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はちみつ色の狼

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なぬ?と背後を振り返るとルイスが手をひらひらとさせながら笑顔でいるではないか?
リードは、うれしそうに敬礼をしている。

「ルイス少尉も、お元気そうで!」
「どうもどうも。ジャン・・・、暇そうにしてるけど、あと10分ではじまるよ。」

ちくちくとサボりを指摘するルイスと、慌ててそれを否定するジャン。
手に持ったテントの布を見せるが、ルイスはそれだけを言い残すとすぐさま仕事へと戻っていく。

「あっちゃ・・・・、悪い俺行くわ。」

それと同時に遠くの方で、手を振っている人間が見え、その様子に気が付いてリードは小さく敬礼をすると口を開き、そちらへ行きたいのか体の向きを変える。

「すいません僕も、班の人間見つけましたので行きます!」

慌てて走り出したリードを見送ると、その視線の先には確かに同じく研修で出会った兵士がそこにはいた。
いかにも陰気臭そうな顔をした暗い雰囲気の男で、リードとは一見すると別のタイプの男と言う感じではあるが、
二人は仲よさそうに肩を組んで中庭の中にある武器引渡しの場所へと歩いていった。

まあ、友人にもいろいろとあるのだろうか?なにか特別な特技でもあるのかもしれないし、見掛けで判断してはだめだとジャンは素直にそう思いながら、ルイスの方へと視線を戻すとルイスはルイスで忙しそうに手にしていたボードに書かれたモノを調べているようである。
肩にもう一度乗せ掛けたテントの布を見て、あっと何かに気が付いた様子で周囲を見回す。
このテントの中に入るであろう肝心な人物の姿を朝から見ていない。
ジン・ソナーズの姿がまったく、影も形もみえないのだ。

積み忘れたか?!

と、一瞬自分よりも身長の小さな先生様のことを考えて非常識なことを思い描いたが、仕事は仕事なのだから来ないと服務上規定違反なんかに問われることになるので来るだろうと思い直す。
しかし、どこにいるのだろうか?
第一部隊の人間で顔だけ見知った、同じくこの作業を手伝う兵士に尋ねる。



「あ、とっ・・医務室の先生は?」
「あ、少尉!あの先生なら、遅れてくるってうちの隊長に連絡ありましたよ・・。」
「・・・へぇ・・。」


『第一部隊の隊長に連絡があった』と聞いて、なんだか腑に落ちない気持ちになりながらもまた口を開く。


「で、そのソナーズ医師は、何時くらいに来るって?」
「・・・さぁ、部隊長に聞いてみないと。申し訳ないです。」


またもや来た『部隊長様様』のご意見を伺わねばいけないのか?と目を思わず細くしてしまう。
が、兵士は忙しそうに動き回りそれ以上のことは聞きにくい状態を作っている。



「まあ、場所は地図で知っているだろうし。何か必要なものがあるとかないとか・・・。」



あるのか、ないのか微妙なところであるのがあの先生がめんどくさくて行きたくないと言う気持ちの表れなのかもしれない。
今日から3日間続く、もしくは4日の演習付き添いで忙しいのだから最後の悪あがきのような状態だろう。
腕を組み、考えるような苦笑するような表情を浮かべるジャンと、その様子を見て口を挟むルイス。


「そういえば、あの緑のでろでろ遺体の件ってなんにも情報入ってこないよなぁ。」
「そういえば・・・。」


事故や、事件やテロリストの情報などは普段、その事件を検証した人間の手によって監察され情報として上司から流されるものであるが今回はそれもない。
まあ、医務室の件からしても考えられるのはこの研修、演習の時期で殆どの部署の手一杯で忙しくてその情報を流すどころでは無いとう事であろうか??
明日もあさっても、聞いたところによるとあと4日はこの研修やら演習やらがこの東部のどこかしらで行われ、ジャンやルイスもその手伝いに借り出されるのは言うまでもない。
たった一人の医者であるジン・ソナーズが借り出されるのは目に見えている現状から言ってそうなのだろう。


「まあ、そのうちに入ってくるかな?あんな大きな事故で、6人以上死んでる人が出てるし・・。」
「そうかもな。」


二人はそんな会話もそこそこに切り上げて、ルイスは銃に関する作業にジャンは宣言どおりに医務室用にテントを張りに行くことなった。



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作品名:はちみつ色の狼 作家名:山田中央