体の中心で自分を主張し始める。
埒があかないのは、わかっている。
そして、そこまで深く考えようとだって思ってもいない。
ただ、今・・・・急にあのボインの手触りを感じたくなってしまったのだ。

男だから、しょうがないっちゃあしょうがない。

「あああ・・、」

これぞ、生理現象。

でも、さすがに公共施設であるジムのシャワーで昼間から抜くというのは、どうだろうか?
さすがに、やっばいよな・・。

ジャンは、考えを振り払うかのように自分の顔を気合いを入れるように両方から叩く。
頬はじんじんと痛いが、このくらいで収まるのなら十分理にかなう。

・・・自分の部屋のシャワーで抜こ・・。

そう思いながら苦笑をして首を横に振る。

ジャンは、シャワーの栓に手をかけて、ゆっくりと占めていく。
占めたにも関わらずぽたりぽたりと数滴が、シャワー口から漏れ出してジャンの肩口を濡らしていく。
前髪がぺったりと額にくっつく。

そこまで長くない筈の前髪なのに、水に濡れるとやはり額の半分くらいまでかかり少し痒くなってくる。
だけどこれ以上、切るとなると本当に坊主になってしまう。
まあ、今は彼女が居る訳でもないので、気にする必要もないのだろうが、
髪型だけのせいでこれ以上に女性に縁遠い生活を送るのも気に触る。

ジャンはシャンプーのせいか、柔らかくなった髪の毛をそのままかきあげてオールバックにする。

そういえば、今日は所謂休日。

夜にルイスと飲みに行くのは予定外ではあったが、別段最初っから何をするという予定もなかったので願ったりかなったりである。
そう、飲みに行くということは自動的に街にでるということだ。
最近、演習やら急に入る書類整理やら交通整備やら護衛など、人に過労死をさせようとという作戦のように働かせてくれる。
給料は他の少尉と変わらないのに、なんで自分はこんなに外の仕事をさせられるのだろうか?
逆に、部屋の中で書類を作ることを一日中していたとしたらそれこそ腐ってしまうだろう自分がいることは言うまでもない。
少尉になる前までは、書類整理をサボりまくって上司を困らせていたことの付けが今更回ってきたのかもしれない。
ジャンは、まあ、いいけどな。とのんきそうである。
これぐらいのんきで無ければ軍人なんてものはやっていけない。
それこそ、最近はやりの鬱病のたぐいや自殺者の類にいつでも入っていけそうな淵に位置した職業。
最近はそうでもないが、祖国のためとうたっては・・・、
と、今日はそんな暗いことを考えなくてもいい!!
休日なのだ!!それも、2日連続の。

それを考えただけで、ジャンの顔は自然とにやっとしてしまう。
彼女がいたのであれば、普通にデートということになるのだろうが、なにせいない。
独り身のさみしい27歳、男子。
だが、一人身は一人身で楽しい事だってあるのだ。

宙にぐいっと伸びをするジャン。
肘の傷が少しだけ引きつったのを感じるが、それ以外はなんとも無い。

「ふ〜〜ん〜〜。」

思わず出てしまう大きな声。
隣の個室の人間が聞いたらさぞや驚いたろう。
思いのほか大きな声がでたもんだ。
使われていない筋肉がすべて伸びていく。

休みの日だし、ここはジム。

シャワーだって何回使っても怒られることはない。
寮で長時間使うと、寮長にこっぴどく怒られるか、そのうちシャワー口から出てくる水がなくなる。

ちゅうわけで、もう一回くらい・・。

シャワーの栓をもう一度勢いよく開くと冷たい水がジャンの体に降り注ぎ、折角あったまった体を冷やしていく。
いつでも最初に水が出てくるのは解ってはいたが、二度目のシャワーですらすでに水からのスタートだとは思っていなかったので、顔に掛かる水にどきりとした。
思わず、身震いをして顔を顰めるジャン。

ジャンは、思わずシャワーの栓を一番小さめにする。
足元に流れる水は、すぐさま熱湯へと変わっていく。

先ほどとは違って栓を一杯に捻っていないためか、シャワーの口から出てくる量はチョロチョロと少なく、その音はなんだか・・・、

「雨の音みたいだな・・・。」

ジャンはそう思いながら、もう一度栓を一杯にまで捻る。
ちょろちょろだった湯が変化して水圧先ほどの水で冷たく冷えた頭が、一気に温まっていく。




そういえば、・・・・

演習の日の雨は、次の朝まで降り続けていた。
この時期いつもやってくる砂風を洗い流すように長時間振り続けてたっけ・・。



思い出されるのは、激しい雨の中、建物の屋上、引っ張り上げたときのあの感触。


雨の中だったとは言え、柔らかく暖かいあの肌の感触は忘れられるものではなかった。
それどころか肌に張り付いた白いシャツがやけに艶かしく感じられて一瞬動きをそのまま止めてしまった。

『・・・ごめん。』
『いえ、俺こそ!』

ジンの上に折り重なったジャンが、腕を掴まれたまんまの姿で無防備にジャンの上に転がっていた。
小さな、軽い体。
作品名:はちみつ色の狼 作家名:山田中央